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清めの湖  作者: 源雪風
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変わる運命

日が暮れてきても、まだ妹は見つからない。

退屈な村で、目新しい事件があったため、村人はお祭り気分ではしゃいでいる。

酒を飲み始める集団や、歌って踊る奴が出てきた。

この盛り上がりなら妹が助かった後も、村人は妹を受け入れてくれるかもしれない。


夜になると帰っていく人もいたが、「夜宴だ」と言ってその場に残りはしゃぎ続ける人もいた。

「ったく、早く見つけろよ。心配でおちおち眠れやしねぇ」


目玉男爵が湖に潜ってから三日が経った。

さすがに村人も飽き飽きしていた時だった。

『あっ、あれは間違いなく妹です。引き上げます』

村人は安全な位置で、身を乗り出した。

「まだかまだか」と意気込んでいる。

十分くらいして、鏡のようだった水面が揺らいだ。

「いたぞー。あそこだぁーっ」

村人が指差す先で、水面から男爵と妹の頭がひょこっと出ていた。

男爵は、空を飛ぶ座布団の上に這い上がり、妹を引っ張りあげた。

そして格好をつけた。

村に代々語り継がれるほどの、ドヤ顔をした。


妹は岸に運ばれ、医師の手当てを受けた。

妹は息とまばたきはしているが、目がぼんやりとしている。

男爵が妹に話しかける。

「咲子、兄さんだ。分かるか」

妹の反応はない。

見るに見かねた巫女は、男爵に声をかけた。

「おい、へっぽこなすび。わたしなら妹を助けられるかもしれん」

「お願いします」

「よろしい。しかし血が必要だ」

目玉男爵は何のためらいも無く、義眼を取った。

血が出てきた。

巫女はその血を運命の筆につけた。

そして、呪文を唱えながら妹の額に文字を書いた。

「ナエド、トナエド、マジナエド、アガナエド、ツグナエド・・・」

雨を降らせたときと、少しだけ違う呪文だった。

呪文が終わると、額に書いた文字が消えた。

消えるにつれて、妹の目に少しずつ意識が戻っていった。

「・・・お兄様」

「ああ!よかった咲子。気が付いたのか」

感動の再会だったが、男爵が義眼を嵌め直していないせいで、片目から涙と血がとめどなく湧き出したそうだ。

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