2-5
昔の夢を見た。
15年ずっとそばにいたあの子の夢。
僕はあの愛しく小さな体を抱きしめて、大好きだよと沢山伝える。
暫くすると抱きしめていた筈のあの子は消えていて、僕はまたひとり、膝を抱えて泣き始める。
「おい、おい!つむぎ、起きろ!」
真咲の声で目を覚ます。
あれ、僕寝ちゃってた?
そっか、こっちに来てからずっと走り回っていたもんなあ。
僕は少し潤んだ目を擦る。
「話しは一通り聞いた。だいぶ面白おかしくダンジョンクリアしてたんだな」
…真咲には言われたくない。
「ん、これ返すよ」
そう言ってイヤリングを渡す。
僕は耳につけてハナに聞く。
「どこまで話したのさ」
『全部よ、貴方があの地についてから今までを全部』
あの恥ずかしい戦い、やっぱりハナ知っていたのか。
「それより、最強って凄いじゃねえか。俺もそんな力なら今こんな事にはなってなかったのになあ」
羨ましがる真咲。
「いやあ、そんな良い力じゃないよ?いざ戦いになったら恐怖の方が勝っちゃうし」
「真咲らしいな」
そう言ってふっと笑う。
「旅の事だけどな、ついて行けるぞ」
「え!!!良いの?あのお母さん悲しませちゃうんじゃないの?」
「ハナがどうにかしてくれるってよ」
真咲は僕の耳につけられたイヤリングを目で見る。
「え、ハナ?どうにかしてくれるってどうするの?」
僕は少し不安になる。
『安心して、乱暴な事はしないわ。ただ、亡くなった少女をあの家に迎えれば良い話でしょう?』
「そうだけど、それが難しいんじゃないか」
僕は自分で言って悲しくなる。
亡くなってしまった女の子。
会えない悲しみで傷ついてきたお母さん。
『できるわよ、生き返り』
!!!!?!?
「へあっ!!?」
思わず変な声が出る。
いくらなんでもできるハナだって、そんな生死をいじる事なんて可能なのかな?
『もっとちゃんと言うと、幻覚よ』
「幻覚?」
『そう、私幻覚を見せる事もできるのだけど、それで娘さんを生き返らせれば世界のバランスも保たれたまま、お母さんも助かるでしょう?』
確かに、良い方法だけど、でも。
「ずっと見せ続けられるの?」
『いや、それは無理。いくら私でも2年が限界』
2年はできるんだ。やっぱ凄いな。
『だから、それまでにお母さん自身が強くなって前を向くしかないわね』
そうか、そうだよな。
結局、亡くなった人にいつまでも執着している訳にはいかないよね。
自分自身が前を向くしか。
悲しそうにしている僕に気づいてハナが言う。
『別に、忘れろなんて言う必要ないわ。しっかり覚えたまま、思い出に残したまま前を向けば良いのよ』
なんて厳しくて、難しくて優しい事を言うんだろう。
「そうだね、そうやって生きていくしかないんだもんね」
僕は涙が出そうになるのを必死に押さえ込む。
『……』
_______________
それから僕たちは夫婦の家に向かい、真咲にこの件を頼んだお父さんに話をしに行った。
お父さんは全部聞いた時、涙を流しながら僕と真咲の手を握って何度もありがとうございますと言っていた。
『いきます』
フワッ
海のような深く優しい色の煙がイヤリングから出てくる。
すると、目の前に写真の通りの女の子が現れる。
僕たちは驚く。
とても幻覚とは言えないほど、鮮明で確かに存在している。
生き返ったと言っても間違いないほど。
その時、お父さんもいきなり糸が切れたように泣き崩れた。
きっと、この人も壊れちゃいそうなくらい悲しかったんだろう、寂しかったんだろう。
それでも、奥さんの為に気持ちを噛み締めて踏ん張っていたんだ。
僕はまた泣きそうになるのを我慢する。
ここは僕が泣くとこじゃない。
僕はそっと抱きしめて、「お疲れ様でした、これからも大変な事はあるかもしれませんがどうか、夫婦ともに仲良く幸せに暮らしていって下さい」と伝えその場を出た。
後から真咲も男性に別れを言い、僕の後を追いかけてくる。
「おい、大丈夫か?」
「なにが?」
「いや、つむぎああいうの苦手っていうかトラウマあんだろ?」
僕は真咲の方へ振り向く。
「んーん、ほんとに平気なんだ。なんだか、僕もあの男性と一緒にすっきりした気がする」
僕は拳を握りしめる。
「そうか、俺、お前のそういうとこ好きだぞ」
急な告白に少し驚く。
「ふふ、励ますなんて、真咲にしては珍しいね」
「うるせえっ、そんなんじゃねえ」
真咲は赤くなった耳を手で握る。
『……つむぎ、次はどこに行くの?』
そうだ、僕はこれから沢山の出会いや冒険が待っている。
「次は思いっきり楽しそうな場所へ!!」
『了解』
僕と真咲は並んで手を握り、そして目を瞑る。
ついに真咲も連れての旅が始まりました。
3人のわちゃわちゃな旅をこれからも読んで頂けると嬉しいです。
感想、ブクマも物語を書く力になります、宜しくお願いします!




