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校庭から聞こえる学生の声、どこからか鳴り響く聴いたことのない音楽。
「ん〜......」
僕は最近入部したばかりの創作部で、頭を抱えながら小説を書いている。
「ここは主人公がやる気をだしちゃダメなんだよなあ」
僕の名前は只野つむぎ。
髪は生まれつきのくるくる天パで顔は女顔ってよく言われる。
人によってはコンプレックスになりそうだけど、僕は個性としてとても気に入っている。
異世界物のラノベが大好きで、動物も大好きな高校1年生。
色んな部活動の活気に溢れている放課後、僕はペンを片手に原稿用紙と睨めっこしている。
この南波高校には、昔から数々の作家を産み出したとされる部活がある。
それが僕が今いる総合創作部、略して総部。
総部に入る為に僕はこの高校に入ったといっても過言ではない。
ただ、思っていた部活ライフとは違って今の総部には僕を入れて3人しかいない。
1年生が2人。3年生が1人。
でもそれもその筈。
まず総合創作部って名前からして何?ってなるよね?
基本は漫画、小説、イラストの3種類の中で自分の好きなものを選んでそれを主に部誌をかいて月に1度、図書室に置いて色んな人に見て貰ったり、あとは3人で絵しりとりやら好きな歌を熱唱したりしてとにかくとても自由な部活だ。
それに加えて、部室は3階の1番奥にポツンとあった 生徒会の準備室を借りて活動している。
だから何しても誰にも怒られない。
名前だけの顧問はいるんだけどね......。
とても面倒くさがりだから顔を出すことも滅多にないし。
総部がこうなったのは今の3年生が部長になってからみたいだけど、まあ逆に居心地が良くて僕は意外と気に入っている。
小説は全く進まないんだけどね!!
ガララッ
「あ!真咲!お疲れ、先生の手伝い終わったの?」
「おう、手伝いっていうよりお喋りのお付き合いって感じだったけどな」
「あはは、杉村先生はお喋り大好きだからね」
僕の隣の机に鞄を置いて座る真咲。
この人は長野真咲。
幼馴染で、最初不安がっていた僕に付き合ってこの部活に一緒に入ってくれたとても優しい唯一無二の親友だ。
真咲は目が悪くていつも黒縁の眼鏡をかけている。
背は165センチある僕より少し高めの169センチでスタイルは普通くらい。毎日ノーセットだから髪はピヨピヨハネているところがあってヒヨコみたいで可愛い。
「それより、つむぎはあの作品終わりそうなのか?」
「う、、、実は、全く。主人公の事を僕がまだまだ理解できてないから物語が進められなくって」
「お前、この間もそんな事言ってなかったか?」
ガラッ
「おう!2人とももう来ていたのか!」
「「!?!?」」
「ん?どうした2人して素っ頓狂な顔をして。」
「いやいや、れん先輩こそその格好なんですか?」
いきなり入ってきたこの人がこの部活をゆるゆるにした張本人、立花れん先輩だ。
「格好って、これか?」
れん先輩は何故か、白地の服の真ん中に青色で『あいあむひーろー』と書いてあるタンクトップを着ている。しかもその上からさらに濃ゆい青色のマントを付けていて、ズボンは青っぽいジーンズ。
スタイルが良いから長い足が良く目立つ。
綺麗にセットされた頭には金色の厚紙で作ったであろう手作り感満載の王冠を被っている。
「カッコいいだろう?」
そう言って爽やかな笑顔を向ける先輩に僕は何も言ってあげられない。
「ダサいっすね!」
「真咲!!!あ、いや、先輩!ダサさも今時ファッションになりますから!ね!」
思い切り良い笑顔で言ってのける真咲に僕は慌ててフォローする。
「フォローになってないぞ、つむぎ!」
先輩に突っ込まれてしまう。
「いや、でもそうか、ダサいかあ〜」
「先輩、いったい何があってそんな格好を?」
僕は一応聞いてみる。
「それなんだが、つむぎがずっと主人公について上手く掴めないって言っていただろう?それなら主人公本人を連れて来れば良いのでは?と思ってな。どうだ?何か浮かぶものがあるか?なんなら演じる事もできるぞ?」
そう言って手を腰に当てるれん先輩。
「ボクサンジョウー!!!」
「先輩、僕の為にそんな事を......でも僕の書いてる主人公はそんな格好じゃないですしそんな喋り方でもないですし、そんなんで浮かぶ訳ないでしょう!?」
「そうか、違ったか、頑張って作ったんだがなあ」
うわ、先輩あからさまに元気なくなっちゃった。
「おい、つむぎ、先輩あからさまに元気なくなったぞ、少しくらい褒めてやれよ」
先ほど先輩の事を躊躇なくダサいと言っていた真咲が僕の体を右肘でつつきながら言う。
「ああ!でもその先輩の頑張りのお陰で何か浮かびそうだあ!!」
僕は大根役者ばりのセリフを吐き出して立ったままペンを持ち原稿用紙に適当に主人公の台詞を書き入れる。
「つむぎ君!!」
潤んだ瞳で僕の手元に目をやるれん先輩。
「つむぎ……」
心配しながら僕の手元に目をやる真咲。
『ボクサンジョウー!!!』
......。
僕は原稿用紙をグシャグシャに丸めてゴミ箱へ捨てる。
トントンッ
ドアがノックされる。
僕たちはドアの方を見る。
「失礼します」
冷たい声と共に入って来たのは眼鏡をかけた明らかに真面目そうな男性。
ネクタイの色的に3年生だろうか?
その男性は部屋に入って来てれん先輩の目の前へと立つ。
「れん君、君はいつになったら補習に来るんです?遠藤先生が呼んでいましたよ」
「あっ」
あ、これ絶対補習の事忘れてたんだろうな。
「今回は無理矢理にでも連れて行きますからね!!」
そう言ってれん先輩を引きずって行く補習先輩。
「お前ら、あのゲーム先にするんじゃないぞー!!」
ガララットンッ
先輩の叫びと共にいきなり静かになる部室。
「行ったな、変先輩」
「やっぱり変わってるよね、変先輩」
てか、あの格好のままで大丈夫なのかな。
僕らはまた椅子に座ってそれぞれの時間を過ごす。
―――――――
「あ、さっき先輩が言ってたゲーム、あれ見てみようぜ」
そう言って触っていたスマホを鞄に入れて僕の方を向く真咲。
「僕は良いけど、でもれん先輩待っててって言ってなかった?」
僕もなかなか進まないペンを置いて真咲の話に乗っかる。
「待ってろったっていつ戻ってくるか分かんないだろ?あと30分くらいで部活も終わる時間だしさ、少し覗くだけだから」
真咲は顔の前に手を合わせてお願いポーズをしている。
「ん〜、ダメ!でも、リリースの通知はきてる筈だからそれのチェックだけしておこう」
「ちぇっ、お堅いなあ〜」
そう文句を言っている真咲に僕はあっかんべをして、先輩の机の上に置いてあるパソコンを起動する。
「先輩が帰ってこなかったらまた明日の楽しみに残しておこうね」
「はいはい」
真咲はダルそうに僕の横に椅子を持ってきて座る。
真咲には先ほどああは言ったが、僕も本当なら早く始めたい。
今日リリースされたRPGゲーム。
事前情報一切無しだけど制作者が有名な人で、ゲーム好きにとってそれはまだ開けた事のない宝箱を開ける感覚と同じ。
ゲームの発売日すら表立って公表はされなかった。
けど僕たちの場合、先輩の親戚にその制作者の知り合いがいるらしく、その人に聞いてくれたお陰でなんとか準備できた。
どうせあの先輩の事だから嫌な絡み方でもして聞き出したんだろうな。
ピロン
「あった、これだね」
画面に表示されたリリースお知らせメールをクリックする。
その瞬間
ブオン
目の前に突然現れたそれに僕と真咲は驚いた。
「なんだ、これは?」
真咲が言う。
紫色に光るそれはアニメ等で見たことのある魔法陣そのものだった。
「凄い、こういう演出なのかな??」
僕は思わず手を伸ばした。
「待て、何かも分かんないのに危ないって」
真咲が僕を止めようと手を伸ばす。
すると
「「!!!?」」
魔法陣だったそれがとてつもない光を放って、僕は思わず眩しくて目を瞑った。




