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宿に戻ってからお姉さんをベッドに寝かせ、僕は気になった事をハナに聞いてみる。
「ねえ、ハナってなんでも知ってるじゃん?それで、真咲の時居場所までは発信機付けないと分からなかったみたいだけど、その時の状況は知ってたじゃん?つまり、この女性の事も何処の誰で何している人かは知っていたの?」
ややこしくて、自分で聞いといて分からなくなってくる。
『ええ、でも私の何でも知っているっていう力、つまり全知全能には実は情報の読み方があるの』
「読み方?」
『そう、まずこの世界の全人類、全モンスターのすべてが頭に入っていると思ってみて。混乱しちゃうでしょ?だから、私の中では本棚があって、そこから知りたい情報の本を選んで読んでるって感じになっているの』
僕は聞きながら頭がパンクし始めていた。
「ハナさん、つまりはその本棚に入っている情報が全部分かるって事だよな」
真咲が僕に変わって話を進めてくれる。
『そうよ。ただ、つむぎとの約束で面白い事と嫌な事は読んでも教えないようにしているの。だから、さっき聞かれた時その女性の情報は何も言わなかった。きっと、つむぎ自身がその女性と話して相手の事を知っていく方が、私から聞くより何倍も面白いでしょ?』
そっか、ハナは僕との約束をしっかり守ってくれていたんだ。
僕は1番聞きたかった事を質問する。
「ハナって予知能力はあるの?全知全能ってそれもアリだったりする?」
『……そこまでは無理。だけど色んな情報を得て、やっぱりこうなったかみたいな事は結構あるわよ』
予想していた通りだ。
「それでさ、ハナ。お願いしたい事があるんだけど」
良いかな?と僕は遠慮気味に聞く。
『なに?犯罪的な事は教えないわよ。その女性のバストサイズとか』
「え、つむぎお前それだけはやめとけよ?」
まだ僕は何も言っていないのに真咲に引かれた目で見られる。
「違うよ〜」
僕は真剣な顔になる。
「あのね、ハナってそうやって僕が聞いた事なんでも知れるから、面白い事も事前に予想できるじゃん?……それって何だか僕は寂しくてさ。先に面白い事を知れるって退屈じゃない?できれば僕は真咲もハナも3人で一緒に楽しい事、面白い事を共有したいんだ」
「だからね、全知全能をなくさないかい?」
「は!?」
ぼーっと話を聞いていた真咲が驚く。
「お前、何言ってんだよ。ハナさんの全知全能があるから色んな街に行って楽に安全に遊べてんじゃねえの?」
真咲の言う通り。
だけど。
「うん、そうだね。とても便利な力だと思う。でもそれってハナにとっては違うんじゃないかな。孤独を感じやすいだろうし、僕がハナの立場なら寂しいと思うんだ」
『何よそれ。かっこつけて知ったように言わないで』
僕はハナの強い言葉を無視して続ける。
「ハナ、できないかな?なくすって言ってもワープと発信機と幻覚、周波数だけは残しておいて欲しいんだけど…」
『我儘ね』
おっしゃる通りだ。
「無理かな」
僕は引かない。
『まあ、簡単にできるけど』
「ほんと!」
『ええ、貴方達が何も聞かなければ良いだけよ』
あ、それもそうか。
「それは難しくないか?どうしても俺らはここの世界を全く知らないから、無意識に聞いてしまう時が絶対あるだろ」
確かに、真咲の言う通りだ。
んー、困った。
『……分かったわよ。ただ私もこの世界の事で絶対に覚えておかなくちゃいけない事もあるから、それだけインプットできれば全部忘れてあげても良いわよ』
「それって記憶喪失とほぼ一緒だよな?良いのか?ハナさん」
真咲がハナを心配する。
『つむぎだって私の事を想って言ってくれたんでしょ?なんなら少し嬉しかったし』
「へ?なんで?」
どこに嬉しい要素があったんだろう、凄い我儘を言っただけなんだけど。
『〜うるさいっ!とにかく、私は全知を消すわ。貴方達との事、自分の事、インプットした記憶だけは覚えたままにするから安心して』
『最後に、本当に良いのね?』
ハナが僕に最後の確認をする。
「うん、お願い」
『分かったわ、あ、ついでにイヤリングでいるのもやめるわね。貴方たちと同じ姿で同行させて貰うわ。その方が”一緒に”面白い事共有できるでしょ?』
僕は少し驚く。
「ありがとう、ハナ」
言葉は強いけど、本当は優しいハナに僕はお礼を言う。
『こっちこそ』
ハナがぼそっと呟く。
すると、出会った時と同じようにイヤリングが光り始める。
「うわっ!」
真咲の驚く声がする。
光が落ち着くと、あの時のハナが目の前にいた。
ハナが目を開け儚げな笑顔で言う。
「これからまたよろしくね」
これから投稿日時を固定します。
毎日2話更新で
昼の12時頃、夕方18時頃にします。




