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男爵の愚行
最後の宝、月のしずくは雨の日に手に入る。
いざなぎは、雨の日をひたすら待った。
しかし時間はどんどん過ぎて、宝探しを始めてから九日目になってしまった。
「雨、降ってくれないかな。清めの湖に突き落とされるよ」
いざなぎは空を見上げる。
雲ひとつ無い夜空に、星がキラキラ笑っている。
追い詰められたいざなぎは目玉男爵に相談し、宝探しの期限の延長を申し出た。
「ふむ。月のしずくは雨の日でない手に入らないのか。よし、分かった。私が雨を降らせよう」
男爵が押入れを開けると、錆びた鉄製の箱が出てきた。
「勤め先の工場で作っている、アメフラシ君だ」
男爵はアメフラシ君を野外に置き、スイッチを押した。
たちまち空の雲が消えて、きれいに晴れてしまった。
「あれれ」
ボタンを連打する男爵。
押すたびに、青空がきれいになる。
「ははは、失敗した」
「どうするんですか」
いざなぎは、さすがに怒った。
「巫女なら何とかしてくれる。私は心が折れた」
箱を外に放置して、家にとぼとぼ入る男爵であった。