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9-1

「れん先輩!?何で!?」

あの日、この世界に来る前に見てから久しぶりに会う。

変わらない姿に僕は何故か少し安心する。

「何でってお前らを探してたんだよ」

「探してたって、れん先輩いつからこっちに?」

「あの後、補習が終わって部室に戻ったら2人がいなくてよ、そしたらゲームが開かれてるじゃないか。俺は焦ったよ。先に行っちまった!って」

ああ、そういえば待っててくれって言われてたっけ。

「先輩、行っちまったってどういう意味ですか。ここの世界の事知っていたんですか?」

どういう事だ?

「あー、そうだな。まずは説明と謝罪からしないとだったな。とりあえず、話が長くなる。座ってゆっくり話そう」

先輩はそう言うなり、僕たちの手を無理矢理掴んでワープした。


__________________

着いた先は、1番最初のあの島だった。

僕たちは先輩に着いて来いと言われ大人しく従う。

真咲一体どうしちゃったんだろう。

さっきからずっと先輩の背中を睨んでいる。

あと、ハナもおかしい。

先輩に会ってからずっと下を向いたまま、一言も話さない。

「ここで良いだろう」

あ、ここ、あの家だ。

僕とハナが最初に出会った場所。

家に入るなり、先輩は座れ座れと言って腰を下ろす。

「んで、まず真咲の質問から返すとしようか。」

見たことのない真剣そうな表情の先輩を前にして、僕たちは思わず緊張する。

「この世界の事知っていたのか?だったな。知っていたさ。というより、このゲームを作ったのが俺だ」

?????

この人は一体何を言っているんだ?

こっちに飛ばされた時頭でも打ったのだろうか?

「おい、つむぎ。今、頭でも打ったんじゃないの?って顔していたぞ。どっちかと言えばケツなら打ったが、これから話す事も含めて全て事実だからな」

覚悟して聞けよ、と言わんばかりの顔で僕の目を見る。

ケツは打ったんだ……。

「作った?ありえない、こんな物人間に作れる筈がない」

真咲が先輩の言葉につっかかる。

「ありえなくないんだな、それが。だって俺天才だもん」

相変わらずだなあ……。

真剣な顔でこんな事言えちゃうところ、ほんと良い性格してる。

けど、先輩の頭が良いのは実は噂で聞いたことがあった。補習は呼び出されてばかりなのに、学校外の色んな大人から色んな仕事のオファーがきているって。いつものこの人を見ている僕と真咲からすると、ありえないとしか思わなかったけれど。

あれ、本当だったんだ。

天才とバカは紙一重ってやつだ。

「天才って……。じゃあ、理由は?何でこれを作ったんですか?」

「真咲、さっきから思っていたがお前すこーしだけ言葉遣い柔らかくなったか?」

今はそんな事どうでも良いと言い、先輩の答えを待つ真咲。

「んー、理由なあ……」

先輩は少し悩む。

「つむぎがさ、物語書くのに困っていただろ?だから、本人自ら異世界に行って貰えば少しはピンとくるものが出てくるんじゃないかと思って、ほんのサプライズのつもりだったんだよ」

……え?

「僕!?僕の為にこの世界を作ったんですか?!」

そうだよとあっさり答える先輩。

「それで一緒にこの世界に入って案内してやろうと思っていたんだがな。俺のお願いを無視してフライングしたお馬鹿な2人の後輩のせいで台無しになったよ」

先輩はやれやれと手を挙げる。

「じゃあ、この最強の力って最初から手にする事が決まっていたんですね」

「そう。まあ、最強能力は元々俺が得る予定だったんだがな」

「先輩が?僕の為に作ってくれたゲームなんですよね?」

「ああ、そこでさっき言った謝罪に繋がるんだが……」

先輩が初めてハナの顔を見る。

「久しぶりだなハナ。全知、消したんだな?」

あ、そうか、製作者だからハナと顔を合わせていてもおかしくないんだ。

でもハナはそんなに嬉しくなさそうだ。

「あ、はい……」

と返事しただけでいつものハナらしくない。

また猫をかぶっているだけかな?

「ハナ、俺の事は覚えているんだよな?だとするとあの事も記憶から消してないって事だな?」

「……いいえ、れん様が製作者という事だけ記憶に残しています」

あの事?何の話だろう?

ハナ、少しだけ震えてる気がする……。

「じゃあ、その怯え方はなんとなく察しているって事か」

先輩がどんどん話を進めていく。

「先輩、あの事って何ですか?」

僕は思い切って聞いてみる。

「……この世界から戻る方法だ」

…………この世界から?

僕はここで考える事を放置したくなった。

『戻りたくない』ただ、その気持ちだけがぐるぐると頭の中を回る。

「先輩が俺たちを探していた理由って、もしかしてそれですか?」

「そうだ。そろそろ戻らないとまずいんだよ」

「まずい?」

「この世界は凄く面白いだろ?1日があっという間に過ぎるほど。けど、この世界に長居し過ぎると元の世界での存在が消されてしまうんだよ」

真咲もここまで聞いて固まる。

「本来なら、俺が案内していれば自然と話す事ができた。けどそれは不可能で、でも元々ハナに良いタイミングで教えて貰えるように設定していたのだが、つむぎが全知を消した事により教えるっていう事を忘れてしまったんだ」

「僕のせい……」

「いや、つむぎが悪いんじゃない。それでも覚えておく事もできた筈なのに、わざとハナはこの記憶を消したんだ。きっと、お前らとの旅がそれほど楽しかったんだろう」

ハナはずっと下を向いている。

ハナ……。

「んで、戻る方法についてだが、その事がお前らに謝罪しなければならん理由になる。」

僕と真咲は緊張する。

「ハナをころせ」



ハナヲコロセ?

……この人は一体何を言っているんだ。

久しぶりにあったからちょっとした冗談を言ってみただけだろうか。

それにしても、ブラックジョークが過ぎる。

「せ、先輩、冗談にもほどがありますよ〜」

僕は、ハハッとから笑いをする。

「冗談じゃない。この世界の鍵そのものがハナなんだ。その鍵を壊す事でこの世界から出られる。で、その壊す役目だが、選ばれし者にしかできない。つまり、つむぎお前だ。お前の力でハナを壊すんだ」

「はい?何言ってるんですか。なんでそこで僕になるんですか。それに、僕の力は人には通じない筈です」

僕の身体中から汗が出てくる。

「つむぎ、ハナはあくまで鍵なんだよ。ずっと一緒にいる中で、人として見るようになったんだろうが、所詮はアイテムだ。だからお前の力は通じる」

……この力でハナを?

「本当は俺がその力を得る予定でその役目は俺自身が受ける筈だったんだがな、すまない」

「嫌です」「嫌だ」

僕と真咲が同じ返事をする。

「そんな事しなくちゃいけないのなら、僕は元の世界での存在が消されたって構いません。僕はこのまま3人でずっと旅をしていたいです」

「そうだな。俺もつむぎと同じだ。つか、製作者なら設定イジってどうにかしろよ」

真咲も余裕が無くなってきている。

「ダメだ。このゲームが完成した時点で設定をいじる事はもうできない。それに、お前らには家族がいるだろ?元の世界での生活がある。それは確かに存在しているんだ。今、ここにいる間にも向こうの世界の時間は動いている。ここに1日いると向こうでは5分進むんだ。だからと言ってさっき説明した通り、時間に余裕がある訳ではない。お前らは戻らなくちゃいけないんだよ」

「……そんな事言われても、僕はここが大好きなんです!絶対戻りたくない!」

大声を出す僕に驚く先輩。

「まるで駄々っ子みたいだな」

こっちの気も知らないくせに!

「そうなるのが分かっていたからこそ、戻らなきゃいけないように俺は設定したんだよ。この世界に依存して元の生活を忘れるなつむぎ。お前、小説書きたいんだろ?」

そんな事言われなくても分かっている。

分かっているけど……。

「……良いのよつむぎ、真咲。貴方達には戻らなくちゃいけない場所がある。だから、私の事は心配しないで。最後に楽しい思い出が沢山できて、とても幸せだったわ!」

ハナがとびきりの笑顔で言う。

我慢して僕たちの為にそう言ってくれているって事くらい分かってるよ、ハナ。

だから、そんな事言わないで。

ハナの瞳から涙が今にも溢れそうだ。

「お前らも薄々感じていた筈だ。元の世界はどうなっているんだろうって」

その言葉で、さっき先輩を見た時に何故か安心した事を思い出す。

「……分かった。つむぎ、俺らもう帰ろう」

「真咲!!?」

真咲までそんなこと言うの?

ハナのこの涙が見えていないの?

「先輩の言うように俺たちは転生した訳じゃない。戻らなきゃ、いけないんだよ」

真咲が拳をギュッと握っている。

その手に血のようなものが滲んでいる。

自分の感情を抑えるのに必死すぎて、爪が手のひらを傷つけているんだ。

…………………………。

それでも、やっぱり僕は嫌だ。

「先輩、どうせ戻るならハナを傷つけずに帰りたいです。」

僕は先輩の目を見る。

「……すまん」

その言葉で他に選択肢がない事が分かる。

くそ、なんでハナがそんな目に合わなきゃいけないんだ。

「ハナだって、普通の女の子なんです。そりゃあ、初めのうちは口が悪くてそっけなくて僕の事嫌いなのかな?って思っていたけど、本当は優しくて強くてカッコよくて可愛くて。そんな普通で最強の女の子なんです。それでも帰れと言うんですか?」

「つむぎ……」

「んー、そうだな」

先輩は困った顔をしている。

分かってる、分かっているんだけど分かりたくない。

だって、僕まだ子どもだもん!

僕はハナの手を取り、立ち上がる。

「先輩、この世界は元々僕の為に作ってくれたんですよね?だったら、もう少しだけでもここにいさせて下さい!!」

「つむぎ!」

「待て!つむぎ!」

2人の声が後ろから聞こえるが気にしない。

家を飛び出し僕はあの言葉を口にする。

「ワープ!!!」

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