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家の中へ入ると、思っていたよりずっと派手な壺が置いたあったり絨毯の装飾も凄かったりと、この家がお金持ちという事が分かった。
「ササカベ!!」
可愛らしい声と共に奥から出てきたのは、綺麗なドレスを着た女の子だった。歳は僕達と同じくらいだろうか。髪は金色で、瞳が緑色に輝いている。色白な肌を見ると、普段からあまり外出をしていない事が容易に想像できる。この家のお嬢様なのかな?
女の子はササカベさんの腕を掴む。
「最近遊びに来てくれないから、とても寂しかったのよ!」
「ああ、いやそこらで迷子になってしまってな。この旅人達が助けて下さったんだ」
ササカベさんは照れながら嘘をつく。
「まあ、そうだったの!ササカベを助けて頂きありがとうございます」
女の子は僕達に深々とお辞儀をする。
僕達は慌てながらいえいえと言う。
ここはササカベさんの話に合わせておけば良いんだよね?
「良かったらお菓子でも召し上がって!私、こう見えてお菓子作りが得意で、ちょうどクッキーを焼いていたところなの!」
お嬢様に誘われちゃ断れないということで、僕達は案内された部屋へ向かう。
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「お待たせ!」
そう言って持ってきてくれたクッキーは、人生で食べた中で1番美味しかった。
「ごちそうさまでした、とても美味しかったわ」
ハナが言うと女の子は嬉しかったみたいで、
「待ってて!ケーキも焼いてくるから、食べて欲しい!」とはしゃぎ始めた。
ガタッ
走って部屋を出ようとした時、女の子が突然倒れた。
「サーヤ!」
ササカベさんにサーヤと呼ばれた女の子は、ゴホゴホと酷い咳をしている。
「ササカベさん、この子大丈夫ですか?」
ササカベさんは、少しだけ待っていて下さいと言うと女の子を抱いて何処かへ行ってしまった。
「あの子、風邪でもひいてるのかしら?」
ハナと真咲とさっきまで座っていたソファに座り直す。
「いや、あの咳の仕方は流石におかしくなかったか?さっきまではしてなかったし」
真咲の言うように、普通の風邪ではなさそうだった。
「お待たせしました」
ササカベさんが暗い顔をして戻ってきた。
「えっと、サーヤさん?は何かご病気なんですか?」
僕は立ってササカベさんに聞く。
そんな僕に座って下さいと言い、ササカベさんも僕たちの前に座る。
「あの子、サーヤは未知の病なんです。2ヶ月ほど前からずっとあんな感じで、本人の気分が上がったり興奮すると咳き込んで倒れてしまうんです」
未知の病か……。
「もしかして、それがさっきの頼み事に関係しているんですか?」
真咲が聞く。
「そうです。実は、とあるダンジョンにどんな病でも治してくれる魔神がいると風の噂で聞きまして。僕はその魔神を求めダンジョンへ向かったんです。けれど、そのダンジョンは人数に決まりがあるらしく、4人いないと入れないのです。しかもその4人ともダンジョン攻略者じゃないといけなくて。それで、仕方なく村へ帰っている所にあなた方がいたのでこれは運命だと思い突然あのような事を……」
なるほど、旅人なら他にダンジョンを攻略していてもおかしくない。だから、僕達に声をかけたんだ。
「でも、サーヤさんになんであんな嘘をついたの?」
ハナが質問をする。
「あの子はとても優しい子なんです。もし、自分の為に危険を冒していると知ってしまったらきっと、凄く傷ついてしまいます」
それであんな嘘を。
「でも、実際そのダンジョンに向かってササカベさんにもしもの事があったら余計にサーヤさんの病が悪化してしまうんじゃないですか?」
ササカベさんは僕の言葉を聞き、少し悩む。
「僕、サーヤが大切なんです。サーヤの為ならなんだってしてやりたい。また、元気に走り回って欲しい。それに、サーヤは僕の事そこらの放浪者としか思っていないので、僕に何かあっても気づく事もないですよ」
ああ、ササカベさんはサーヤさんが好きなんだな。
「放浪者?そもそも、お二人はどうやって出会ったんですか?」
ササカベさんが長くなりますが、と前置きをして話してくれる。
「旅商人だった僕は、ある日この村に寄ったんです。そして特に用があった訳でもないのですが、なんとなくこの村を気に入り暫くここにいる事にしたんです。物を売っては食を頂き、暇があれば散歩をしてみたり。そんな事を繰り返していると、ある日の散歩中、野良犬と走り回っていた女の子とぶつかったんです。その子が、サーヤです。サーヤは、綺麗だったはずのドレスを泥だらけにしながら犬と走って転んで遊んでいました。そんな彼女が何故か気になって、それから見かける度に声をかけるようになったのです。すると、サーヤも僕の事を覚えてくれてあちらから話しかけてくれる事も増えて、一緒に遊ぶようになりました。そんなある日、家に遊びにおいでと誘われ行ってみると立派な建物で驚きました。お嬢様かなとはうすうす感じていましたが、やんちゃ過ぎていたので僕の勘違いだと思っていたのです。」
ササカベさんとサーヤさんの2人で物語が作れそうなくらい、運命的な話だ。
「それからもしょっちゅう家に遊びに行っていたのですが、ある日突然サーヤが倒れたのです。それからはずっとあの通りです」
本当に突然だったんだ。
でも、なんでサーヤさんだけ?
「とにかく、そういう訳なので一緒に着いて来て下さい!」
ササカベさんが頭を下げる。
僕は立ち上がってササカベさんに言う。
「少しでも早くサーヤさんを元に戻してあげましょう!また、走り回れるように!」
ササカベさんも立ち上がる。
「ありがとうございます!」




