宇宙ラジオ
田んぼを越え、少年は広い日本家屋に着いた。
そこで少年は休ませて貰う。
緑茶を飲んでいると、放送が聞こえた。
「清めの湖から逃げた者達よ。己の罪を許してほしければ、十日以内に十個の宝を見つけよ。
いざなぎという名の少年を隊長とし、もし、隊長が宝を見つけられなければ、全員湖へ飛び込んでもらう」
村の外から来た少年の名は、いざなぎと言った。
急に隊長にされてしまった。
しかも、日本家屋にいる湖から逃げてきたらしい人々は、いざなぎと目を合わせようとしない。
協力する気がないのだろう。
かくして、背水の陣でのいざなぎの宝探しは始まった。
屋敷の主である着物の熟女もみじに、いざなぎは宝について聞いた。
河童に貰ったひれと、空を飛ぶ座布団は、十個ある宝のうちの二つであることが分かった。
ということは、あと八つの宝を見つければよいのだ。
宝のありかなど当てが無いので、いざなぎは日本家屋の周りをうろついていた。
そのうちに、方向感覚がなくなって来た。
気がつくと、屋敷の裏手の森に迷い込んでいた。
疲れてしゃがんでうつむくいざなぎであった。
すると、地面にマンホールくらいの大きさの穴を発見した。
いざなぎ胸の高鳴りを覚え、空を飛ぶ座布団で、下降する。
穴は、地下洞窟に続いていた。
そこで薄汚れた男が一人、たくさんの機械に囲まれて生きていた。
男はいざなぎを見るなり、目を真ん丸く見開き、後ずさり、腰を抜かした。
「お、お前、どうやってここに入ってきた」
座布団のことを説明すると、村の伝説を思い出したらしく、すんなり納得した。
「俺をこの穴から出してくれ。探している人がいる。この無線機を使って呼びかけているんだが」
男が指をさした先には、針金のアンテナを備えた木製のラジオがあった。
「俺は穴に落ちて、数十年出られなかった。穴の中に捨ててあったラジオで、外へ電波を飛ばして助けを求めているのだが、
誰も助けに来てくれなかった。ああ、やっと外に出られる。もみじさんに会える」
「もみじさん?」
その名は、着物の熟女のそれだった。
「今すぐ会えますよ」
穴から男を引きずり上げ、もみじさんの元に男を連れて行った。
「・・・あなた、もしかして、サダオ?」
「覚えていてくれたのか、もみじ」
互いに再会を喜んでいる。
もみじさんは、涙を流している。
「あの日、俺は山菜を摘んでいて、うっかり穴に落ちてしまったんだ」
「私を捨てて村を出たのだと、不安に思いました。でも、待っていてよかった」
サダオはいざなぎに、先ほどのラジオを渡した。
「穴から出ることが出来た今、これはもう必要ない。これは、宇宙ラジオという宝の一つだと、もみじが教えてくれた。
宇宙の全ての声を拾うことが出来るそうだ。今は君がこれを必要だろう」
「ありがとうございます」
人助けもして、宝も手に入れて、幸先がいい。
いざなぎは、もみじとサダヲの幸せを願った。