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魔の巫女
いざなぎは巫女の元へ行き、事情を説明した。
「ふっ、あのへっぽこなすびが」
「お知り合いですか」
「あいつとは幼なじみでなぁ」
巫女は深いため息をついた。
あんな妙な人が幼なじみだなんてたいへんだなと、いざなぎは思った。
「そんなことはいい。雨を降らすのかえ」
「はい」
「出来るかわからんが、久しぶりに力を使うかねぇ」
巫女は神社の建物の中に籠って、呪文を唱え始めた。
「ナエド、トナエド、アガナエド、ツグナエド・・・」
いざなぎは、祈りながら待った。
すると、ほんの少しずつではあるが空が曇ってきた。
いけるかもしれない。
いざなぎは空を見上げる。
雨よ降れ!
しかし、降ってきたのは雪だ。
春の雪とは珍しいが、喜んでいられない。
雨でないといけない。
「あちゃー。ま、しばらく待てばみぞれになり、雨になろう」
そうだ。雨になるまで待とう。
「ありがとうございます。おかげで雨へ一歩近づきました」
「むぅ、お礼は雨になってから言ってちょ」
巫女は、照れくさそうにそそくさと神社の建物の中に入った。