記憶のレンズ
村の田んぼは、すっかり干上がっていた。
湖の水を引いている田んぼだから、湖の水も干上がっているかもしれない。
おかげで、田んぼに引きずり込まれることなく、いざなぎはまっすぐなあぜ道を進む。
一駅くらいの距離を歩いたとき、湖に着いた。
湖は、見事に干上がっている。
いざなぎは恐る恐る、湖のあった窪みへ降りる。
そこには、湖に消えた人々の持ち物が落ちていた。
短歌にあった心の秘密とは、落し物のことだったのだろうか。
まんべんなく見て回っていると、少しずつ水が湧いてきた。
早く宝を見つけないと、引きずり込まれてしまう。
不意に、日の光が差した。
そして、湖の中心に光り輝くものがあるのを教えてくれた。
水かさが増してきたので、空を飛ぶ座布団に乗って湖の中心まで行く。
輝いていたのは、牛乳瓶の底のような分厚いレンズだった。
何とか水が、湖の中央に来るまでに拾うことが出来た。
レンズで空の雲を見る。
雲を横切っていた鳥も、レンズに映った。
「お腹減った」
鳥の心の中が見透かせた。
これは、記憶レンズという、宝の一つだった。
レンズ越しに見たものの思っていることが分かる。
しかし、レンズ越しに自分を見ると、レンズが心の乱反射を起こして、耐え切れなくなり粉々に砕けるという。
これで、いざなぎの手元にある宝は四つになった。