6-2
宿に入ると、本当にあの男性がいた。
「え!もう返事を頂けるのですか!」
喜ぶ男性に僕はここに泊まりたいだけだと伝える。
男性は少しテンションが下がる。
いや、僕たちお客さんだよ?
むしろ喜んで?
男性に部屋へ案内される。
「では」
男性はハナの事をチラッと見て去って行く。
早く返事した方が良いだろうな。
ハナは疲れてるみたいで、ウトウトし始めている。
真咲も満腹になったからか、眠たそうにしている。
うん、僕も今日はさっさと寝よう。
僕たちはお風呂だけ入ると、すぐに眠りについた。
______________
朝になって、この街を探索しようと3人で宿を出る。
「何か食べたいなあ〜」
僕は食べ物屋を探す。
「夜結構食べたから、あんまお腹空いてねえな」
「じゃ、軽いものにしようよ。お茶漬けとか!」
「お、めちゃくちゃあり」
僕と真咲は新しい街に心が躍っていた。
ハナはというと。
「お茶漬け……結婚……」
まだあの男性の事で悩んでいた。
「ハナ、あんな良い男そういないぞ?自分がアイテムだからって気にすんな、相手はそんな事気にしないだろうし、お前なら上手くやっていけると思うぞ」
真咲が良い言葉と同時に、痛い言葉をハナにぶつける。
真咲は罪深いなあ。
「そうね……」
ハナはそれだけ言って考え込む。
あ。
ハナが柱にぶつかりかけた。
それを真咲が手で遮って助ける。
「お前、危ないな。前見て歩けよ」
真咲……。
なんだか僕まで心が痛くなってきた気がする。
ハナはまたぷるぷる震えだす。
「もう!なんなの!」
ハナの中で何かがはち切れた。
「お茶漬け!私、梅茶漬けが良い!」
そう言ってズンズンと前を向いて歩き出す。
「なんだ?」
真咲は頭にハテナを浮かべている。
お茶漬けを食べ、また3人でぶらぶらと散歩する。
ちなみに、お茶漬けを食べている間もハナはやけになってガフガフと2杯も食べていた。
「あ、ハナ。服と装備見に行こうよ」
「そうだったわね。まず装備から決めたいかも」
おっけと言って装備屋へと向かう。
【出張!ニーゴの店】と書かれた看板を見つける。
……あれ、見覚えあるぞ?
僕たちは店の中へ入る。
「どういうのが良いの?」
僕は、その辺の装備を適当に手に取りながらハナに聞く。
「そうね、イヤリングが良いわ」
この間まで自分がイヤリングだったのに、よく選べるな。
いや、だからなのかな?
僕は店員さんに声をかける。
「あの、すみません。装備でイヤリングってありますか?」
ズンズンと奥からやってきたお爺ちゃんは、やっぱり筋肉はあるけれど小さくて可愛らしい。
久しぶりのニーゴだ……。
「……これとかどうじゃ」
うわ、初めてお話しできた。
僕はなんだか嬉しくなる。
お爺ちゃんが出してきた物は、ハナの目の色と同じように深く綺麗な青色だった。
お爺ちゃん、良いセンスしてる。
「これにするわ!」
ハナも気に入ったらしい。
店を出て、すぐに耳につける。
「ふふ、可愛い」
凄く喜んでいる。
良かった、少しは機嫌が戻ったかな?
勝負には負けたけど、なんだか僕も嬉しいな。
「じゃ、次は服だね!」
さっきから真咲が静かだな、と僕はチラッと見る。
あれ?いない。
「真咲〜?」
キョロキョロと探すと、近くの本屋で立ち読みをしていた。
「おう、終わったか。次は服だっけな?」
本をパタンと閉じる。
「僕、ずっと着いてきてると思ってたよ〜」
真咲は悪い悪い、でも遠目に見てたぞと言って軽く謝る。
ハナは、ジトーっと真咲の事を見ている。
僕が気をつけなきゃ……。
「真咲!次はちゃんと着いてきてね!」
はいよ〜と言って一緒に服屋へ向かう。
ふりふりの装飾に、ピンクやら水色のキラキラ光るビー玉が入り口にぶら下がっている。外観から既に可愛い感じが漂っている店だ。
「ハナはどんな服が良いの?」
うーんと手を口に当てて悩むハナ。
会った時からずっと白いワンピースを着ていた。
女の子だから、流石にもう少しお洒落したいはずだ。
「これとか、どうよ?」
真咲が選んで見せる。
青色の生地に、黄色やら緑やら紫色の花が大きく散らばっているワンピースだ。
いやいやいや、真咲センスない!
「これは無いんじゃないかな?」
僕は素直に伝える。
「え〜?良いと思ったんだけどな」
「青色はいいかも、あと花柄も」
ハナが真咲にありがとうと言う。
……恋は盲目ってやつなのか?
暫く店内を見て周る。
ハナは青い紐のような物を握って見ている。
あれ、なんだろ。
あやとりでもしたいのかな?
「ね、ハナ。これとかどうかな?」
僕は青いパーカーをハナに見せる。
ズボンもセットだし、黒い線も入っていて結構かっこいい。
「んー、却下!」
ダメだった。
「女の子の服選びって中々難しいね」
僕は真咲の横へ行く。
真咲は黄色の生地に、黒いおじさんの顔が貼り付けられている上着を手にしている。
……それもやめた方が良いんじゃないかな。
「ね!これが良いかも」
ハナがテンション高めに持ってきたのは、白いワンピース。
あれ?
「これ、今着てる服と変わんないじゃん」
「違うの!よく見て」
見てみると、ただのワンピースじゃなかった。
ふりふりスカートだと思いきや、中は短めのズボンになっている。
生地も今着ているやつよりずっと太くて頑丈そうだ。
色もほんのりクリームっぽくてとても女の子らしい。
「これ、可愛いね!きっとハナ似合うよ!これにしよう!」
「これ、着て出ても良いのかな?」
「店員さんに聞いてみよ!」
店員さんはどうぞどうぞと言ってくれた。
僕とハナは会計をして店を出る。
「ありがとね、つむぎ」
ハナがとても素直で僕は少し驚く。
「うん!楽しいしむしろ負けてよかったよ」
僕は辺りを見回す。
「あれ?真咲は?またいない」
「どうせ、また飽きて適当に遊んでるんじゃない?」
ハナがまた少し不機嫌になる。
あーあ、真咲、僕知らないぞ。
「お待たせ」
真咲は、服屋から出てきて僕たちの後ろから声をかけてきた。
「中にいたんだ!ごめん、先に出ちゃって」
僕は謝る。
「んや、俺も買い物してた」
真咲が買い物?しかも服?
「ん」
真咲は手に持っていた小さな紙袋をハナに渡す。
「なに?これ?」
僕もハナも驚く。
「いや、なんか俺のせいでさっきから怒ってんじゃねえかなって思って。お詫び、みたいな?」
そう言って照れくさそうに、紙袋を無理やりハナの手に握らせる。
「見ても良い?」
ハナが聞く。
「好きにしろ」
ガサガサと中を開けると、さっきハナが見ていた青い紐だった。
「これ!」
ハナが瞳を輝かせる。
「何に使うかは知らねえけど、なんか気に入ってそうだったから……」
真咲!
僕も目を輝かせて真咲を見つめる。
どうしよう、僕まで真咲に恋してしまいそうだ。
「良かったね、ハナ。これであやとり沢山できるね!」
僕はハナの肩をポンと叩く。
「違うわよ」
僕の手を振り払って、紐をくるくると髪に巻く。
あ、これって。
「髪を結ぶ紐よ」
「ハナ、とても似合ってるよ!新しい服にも合ってるし」
そう?と言ってハナはニヤニヤとしている。
そうしていたら可愛いのになあ。
僕も思わずニヤニヤする。
「真咲、ありがと!」
ハナはとびきり笑顔で真咲にお礼を言う。
真咲は気だるげに手を振ってまた歩き出す。
いつも読んで頂きありがとうございます!
面白い、続きが読みたい、最近ちょっと気になり始めてるな〜など思って頂けていたら、星の方で感想頂けると嬉しいです!作品の魅力をもっと上げる為にも、反応で素直な感想が欲しいなと思っています。
ブックマークもよろしくお願いします!




