潜入!清めの湖
妹を助けるべく、目玉男爵は宝を身に着けた。
空を飛ぶ座布団で、湖の中央へ向かった。
そして湖に飛び込んだ。
普通なら魔力に飲み込まれて溺れてしまうが、夜霧のマントが魔力から守ってくれている上に、鯛のひれの力で泳ぐことが出来る。
悟りの石、導きのトランプ、月のしずく、心のパズル、記憶のレンズは心を守ってくれる。
湖の周りには、引きずり込まれない程度の距離に村人が集まっている。
男爵が置いていった宇宙ラジオから、実況中継が聞こえる。
『湖の中には、らっきょうのたまり漬けみたいにたくさんの人が漬かっています』
不思議な湖だからか、鯛のひれの力か分からないが、息は苦しくないようだ。
『この中から妹を探し出すのは大変そうです。心が折れそうです。でも、あきらめません』
ラジオなので、こちらからの声は届かない。
それが歯がゆかった。
がんばれと言いたかった。
でも、今の男爵にそんな言葉は必要ない。
十分頑張っているのだから。
「へっぽこなすびめ。本当に助けに行っているのか」
巫女は心なしかうれしそうに言った。
「きっと宝があっても湖からは戻って来られめぇ」
村人は、不安そうに呟いた。
「さぁどうかね」
巫女は自信ありげに微笑んだ。
『あっ妹だ!・・・と思ったらそっくりさんでした』
「全く、ひやひやさせやがって」
村人たちはすっかりラジオの声に、夢中だ。