8-1
パッと着いた先は、草原に囲まれた一本道だった。
「珍しいね、道の途中に着くなんて」
僕は辺りをキョロキョロと見渡す。
「なんか、こういう所も良いな」
真咲が気持ちよさそうに空気を吸っている。
「お腹は充分膨れているし、少しだけあの島の食べ物も貰えたし、暫くはただお喋りしながら歩いてみるのも良くない?」
ハナが少し照れながら言う。
「そうだね。お互いの事ももっと知りたいもんね」
ハナはそんなんじゃないけど、と顔を逸らす。
僕たちは歩きながら自分達の事をハナに話す。
「でね、そのれん先輩の事を真咲が変先輩なんて呼ぶようになったもんだから、僕にまでうつっちゃってさ……」
ハナはふふっと笑いながら聞いてくれている。
「その変人さん、私も会ってみたいわ」
「いやいや、あの人結構面倒くさいんだぞ?」
「そうだね、たまに鬱陶し過ぎる時あるもんね」
「あの……」
急に後ろから声をかけられる。
振り返ると、茶色いボロボロの布を被り、変わった装飾の杖をついている人が立っていた。
深くまで布を被っているから、顔が良く見えない。
「あの?どうされましたか?」
僕は顔を見ようと下から覗く。
すると突然、その人がいきなり土下座をしてきた。
「へ!?なに!?」
僕は驚いて後ずさる。
後ろで見ていた2人も驚いている。
「恥を招致でお願いがございます!急で申し訳ないのですが、一緒にダンジョンに入って頂けないでしょうか!」
声がガラガラで暫く物も飲まず食わずなんだろうという事が分かる。
「あの、頼むなら先に自己紹介と理由くらい話して下さい。急にそれだけ頼まれても、困ります」
真咲が言葉遣いに気をつけながら話しかける。
「は!そうですね!大変失礼致しました。」
その人は立ち上がって、頭まで被っていた布を取る。
「僕はこの先にある村、ダーヤ村の住人でササカベと申します。普段は商人をしています。」
ボロ布を外してみると、全然普通の綺麗な服を着ていた。でも、頭はボサボサで髭も生えている。体型は少し筋肉があって、背が高い。
「それで、ダンジョンに来て頂きたい理由なのですが……」
ササカベさんは、チラリと道の先を見る。
「一度、村に来て頂いてもよろしいでしょうか?そこで理由を説明させて下さい」
僕たちは顔を合わせ、頷き合う。
「良いですよ、ただその前にこれ良かったらどうぞ」
僕はあの島で貰ったおにぎりや、コーンスープを渡す。
「良いのですか!ありがとうございます、ずっと何も口にしていなかったもので……」
そう言ってササカベさんは嬉しそうに受け取る。
ではこちらですと言っておにぎりを頬張りながら、僕達の前を歩く。
「おい、大丈夫なんだよな?」
真咲がコソッと耳打ちをする。
「きっとあの人は大丈夫だよ、真咲もそう感じたから許可したんでしょ?」
まあな、と言って前を見る。
少し歩くと、村が見えて来た。
「ここです!ようこそ、ダーヤ村へ!」
村と聞いていたから、もう少し田舎なイメージだったけれど意外と建物も綺麗で人々も生き生きと生活しているようだ。
「こちらです!」
ササカベさんはえらく上機嫌そうだ。
案内して貰った家は、他の家より大きく立派な建物だった。
すると、着くなりササカベさんがソワソワとし始める。
「あの、僕の見た目ってどうですか?その、薄汚れていたり格好悪くないでしょうか?」
なんだ?急に。
そこまで見た目にこだわっているイメージは無かったけれど。
「うーん、そうね。少し、いいかしら」
ハナがそう言うと、ササカベさんの頭上から水がザーッと降ってきた。
「なんですかこれ!?」
ササカベさんは水に打たれながら驚いている。
次にハナが指をちょいとすると、何処からか風が吹いてきてササカベさんから水が飛ばされる。
風が落ち着いて見てみると、さっきまで汚れてボサボサだった髪と髭が綺麗になっていた。
「流石、旅の方!ありがとうございます!」
ササカベさんは訳も分からないまま、ハナにお礼を言っている。
では!と家の扉を開ける。




