9-4
僕は真咲と一緒に助走をつける。
本当なら一緒に連れて行ってしまいたい。
けど、それも叶わない。
そして、うわあーーー!!と叫びハナの胸へ飛び込む。
グサッ
…………………。
「ハナ、血が、血、どうしよう血が!」
僕はパニックになる。
真咲が何も言わず僕の手を握る。
「そんなに心配しないで。思っていたよりも痛みは感じてないわ」
ハナが血をボトボト流しながら精一杯話してくれる。
「ハナ!!」
僕はハナの元へ行こうと足を踏み込んだが、真咲に手をぎゅっと引っ張られた。
真咲、また泣いてる。
「つむぎ、真咲。今まで本当にありがとう。貴方たち2人とじゃなきゃ見られない景色が沢山あったわ。とても楽しかった!……さようなら」
ブオン
その時、頭上にあの魔法陣が現れた。
凄い光が僕たちを包み込む。
ハナ!ハナ!
僕は片手を伸ばす。
けれど、その手は届かない。
ハナが地面に倒れたのを最後に、僕の目の前は真っ白になった。
ブオン
ドサドサドサッ!!
僕たちは床に投げ出される。
「いった〜!」
「おい、2人ともいるか?」
「いますよ、変先輩」
「おい、真咲!今の呼び方なんだ!」
「これからは一生こう呼ばせて貰います。変先輩」
目の前を見ると、あの部室だった。
本当に帰ってきたんだ。
……何だかあの世界よりも空気が重い気がする。
「つむぎ、立てるか?」
真咲が手を差し伸べてくれる。
「うん、ありがとう」
僕は立ち上がり扉の方へ行く。
僕の頭の中ではまだハナの最後の笑顔が残っている。
「お前ら、急いで帰るぞ。そろそろ帰らないと見回りの先生が来て怒鳴られる」
廊下に出ると、少し暗くなっていた。
そっか、まだそれくらいしか経っていないのか。
あの世界での出来事、楽しかった思い出。
ポタ、ポタ、
僕はまた涙が溢れてくる。
「つむぎ……」
2人が心配そうに見ている。
もう覚悟はした筈だったけど、無理だ。
だって、あんなに楽しかったんだから。
僕は声をあげて泣き始める。
「やば、先生来るって!」
「つむぎ」
真咲が僕の肩に手を置く。
その時。
ブオンッ
ドサッ!!!
????????
パソコンの方で大きな音がした。
僕たちは急いでパソコンの前まで行く。
!!!!!????
「ハナ!!!」
そこには、紛れもなくあのハナが倒れていた。
「ハナ!!ハナ!!」
僕はハナに声をかける。
血が出ていない。
なんで?
「真咲、ハナ生きてるよね?」
僕はうるうるした目で真咲に助けを求める。
真咲がハナの胸に耳を当てる。
「……うん、ちゃんと生きてる」
生きてる。
その言葉で安心してまた僕は泣き出す。
「ん、うるさい〜」
ハナが目を覚ました。
「ハナ!!大丈夫!?痛いところない!?」
ハナはハテ?という顔をしている。
「つむぎ、何おかしな事言っているの?あれ?真咲まで、もしかして泣いてる?」
ハナが驚く。
「そりゃあ、泣くに決まってるでしょ!死んじゃったかと思ってたから!」
「死ぬ?誰が?」
「ハナだよ!あんなにグサッと刺して血もドバドバ出ていたら死んでしまうに決まってるでしょ!」
「おい、ハナ?」
先輩がハナに話しかける。
「……お前、誰だ?」
?
先輩、何言っているんだ?
ついに頭を打ったのか?
「えっと、誰って、先輩もおかしな事言うじゃん。私はハナよ。小泉ハナ。ピチピチの高校1年生よ」
???????
「つまり?」
「真咲、お前あの世界で何か能力得たか?」
先輩が慌てるように聞く。
「ん?変身能力なら。なんか、木の棒から声が聞こえて、気づいたら習得してました」
先輩が目を見開く。
「お前!さっきの!棒!」
「は?何ですか、棒って」
「ハナを刺す為にお前が適当に拾った棒をつむぎに渡していただろう?それがお前が最初に手にした棒と同じだったんだよ!」
先輩は1人勝手に興奮している。
僕は訳が分からず口を開けて聞いている。
「あー、あれエクロードだったんですか。で、それがなんですか?」
「その棒は超超超レアアイテムなんだよ!どうせ誰の手にもいかないと思って俺が適当に作ったアイテム!実は2つ能力があって、真咲が得た変身能力とそいつを持って強く願って刺せば、あの世界のもの何でもひとつこの現実に持って出られるんだよ!」
それを聞いて真咲まで口が開く。
「俺の、エクロードが……?」
まさか、こんな所でエクロードが活躍するなんて。
「それにしても真咲、良くそんな物見つけられたな?俺、すっかり存在を忘れていたよ」
とにかく、ハナは助かったんだ、良かった……。
「ちょっと、皆んなして何の話してるの?」
ハナが不思議そうにしている。
「お前ら、ちょっと来い」
先輩は僕と真咲を廊下へ呼び出す。
ハナはキョトンとしていた。
「多分だが、ハナは記憶を失っている」
「記憶を!?」
僕は思わず叫んでしまう。
「現実に来る代わりに、記憶を失ったと考えた方が良いかも知れない」
なるほど。
「まあ、それで良いんじゃないか?この世界に元々いた事になってるのなら、都合は良いだろ。変に騒ぎになる事もなさそうだし」
そう言う真咲も何処か嬉しそうだ。
先輩はそうだなと言って教室へ戻る。
「ハナ!そろそろ帰ろう!」
「なによ、皆んなして気持ち悪い……」
僕は嬉しくなってへへ〜とハナの頭を撫でる。
「やめて」
パシッと手で払われる。
うん、ちゃんとハナだ。
「おい!!お前ら今何時だと思ってる!」
「やべ!見回りの先生来ちまった!逃げるぞお前ら!」
「つむぎ!行くぞ!」
「うん!ハナ、ほら!」
「ええ、変なの」
僕はハナの手を掴んで走り出す。
最後まで見て下さり、ありがとうございました!
後ほどおまけが2話投稿されます。
そちらも是非読んでください。




