3-5
「ハナさんって可愛かったんだな」
真咲がまじまじとハナの事を見ている。
「やめてよ、変態じゃあないんだから」
ハナは少し照れている。
目の前で話しているハナの姿を見て、僕は嬉しくなる。
「ん……」
後ろから声がする。
「あれ、ここどこ?」
振り向くと、あの女性が目を覚ましていた。
「あ!あの、えっと何て説明したら良いんだろ」
僕が困っていると、真咲がズイッと前に出て女性の近くに寄る。
「お姉さん、体調が悪かったみたいで演奏中に倒れたんだよ。そこをたまたま通りかかった俺たちが、とりあえず泊まっていた宿まで運んだって訳」
上手いように言う真咲。
「そうだったの、ごめんなさいね、せっかくの楽しいお祭りを邪魔しちゃったみたい」
「そこは心配いりません、私たちどっちにしろ貴方を探していたので」
そとづらの話し方をするハナ。
「私を?どうして?」
ハナと真咲が僕の方を見る。
ハナはジトっとした目で僕を見て、真咲は片目をとじてウインクをしている。
え〜、どう言えと?
はっきり一目惚れしたからです!なんて言える訳ないし。
「……えっとですね、それは貴方の演奏を聴いてみたかったからです!」
我ながら良い誤魔化し言えたんじゃ?
「私の演奏を?」
不思議そうにするお姉さん。
「そう!そうなんです、実はお姉さんの演奏が凄く素敵だと噂で聞きまして、それで探していたところたまたまお見かけしたって感じです!」
少し無理やりだったか?
2人の視線が痛い。
だって、こんなところで告白なんてできる訳がない。まして、まだ知り合ってすらいないのに。
「そうだったの!」
お姉さんは嬉しそうに手を合わせる。
「実はね、私この街のあるお店でウェイトレスをしているの。そこでよく演奏を披露していてたまにそう言って下さる方が聴きに来て下さるの!貴方も同じって事ね」
少し違うけど、ファンと言われれば同じようなものだから僕は頷く。
「そうです。ほんと、とても素敵な演奏されていると思います」
その言葉を聞いて女性はふふふっと嬉しそうに笑う。
かわいい……。
「じゃあ、助けて頂いたお礼です。そのお店までご案内させて下さい!とても素敵なお店なんです」
女性は目をキラキラさせている。
そんな目をされて断れる男がいる訳がない。
「いや、やめときます」
真咲が断る。
いや、なんで!?
「僕たち、旅の途中でお金があまりなく、お店で支払える待ち合わせが何もありません」
嘘ばかり言う真咲。
こんな宿に泊まれているくせに。
なんでそんな嘘を?
「そうだったのですか!いえいえ、助けて頂いたお礼なので支払いなんていりません。何も気にせず遊びに来て頂きたいのです」
そんな雑な嘘に気づかず優しく誘ってくれる。
なんてピュアな人なんだ。
振り向いてニヤッと笑う真咲。
なんて邪悪な奴なんだ。
お金ならいっぱい持っているんだからそんなケチな事しなくても。
「良いんですか?嬉しいです、とても助かります!」
ハナまで真咲にのっかっている。
なんなんだ、2人して。
「では、案内致しますね!あ、私の名前はシンです、よろしくね」
皆んなで出かける準備をして宿を出る。
前を歩くシンさんとハナを見ながら、僕は真咲に聞く。
「何であんな嘘ついたのさ。ただでさえ僕のせいで倒れさせてしまったのに。心が痛いよ」
僕は少しほっぺたを膨らましながら、怒る。
そんな僕を気にせず真咲は言う。
「いやいや、ハナさんが人間の格好になったって事は、これからもう1人分宿代やら必要なら移動費やらがかかるって事だぞ。いくら金が有り余ってるからってこういう時は上手く生きるべきだろ。ハナさんの助けも中々して貰えなくなったんだし」
なるほど、そんな事を考えていたのか。
「それに、あの女が何となく怪しかったから試してみた」
怪しい?あの人が?
「どこが怪しいのさ」
「ウェイトレスしてるって言ってただろ?これから行く店がどんな所か分かんねえのに、このまま連れてかれて有り金全部巻き上げられたらどうするよ?だから、一応ああ言っといた」
なんて疑い深いんだ。
「ああ言って諦められてたらどうするつもりだったのさ」
「その時はその時でちゃんと別の案考えただろうよ」
「…真咲って心配性拗らせてるよね。あと女性への扱いが酷い」
「うるせっ」
「着きましたよ!」
シンさんがお店の前に立ち、振り向く。
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