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月のしずく
あっという間に、幻山頂上まで着いた。
あとは、月のしずくが垂れてくるのを待つだけだ。
もしかしたらもう垂れ落ちているかもしれないので、バイクのライトで照らして地面を探す。
あったのはガラスの破片だった。
宝かもしれないので一応拾う。
いざなぎと巫女は何時間も探したが、宝らしいものは見つからない。
突然、いざなぎの背中にべチャっと何かが当たった。
こんな雨の日に鳥の糞だろうか。
それにしては大きすぎる。
背中に手をやると、透明なスライムがくっついていた。
「まさか、これが月のしずくですか。これじゃ、月のたんみたい」
「もしや、それが真の姿じゃないかね」
「うーん」
さっき拾ったガラスとくっつけてみるが、変化は無い。
心のパズルに乗せても、悟りの石をかざしても、運命の筆でなでても、変化は無かった。
いざなぎは、導きのトランプに悟り石を当てて、ヒントをもらうことにした。
『決まりきったイメージを疑え』
ということは、このべとべとが月のしずくか。
べとべとでは、達成感が無い。
しかし、贅沢を言っている場合じゃない。
これで湖行きは回避出来た。
ひとまず安心したいざなぎであった。