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サバ読み令嬢の厄介な婚約  作者: 本見りん


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義理の兄弟の初対決です。



「───クレール侯爵令息にはご機嫌麗しく」



 声をかけたヴィルフリートに、エドガーは穏やかに微笑みかけた。



「エドガー マイザー伯爵令息。……君と話がしたい」



 対するヴィルフリートはとてもでは無いがご機嫌麗しくには見えない。そしてエドガーが余裕な態度である事にも更に苛立ちが募る。



「ええ、もちろん良いですよ。……我らは将来義兄弟となる関係なのですから」



 ───そう。この不遜な青年は今ヴィルフリートの仮の婚約者であるシルビア マイザーの兄である。……そして昨日、ヴィルフリートの愛するフィーネと親しげに同じ馬車に乗ってどこぞやに行った憎き男。


 ヴィルフリートの愛するフィーネは今の彼女自身の事を何も話してはくれなかった。せめて家名をと尋ねても関係のない人に教えることはできない、と冷たく言い放たれた。


 ……ギリッ。

 ヴィルフリートは初めて感じる嫉妬や悔しさを堪えエドガーを大学部の自分の管理する部屋と招いた。


 エドガーは大学部を少しもの珍しそうに眺めている。



「───大学部が珍しいか?」


「そうですね。来年から通う事になっているのです。楽しみですね」


「……君は大変優秀だと聞いている。大学生活を楽しめるだろう」


「僕の事を気にかけてくれているのですね。……シルビアも、大変優秀ですよ」



 婚約者の名を出され、ヴィルフリートは苦い顔をする。



「───話というのは、昨日一緒にいた令嬢の事だ。彼女と君との関係を知りたい」



 不毛な話をするつもりはない。ヴィルフリートが仮の婚約者の兄を呼び出してまで知りたかったのは、愛する人フィーネとのその関係。


 昨日自分と別れた後、彼女と会っていたこの青年。実に親しげに話をし、そして一緒の馬車で何処かへ行ってしまった。


 ヴィルフリートは、『嫉妬』という感情を初めて知った気がする。……こんなドロドロとしたどす黒い感情を抱いたのは初めてだった。



「───昨日? 誰の事でしょう? 学園にはたくさんの女性がいますからどなたのことだか───」


「しらばっくれるなッ! 昨日一緒の馬車に乗って帰った、フィーネの事だ!」



 のらりくらりと話すエドガーに苛立ち、ヴィルフリートはつい声を荒立てた。

 その自分の荒い声に自分で驚く。


 今まで侯爵令息として、感情を抑える事を教育されて来たというのに。……こんな事は初めてだった。



「……ああ。彼女の事ですか。私の、とても『大切な人』ですよ」



 とりあえず冷静さを取り戻した様子を見ながらエドガーはなんて事のないように答える。

 ……そう、『大切な人』。エドガーにとってフィーネという存在はは間違いなくそうだ。



「ッ……。君には、確か子爵家のご令嬢の婚約者がいると聞いているが」



 流石に仮でも婚約者の家族の事は知っている。貴族は身内で何か不測の事態が起こった時には直ぐに動かなければならないからだ。



「───よくご存知で。ええ私には大切な婚約者がおります。しかし『大切な人』とは何人もいるものなのですよ」



「ッ彼女を、弄んでいるのか!?」



「とんでもない。どちらも愛していますよ」



 そうニッコリ笑って言うエドガーにヴィルフリートは殴り掛かりたい程苛立ちつつ、なんとかそれを抑える。



「───彼女を愛人にでもするつもりなのか?」


「とんでもない! ……貴方こそ私の大切なシルビアをどうなさるつもりなのです? まさかシルビアを捨てて他の方と一緒になろうと?」



 そう言って挑戦的な目でこちらを見る目の前の男に苛立つヴィルフリート。



「フィーネは、私が昔から想ってきた大切な女性だ。君に大切な婚約者がいるのなら今すぐに彼女と縁を切ってもらおう」



 そう宣言して睨み付けた。

 

 エドガーは、思っていた以上にフィーネに本気な様子のヴィルフリートに、心から込み上げる温かい喜びに思わず微笑んだ。



「何がおかしい」


「……ふふ。いいえ。では貴方は『フィーネ』を選ぶと、そういうことですね。

……いいでしょう。しかし私は手を貸しませんよ。彼女が欲しければどうぞ自ら彼女の愛を掴んでください」



「当然だ。君がフィーネに手を出さなければ、私も君の婚約者に何をも言う気はない。……しかしこれからは婚約者には誠実に接する事を勧める」



 エドガーはその一言に一瞬キョトンとしてから、また笑った。



「勿論、それは当然の事です。……どうか貴方も」


「私も当然の事だ。

……しかし君の妹との婚約は、家同士の契約で最初からいずれ解消される事になっていた。有能な義兄が出来なくて残念だよ」


「ええ、同感ですね」


「今日の午後、私の両親がそちらの家を訪ね手続きをする事になっている。色々迷惑をかけ申し訳無かった」


「とんでもございません。……では、失礼を」



 話が終わり、エドガーはその部屋から出て扉を閉める。……そして小さく呟いた。



「……私は言葉通りにお手伝いはいたしません。フィーネと一緒になれるかは貴方次第。期待していますよ、#義兄上__・__#」


事実を知っている分、今回の対決はエドガーの勝ちのようです。

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