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土下座から始まる魔王軍改革 〜魔王軍初の勇者は30代!?戦争は書類で止める〜  作者: 那由多
第1章 土下座からはじまる異世界転移 

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第26話 渉外卿候補

 夕方、城に戻った。


 魔宰会議の部屋に入ると、ヴァルがいた。いつもの圧。いつもの疲れ目。


 五卿も揃っている。


 俺が報告を始める前に、ヴァルが短く言った。


「救護所は維持できたか」


「維持できました。搬送は条項で止めました。召喚者受け入れ手順も、仮で合意を取れました」


 財務卿リリアが指を鳴らす。


「戦費は減る?」


「短期では増えるかもしれません。手順の運用コストが出る。でも中長期では確実に下がります。事故が減るので」


 リリアが満足そうに頷く。怖い。


 軍務卿グランが穏やかに言う。


「人間は嫌がるだろう?」


「嫌がります。だから“成果”で縛りました。王宮も神殿も古神殿も、逃げにくい」


 諜報卿セラがにこにこする。


「噂も変わるよ。『背教の勇者』だけじゃなくて、『国境救護所』が噂になる。噂が増えると、単純なラベルが薄まる」


 法務卿アシュが短く言った。


「ラベルは消せない。薄めるのが現実だ」


 研究医療卿ユーリが時計を見て言う。


「ミキト。睡眠を守れ。摩耗が進んでいる」


「はい」


 ヴァルが、少しだけ目を細めた。


「お主のやっていることは、渉外だ。交渉ではない。戦争の形を変えている」


 俺は肩をすくめる。


「仕事です」


 ヴァルが頷いた。


「なら、肩書きを与える。魔王直轄、渉外卿候補。まずは候補でいい」


 場の空気が少しだけ動いた。肩書きは、紙より速い時がある。


 俺は一拍置いてから答えた。


「受けます。枠の中で、やります」


 ヴァルが小さく笑った。


「よい。枠の外には出るな。お主はまだ、削れる」


 削れる。寿命の話だ。


 笑えないけど、ヴァルの言葉は正しい。


 会議が終わり、俺は廊下を歩きながら、耳の奥のノイズを抑えるために録音札を押した。


「女神様すばらしい」


 棒読みは祈りじゃない。生存手順だ。


 そして、思う。


 救護所ができた。搬送が止まった。仮の規程もできた。


 たったこれだけの“止まる時間”を作るのに、どれだけ紙が要るんだ。


 でも――止まる時間ができたから、次がある。


 悠斗を弾にさせないための次。


 女神OSの仕様を逆に取るための次。


 背教の勇者という呼び名を、処刑の理由にさせないための次。


 廊下の先で、ゾルドが走ってきた。


「特命官殿! ……いえ、渉外卿候補殿! 国境より伝言です。古神殿が……上位者を寄越すと」


 上位者。


 大神官か、初代の誰かか。


 胃がきゅっと縮む。次の相手は、トルストンより面倒な可能性がある。


 俺は息を吸って、吐いた。


 テンポよく行くしかない。


 紙で。


 枠で。


 旗の内側で。



 第一章 終

お読みくださりありがとうございます。

2章に向けて少し充電期間をいただきます。

絶賛書き溜めておりますので引き続きよろしくお願いいたします。



もし少しでも

「おもしろい」

「この先が気になる」

「続きを読みたい」

と感じていただけたなら、

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いただいた評価や応援の一つ一つが、次の一話を書く力になっています。

これからも楽しんでいただけるよう更新を続けますので、引き続きお付き合いいただけたら嬉しいです。

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