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清めの湖  作者: 源雪風
2/17

宇宙ラジオ

田んぼを越え、少年は広い日本家屋に着いた。

そこで少年は休ませて貰う。

緑茶を飲んでいると、放送が聞こえた。

「清めの湖から逃げた者達よ。己の罪を許してほしければ、十日以内に十個の宝を見つけよ。

いざなぎという名の少年を隊長とし、もし、隊長が宝を見つけられなければ、全員湖へ飛び込んでもらう」

村の外から来た少年の名は、いざなぎと言った。

急に隊長にされてしまった。

しかも、日本家屋にいる湖から逃げてきたらしい人々は、いざなぎと目を合わせようとしない。

協力する気がないのだろう。

かくして、背水の陣でのいざなぎの宝探しは始まった。


屋敷の主である着物の熟女もみじに、いざなぎは宝について聞いた。

河童に貰ったひれと、空を飛ぶ座布団は、十個ある宝のうちの二つであることが分かった。

ということは、あと八つの宝を見つければよいのだ。


宝のありかなど当てが無いので、いざなぎは日本家屋の周りをうろついていた。

そのうちに、方向感覚がなくなって来た。

気がつくと、屋敷の裏手の森に迷い込んでいた。

疲れてしゃがんでうつむくいざなぎであった。

すると、地面にマンホールくらいの大きさの穴を発見した。

いざなぎ胸の高鳴りを覚え、空を飛ぶ座布団で、下降する。


穴は、地下洞窟に続いていた。

そこで薄汚れた男が一人、たくさんの機械に囲まれて生きていた。

男はいざなぎを見るなり、目を真ん丸く見開き、後ずさり、腰を抜かした。

「お、お前、どうやってここに入ってきた」

座布団のことを説明すると、村の伝説を思い出したらしく、すんなり納得した。

「俺をこの穴から出してくれ。探している人がいる。この無線機を使って呼びかけているんだが」

男が指をさした先には、針金のアンテナを備えた木製のラジオがあった。

「俺は穴に落ちて、数十年出られなかった。穴の中に捨ててあったラジオで、外へ電波を飛ばして助けを求めているのだが、

誰も助けに来てくれなかった。ああ、やっと外に出られる。もみじさんに会える」

「もみじさん?」

その名は、着物の熟女のそれだった。

「今すぐ会えますよ」


穴から男を引きずり上げ、もみじさんの元に男を連れて行った。

「・・・あなた、もしかして、サダオ?」

「覚えていてくれたのか、もみじ」

互いに再会を喜んでいる。

もみじさんは、涙を流している。

「あの日、俺は山菜を摘んでいて、うっかり穴に落ちてしまったんだ」

「私を捨てて村を出たのだと、不安に思いました。でも、待っていてよかった」

サダオはいざなぎに、先ほどのラジオを渡した。

「穴から出ることが出来た今、これはもう必要ない。これは、宇宙ラジオという宝の一つだと、もみじが教えてくれた。

宇宙の全ての声を拾うことが出来るそうだ。今は君がこれを必要だろう」

「ありがとうございます」

人助けもして、宝も手に入れて、幸先がいい。

いざなぎは、もみじとサダヲの幸せを願った。





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