壱~魔性の湖~
ある村の湖の周りに、たくさんの人が集まっていた。
この湖は、清めの湖と呼ばれている。
村に伝わる伝説によると、この湖に飛び込むと神聖な水によって罪が清められるという。
そして、時には湖の水は罪を持つ人を引きずりこむという。
湖の岸に、高校生の男女二人がいる。
「僕たち」
「私たちは」
「卒業します」
そう言って湖に飛び込んだ。
すると、たちまち消えてしまった。
それを見た人々は、狂ったように湖に飛び込んでは消えていく。
村の外から来た少年は、怖くて湖から逃げる。
逃げてきた少年の前にはぬかるんだ田んぼが広がっている。
この田んぼには、清めの湖の水が引かれているため、立ち入れば引きずりこまれるだろう。
しかし、ここを超えて逃げなければ、湖へ向かう人々の波に押し流されて、清めの湖に引きずり込まれてしまう。
リュックの中には、おばあちゃんに持たされたた座布団がある。
こんなもの、何の役に立つんだ。
でも、よく見ると座布団の様子がいつもと違う。
中にぷわぷわ浮いている。
その上に恐る恐る乗ってみる。
すると、田んぼの上空を滑るように進む。
これなら、田んぼを越えられる。
しばらく飛んだ時、田んぼから声がした。
「助けてくれえー」
田んぼに、河童が引きずりこまれている。
天高く田んぼから突き出した河童の手を掴み、引っ張る。
重くて、少年の腕がもげそうだったが、救助に成功した。
「ありがとうござぜえます。よかったらこれ、もらってくだせえ」
河童がくれたのは、鯛の胸びれだった。
少年が首を傾げていると、河童が説明した。
「その鯛のひれがあれば、どんなところでも泳げるんだよ」
「でも、かっぱさんは今、溺れてたよ」
「それを使っても、湖の魔力には勝てなかったし、ひれの力を制御しきれなかった」
恐るべし、清めの湖。
さて、これからどんな不思議が少年に待っているのだろうか。