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赤き日  作者: 溶接作業
二章

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新魔法

 オキタルが腰に掛けたカバンから何かを取り出そうと探っている。彼が腕を引くと、手には黒い球体が握られていた。


 彼は何度も魔操志たちの動向を窺がっている。奴らが一向にこちらに気が付かないことを悟ると突然、体を乗り出し、球体を思い切り投げつけた。


 ニッケランは球体の行方を見届ける。まっすぐと魔操志たちの足元へと飛んでゆき、地面にぶつかったと同時に爆発した。


 小さな炸裂音が聞こえ、魔操志たちを色の薄い煙が取り囲む。その煙を吸ったのか、奴らは突然むせ返り、苦しそうに煙から逃れようと散り散りになった。


 ニッケランは剣を抜き去り、木の影から勢いよく飛び出す。それに合わせてジョンとザザンも飛び出した。


 彼らは煙を避けながら、敵の元へと一気にかけてゆく。最初に剣が届いたのはザザンだった。

 彼は取り巻きの一人の首を勢いよく切り飛ばすと、次の敵へとかけてゆく。


 ジョンは魔操志の最も近くに逃げた兵士を捉え、スティレットを突き刺すところだった。


 取り巻きは順当にいけば残り二人。ジョンとザザンが残りも始末してくれることを信じ、ニッケランは一目散に魔操志の元へと向かった。


 しかし、ここで彼の足取りは止まった。前回オキタルが投げたモノよりも持続時間が短いものだったのか、魔操志は平時を取り戻してしまったからだ。


 奴は途端にニッケランを睨みつけ叫んだ。


「貴様! 反乱軍だな!」


 掌を向けてきた。同時に詠唱が始まる。


「ラウザルク・ヴァジュラ・ヴィダールヤ」


 すると、奴の掌からパチッと何かが弾ける音が聞こえ、次に閃光が飛びこんできた。

 ニッケランは魔法を避けようと全力で右横に飛び退く。直撃は避けたのか、閃光は彼の左側を飛んでいった。しかし、剣から全身へと痛みが走り、突然力が抜けた。


 彼はその場に転がり、何が起きたのかを理解しようと努める。しかし、すでに体に痛みや脱力感は無い。


 すぐに、立ち上がり剣を向ける。後ろを見ると地面が少しえぐられて、小さな煙を上げていた。

 彼は吠える。


「魔操志だな? 貴様をここで沈めてやる」

「チッ」


 奴は力なく手を揺らしながら舌打ちをした。魔法が当たらなかったことが気に食わないようだ。

 すると、ニッケランを睨み、口を開いた。


「お前はあれか? ロ=ヴェルト様を殺した?」


 突然、威圧感が増しニッケランは驚いた。しかし、奴が口に出した言葉に納得がいく。前回、倒した魔操志を知っているらしい。


「そうだといったら?」

「あのお方は私を大切に扱ってくれた…それを貴様は…」


 ここで気が付いたが、この魔操志は女だ。少し派手な武装は鎧ではなく、服で、華奢な体躯を隠しているのだ。


 突然、奴は掌を向け、呪文を唱え始めた。


「ヴァル=ラージャ…」


 ニッケランは即座に切りかかる。詠唱を途中でやめさせ、発作を起こさせようととにかく数で攻める。

 何度も何度も一太刀入れようと、剣を振り回す。


 しかし、敵は未来が見えているのではないかと思うほどに華麗にすべてを避けていく。頭を下げ、体をねじり、飛び退く。所作と服装が相まって演武のようだ。


 対し、ニッケランの内心はどんどんと荒れてゆく。

 詠唱を辞めさせないと、魔法が発動してしまう。詠唱の長さを考えると先ほどの魔法とはレベルの違う威力が容易に想像できた。


 相手は武器を持っていないのか反撃はしてこないが、その分動きが早く、まったく捉えられない。


「…ダラ・ヴァーン=フリュムル!」


 とうとう詠唱が終わってしまった。奴の手から閃光が走り、また、あの魔法が飛び出すかに思えたが、奴の手には何の変化もない。


 すると、頭上で耳を壊してしまいそうなほどの轟音が鳴り響いた。ニッケランは何が起こったのかを確認する前に、敵とは反対に走り出す。背後から奴に攻撃される可能性も考えられたが、魔法よりはマシな攻撃なのは確かだ。とにかく必死に走った。


 突然、全身に痺れが発生し、地面に強く打ち付けられた。軽い痛みを全身で感じ、なぜか剣を握れない。体の毛という毛が逆立ち、魔法が落ちてきている場所を向いている。


 背後で地鳴りが起こった。ニッケランは身動きが取れないまま、吹き飛ばされる。


 木に背中からぶつかり、一瞬息が止まってしまう。しかし、幸運なことに体に異常は無いようで、すぐさま立ち上がり、周囲を見渡した。


 魔法が落ちた場所には白煙が立ち上り、ジュウジュウと音を立てている。さらに、先ほどのものとは比べ物にならないほどに大きく地面がえぐられていた。


 着弾点の周囲の木は時折、パチッという音を立てては、静電気を発している。


「くそ…今度は雷かよ…」


 前回の魔操志と比べると確かに弱いらしい。しかし、雷と言う特性上、威力が弱くても直撃してしまえば絶命することは容易に想像できた。


 ニッケランは自分を落ち着かせようと大きく息を吸う。焦げた匂いが全身に広がり余計に気分が悪くなってしまった。まるで雷に直撃し、焦げた死体になった気分だ。


 すると、煙の奥から奴が現れた。


「貴様…これを避けるなんて…本当に殺したのね…」


 女魔操志は続ける。


「ヴァジュラ・リンド=ヴェス」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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