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「ね!ハナちゃんはどんなお菓子が好きなの?」
「私は……サーターアンダギーかしら」
「お前独特だな」
「ハナ、サーターアンダギー食べた事あるの?」
「いいえ、ラッセで屋台のおばちゃんからそういうお菓子があるって聞いていたの。だから、ずっと気になってて」
「じゃあ、私今から作ってあげるわ!あ!それかハナちゃんが良ければ一緒に作らない?」
「……良いわよ」
サーヤさんはとても楽しそうに、照れているハナの手を引き部屋を出て行く。
「いやあ、サーヤさん元気になって良かったですね」
「そうだね、これもつむぎ君達のお陰だよ。本当にありがとう」
「へへ」
僕は思わず照れる。
あれから僕たちは、今晩は泊まって遊んでいって欲しいというサーヤさんのお願いにより、お邪魔する事にした。
「ササカベ君、夜ご飯ご馳走してくれてありがとうね」
「お礼にしちゃ安すぎる気はするけどね」
「ううん、旅人の僕たちにとってはすごく助かるよ」
そうか?と頭を掻くササカベ君はとても嬉しそうだ。
「それより、ササカベ。あの掃除屋がいなくなって困る事もあるんじゃないか?掃除やら料理やら……」
あ、そういえばそうか。この家で家事をしてくれていた人がいなくなっちゃったんだ。
「ああ、それなら問題ない。さっき連絡したらサーヤのご両親がすぐ戻ると言って下さったんだ。それに、お二人が戻ってきたら僕をここで働かせて貰えないか頼むつもりだから」
「え!良いじゃないですか!そうなったらずっとサーヤさんと一緒にいられますね!」
ササカベ君は照れながらまあな、と言う。
「告白は?しないの?」
真咲が突然ぶっ込んだ。
「な!!なんで、知って!」
ササカベ君の顔はみるみる赤くなっていく。
やっぱり、好きなんだな。
「もろ分かりなんだよ。逆にバレてないと思ってたのか?」
「そうだね、多分サーヤさんにも気づかれてるんじゃないのかな?」
「え!?そんなに顔に出てる?参ったな……」
乙女のようにほっぺを抑えるササカベ君。
「ササカベ、あの子の事好きなの?」
夜ご飯の残り物をガフガフと食べていたスライムが聞いてくる。
「そうなんだよ、実はササカベ君サーヤさん大好きなの。だから、これから2人の恋のキューピットとしてもよろしくね?」
僕はスライムに後は頼んだと頭を撫でる。
「ふふ、任せて!」
「「きゃーーーーー!!!!!」」
!?
突然、ハナとサーヤさんの叫び声がした。
「サーヤ!」
「ハナ!」
僕たちはキッチンへ急いで行く。
「……これ、なんだい?」
2人ともヘタリと座り込み、辺りは油が飛び散り鍋も床に落ちている。
「揚げようとしたら油が跳ねて、それがハナちゃんの指に当たって驚いたハナちゃんと私が暴れて鍋ごと倒れちゃったの……」
「火傷は?」
ササカベ君がサーヤさんの手を掴む。
「大丈夫よ」
サーヤさんの頬が少し赤くなる。
ん?
これ、もしかして脈あるんじゃない?
「ハナは?大丈夫か?水で冷やすか?」
真咲がタオルを濡らしてハナの手にそっと当てる。
「ありがとう」
ハナが少し泣きそうになっている。
「どうしたの?ハナ」
僕もハナの側に腰を下ろす。
「揚げるだけなのに、料理って難しいのね。私少し揚げ物が怖くなっちゃったわ」
「そんな事ないわ!料理は楽しいのよ。好きな人に美味しいって言って貰えて、笑顔も見れて。それに、ハナちゃんと作るの私楽しいわよ」
サーヤさんがハナの手を掴み、目を見つめながら話す。
「サーヤ……。ありがとう。私、もう一度挑戦してみるわ」
ハナとサーヤさんが立ち上がる。
そして、またガチャガチャと動き出す。
「僕たちは戻っていようか」
ササカベ君の言葉に僕と真咲は頷いて部屋に戻る。
暫くして、ハナが綺麗にお皿に盛ったサーターアンダギーを持ってきた。
「どうぞ……」
照れているのか、緊張しているのかよく分からない顔をしている。
「「いただきまーす」」
僕と真咲がパクッと食べる。
「うん!美味しい!」
「ん、これ食べやすいな。俺この菓子好きだわ」
ほんと!?と言ってとても嬉しそうなハナ。
こんなハナが見られるなんて、この村に来て良かったなあ。
「うん、美味い。良い奥さんになれるよ」
「本当?……ササカベは料理上手な奥さんが良い?」
「……うん、良い。好き」
「へへっ、ササカベ、いつもありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
ふふっと笑い合う2人。
端の方でピンク色のオーラを発している。
「ね、ササカベ良い感じだね」
スライムがコソッと耳打ちしてくる。
「そうだね、きっとこのまま上手くいくだろうね」
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翌日、ササカベ君とスライムとサーヤさんがお見送りをしてくれた。
「もう行っちゃうの?」
サーヤさんが寂しそうに言う。
う、思わずもう10泊して行こうかと言ってしまいそうになる。
「また、すぐ会えるわよ」
「そう?いつでも待っているからね」
ハナとサーヤさんが握手をする。
2人はもうすっかり友達になったんだなあ。
「3人とも、本当に助かった。ありがとう」
「いえいえ、ササカベ君がいてくれたからサーヤさんは助かったんだよ。お疲れ様!」
「はは、ありがと!」
「スライムも、色々ありがとう。僕、君を悪魔だなんて言ってしまったけど取り消すよ。君は優しいただのスライムだ」
「えへへ、つむぎ好き〜」
スライムが僕の顔にスリスリする。
うう……。
僕は連れて行きたい欲求を我慢する。
またねー!と手を振り僕たちは村を出る。
心なしがハナが少しだけ元気がない気がする。
「ハナ?どうしたの?もしかして村に残っていたかった?」
まあ、そりゃあそうだよな。初めての女の子の友達。
離れるのが寂しいのは当たり前だ。
「んーん、大丈夫。だって、きっとまた会えるもの」
ハナは前を向いて清々しい顔をしている。
「あー!なんか、今回凄いスッキリしたわ」
真咲が伸びをする。
「あ、僕も!なんだか気持ちいいよね!」
「そうね、この場所がそうさせてるんでしょうね」
僕たちは草原を見渡す。
うん、良い街だった。
他にももっと色んな場所があるんだよね。
僕は思わず嬉しくなる。
もっと沢山見に行こう。
3人で笑って楽しい旅を続けていくんだ。
ブオンッ
?
後ろから聞き覚えのある音がする。
僕たちは振り返る。
!!!!?
僕と真咲は思わず目を見開く。
「やっと見つけたー!!!」
その人は、『あいあむひーろー』と書かれた服を着て、その上には青色のマントを羽織っている。
「「れん先輩!!?」」
いよいよ最終章です。
最後まで3人仲良く、やっていきましょう。




