同胞
村は思っていたよりも規模の大きい。しっかりと整地され、石畳も置かれている。頑張れば五百人は済めそうな規模だ。王国内部の小さな村はこのような感じだったと覚えている。
「そうだろ? 想像よりもいい場所だぞ、ここは」
ミャアドが自慢げに答える。確かに、反乱軍と言う身分からすれば、贅沢すぎるほどに整った環境なのは間違いない。
続けて彼は言う。
「まぁ、立ち話もなんだ。俺たちが作戦を立てたりする家にとりあえずは集まろう。おい、ヤクトン。残っている仲間を集めてくれ。彼らを紹介したい」
ヤクトンはうなずき、足早に村の中へと進んでいった。それに遅れて、ニッケランたちは進んでゆく。
村の中に入ると、住んでいる人々が集まり、ニッケランたちを観察する。それがむず痒くてたまらない。
(まぁ、彼らの立場上、心配になるのは仕方がないか…)
敵か味方かもわからないような人間にはそのような目を向けてしまうのは仕方がないことだと、ニッケランは自分に言い聞かせた。
「ここだ、この家が作戦会議用の家だ」
家は、村の中でもひときわ立派で二階建てだ。そのまま、ニッケランたちは家の中へと足を踏み入れる。
中に入ると、大型の机が置かれており、奥に一人が座っている。
「おぉ、ミャアド良く帰って来た! ん? そちらの方々は?」
「長老! 遅くなってすいません! 彼らは王国が寄こしてくださった助っ人ですよ」
長老と呼ばれている男。いや、男と言うには歳が行き過ぎている。老人はしわの多い顔をよりしわくちゃにさせ、笑顔を見せた。
「おお! そうかそうか! あなた方は王国の方々でしたか! おい! 誰か椅子と飯を持ってこい!」
老人が叫ぶと、奥の部屋から女が顔を出してきた。顔が幼く、そこまで背も高くない。
「おじいちゃん、人の扱い雑過ぎ! 持ってくるけど、次からもうちょっと言い方を考えてよね!」
セリフから察するに、彼女は長老の孫のようだ。
すろと、少女は奥から重そうに椅子を一つ引きずりながら現れた。
「おもーい!」
少女の甲高い声が家の中に響いた。
「分かった、分かった!」
長老はそう言うと、少女が出てきた部屋に入って行き、椅子を運び始めた。
結局、人数分の椅子を用意したのは長老で、少女は自分が持ってきた椅子を長老の横に置き、座ってしまった。
長老は椅子に思い切り座り込むと、大きくため息を吐いている。
「ささ、王国の皆様も座ってくだされ」
四人は言葉に甘えることにした。椅子に座り込むと、酷使した足がヒリヒリと痛む。
「いきなり、本題に入らせていただきますが、よろしいですかね?」
長老は誰がリーダーなのか分からない様子で、四人の顔をキョロキョロと眺めている。
「私です。この度はお招きいただきありがとうございます」
ジョンが手を上げ、長老に頭を下げる。それに他の三人も合わせた。
「お顔をお上げください。我々にとってはあなた方は心強い助っ人なのですから。どうぞ遠慮せず、おくつろぎくだされ」
「ありがとうございます。それでお名前は?」
「わしの名前は誰にも教えられんのですよ。何せ、帝国に目を付けられておるからのぉ」
長老は大笑いをする。
「まぁ、長老手とでも呼んでくだされ。それでは、飯の用意をしてきますので、ミャアドと雑談でもしていてくだされ。ミャアドよ、仲間は呼んだか?」
「ヤクトンが呼びに行ってるよ。多分もうそろそろかな」
ミャアドの回答を聞き終えると長老は満足したようにうなずき、奥の扉の方へ移動する。
「ほれ、エルノ。一緒に料理の手伝いをしなさい」
「はぁい」
気怠そうに長老の孫であろう女の子が返事をする。そして、長老と共に奥の部屋へと進んでいった。
同時に入り口のドアが開いた。外からは何やら騒がしい声がする。
「すまんすまん。待たせちまった」
ヤクトンが入ってくると、それに続いて男と女が一人ずつ入って来た。
「あれ、珍しいなお前らが揃っているのは」
ミャアドが物珍しそうに入って来た者たちを見ていたが、ニッケランたちはその者たちの雰囲気に驚いていた。
二人とも猛者独特のオーラを放っている。古傷がついていて、長年戦場に身を置いていることが分かる風格だ。
男が口を開いた。
「この人らが?」
男にヤクトンが答える。
「そうだ。王国の助っ人さ」
それを聞くと、男はマジマジとニッケランたちを観察し始めた。
「そうか…そこのロングソードを持ってる男は特に強そうだ」
ニッケランは机に立てかけた、ロングソードに少し体を寄せた。目を見るだけで威圧感を感じてしまう。それほどまでに相手は猛者なのだろう。
「でも、知らない顔だ…何者なんだ?」
「君が目を付けた彼が、魔操志を殺したのさ」
ミャアドが説明すると、二人は目を見開き「ほお」と口にした。
「どおりでね…強そうなわけ」
女が口を開き、何度もうなずいている。そんな女もニッケランにはただ者に見えない。
「まぁあれだ、とりあえず、自己紹介をしないとな」
男はズイッと前に前に出る。
「俺の名前はエイリ。現在の反乱軍の隊長をやらせてもらっている」
エイリはザザンに似た体躯の男だ。しかし、体躯の良さはザザン以上だろう。威圧感が、ザザンのそれとは比べ物にならない。しかも、顔に傷を負っており、余計に威圧感を感じてしまう。
すると、今度は女が口を開いた。
「私はラキア。弓兵よ」
細身だが筋肉質そうな風格の女だ。目つきが悪く、まさに獲物を狙う狩人のような雰囲気だ。
二人は自己紹介をし終わると、今度はそっちの番だと目を向けてきた。
「俺はジョンだ。こいつらのリーダーだ。で、こいつがザザンで…」
ジョンが代わりに紹介をしてくれた。かなり質素な説明だったが、それに二人は満足してくれたのだった。
ミャアドが奥の部屋から椅子を三つ分用意し、三人を座らせた。
「で、魔操志を倒した…ニッケランだったかな。詳しく話を聞かせてくれよ」
エイリが口を開いた。ラキアもヤクトンも強く頷いている。
「もちろん。えーと、どこから話せばいいかな…」
乱戦に巻き込まれ、刃走りとの対決からニッケランは語ることにした。この場にいる全員が話に釘付けになり、真剣に話を聞いてくれた。
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