7-4
翌日。
僕は皆んなより少し早めに起きて、朝日を見に出ていた。
もちろん、あの子豚も着いて来てくれている。
「綺麗だねえ」
ブヒブヒと鼻を鳴らしながら僕の膝の上にいる。
暖かいな。
昨日、この子に名前を付けようとしたら真咲に止められた。
情が出るから離れられなくなるぞって。
もういっその事このまま島に残りたい気持ちもあるけれど、そんな事言ったらきっと怒られちゃうんだろうな。
あの子とこの子は違うけれど、あの子のいた頃を思い出せて凄く嬉しかったんだ。
多分、それも真咲にはお見通しで、分かった上で注意してくれたんだろう。
僕は朝日を眺める。
「このまま海に飛び込んじゃおうかな……」
ブヒッ!!!!
ゴンッ!!
「痛っ!」
何か察したのか、子豚が僕の顎に頭突きをする。
ブヒブヒと言って僕の胸に顔をスリスリしてくる。
「ごめんね、大丈夫だよ。ありがとう」
頭を撫でながら考える。
あの子が亡くなってからもう一年は経つのに、僕はまだ忘れられていない。
ここの世界に来て最初の頃、ハナの言葉を聞いて心が少しは軽くなった。
真咲にももう大丈夫だって言った。
でも、ダメだった。
どうしても心が弱っている時にあの子を思い出すと、会いに行きたくなってしまう。
その時、自然と涙が出て来た。
「ありゃ、困ったなあ」
ハハッと笑いながら泣いている。
我ながら気持ち悪い。
もう高校生にもなって、親友も2人いて、最強にもなれたのにメソメソし続ける僕はどうやら最強系主人公には程遠かったらしい。
心までは最強になれないか……。
異世界に行けたらどれだけ楽しいんだろうと、小説を書きながら今まで何度も妄想してきた。
でも、僕は最強になって戦っている時よりも、皆んなで笑い合っている時の方が楽しかった。
最強だから、笑い合えるのだろうけれど、それでも僕はこの力は無くても良いやと感じていた。
ハナに頼んでみようかな。
いや、でもきっとそれだけは断られる気がするなあ。
最強勇者の癖に、こんなに中身はナヨナヨしていて、メソメソしやすくて本当ダサすぎる。
「つむぎ君はカッコいいよ」
「へ!?」
僕が病みすぎて泣いていると、急に子豚が喋り出した。
「君、喋れたの!?」
子豚は僕の声にビクッと驚いて、僕から離れてこちらを見る。
「いや、ずっと喋りかけていたんだよ。ただ、その言葉をつむぎ君が理解できるようになっただけ。良かったあ、届いて」
「何で急に?」
「分からないけど、つむぎ君最強なんでしょ?その力のお陰なのかな?」
この力にそんな能力が?
今まで知らなかった。
子豚は僕の隣に座る。
「今日帰っちゃうんだよね?話せて嬉しいな」
僕はさっきまでこの力は無くても良いだなんて思っていたのに、調子良くこの力があって良かったなんて思い始めている。
「僕も嬉しいよ、でも余計に離れるのが寂しくなっちゃうね」
僕はまた涙が出そうになるのを、必死に抑える。
「抑えなくて良いんだよ。相手に君の気持ちを知ってもらう為に感情ってあると思うんだ。だから、思い切り出しちゃって良いんだよ」
僕はふふっと笑う。
「君、本当に普通の子豚なの?」
僕は涙が溢れる。あの子が亡くなってから我慢していた分、全部。
「ありがとう」
震える声で伝えたありがとうを受け取って、子豚はまた僕の膝の上に登る。
「帰るまでぎゅっとしていて欲しいな」
「うん!」
僕は思い切り抱きしめる。
「つむぎ君、助けてくれて、この島に来てくれてありがとう」
「こちらこそ!助けてくれてありがとう」
ザザーと海の音がする。
うん、もう本当に大丈夫だ。
決めた、元の世界に戻ったら、あの子とこの子豚をメインキャラに小説を書こう。
きっと、面白い話ができる。
そろそろ戻ろうか、と僕は立ち上がる。
ブヒッ!
……戻っちゃった。
少し寂しいけれど、僕の心は感謝の気持ちでいっぱいだ。
海から戻ると、皆んなもう起きていた。
最後にご飯を一緒に食べようと、準備をしているらしい。
「おはよ!真咲!」
「はよ〜」
まだ目が覚めていないのか意識がハッキリしていない。
「おはよ、ハナ!」
「おはよ」
あれ、ハナの頭や服に葉っぱが沢山付いている。
「ハナ、どこか冒険にでも行ってたの?」
僕は笑いながら葉っぱを取ってあげる。
「あ!えっと……そうよ!朝起きたらこの島を最後に見て周りたくなってね!」
なんだか慌てているような気がする。
「そう言って、最後にここの食べ物を堪能しに行ってたんじゃないの?」
僕はニヤニヤとハナをおちょくる。
「違うわよ!人を食いしん坊みたいに言わないで!」
顔を赤くしながら、豚一家の方へ行ってしまった。
本当、ハナは分かりやすいなあ。
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ご飯を食べて、海辺でさよならの挨拶をする。
「楽しかったわ、ありがとう。ボス熊、しっかりこの子達を守ってあげてね!」
ハナがボス熊に言い聞かせる。
ボス熊はうんうんと首を振っている。
「お前らも、もっと沢山食べて動いて強くなれよ!」
真咲も豚一家へ最後の別れの言葉を言う。
「また、会えるよね?」
僕はずっと抱きしめていた子豚を見つめながら聞く。
すると、子豚は僕の手から離れて家族の元へ行く。
そして、僕の目を見つめ返す。
……そうだね、いつまでも執着していちゃ駄目だ。
「さよなら!!」
僕達は最高の笑顔で別れを伝える。
そして、手を繋いで声を振るわせながらハナが言う。
「ワープ!!!」
今日はおまけも一話あります。
そして物語は終盤に段々と迫ってきています。
ここまで着いて来て頂きありがとうございます。
最後まで、是非見ていて下さい。




