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赤き日  作者: 溶接作業
一章

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53/62

尋問

 太陽が本格的に出てきたようで、外からの光が異常にまぶしい。その光を切り取る人影が一つ。右手には箱のようなものが握られている。


 ニッケランは目を凝らし、誰だか確認する。

 女だ。しかも、一度見たことのある女だった。


「ロヴァニアか?」


 ニッケランが口を開いた。

 それにロヴァニアは鼻を鳴らし、当たり前のように中へと入ってくる。


「なんでアンタたちもいるのよ? このテントは一人用なんだけど」

「ジョンの治療に?」

「えぇそうよ? アナタみたいに彼は喚かなかったから、すごく治療が楽だった」


 嫌味で返答してきた。よほど、あの日の出来事が気に食わないらしい。 

 すると彼女は、ニッケランの座っている場所を奪い、ザザンの顔を覗き込んだ。


「おい、俺の場所を…」

「あなた、立ち上がろうとしたでしょ?」


 ニッケランを無視し、ロヴァニアは続ける。


「そんな体でまだ立ち上がれるわけないじゃない! あなたの体は見た目以上にひどいのよ?」

「あぁ、すまなかった」


 ジョンはバツの悪そうな顔を見せ、静かに寝具に座った。

 それを確認した彼女は、包帯を交換する準備を進める。

 それを横目に見ていたオキタルが口を開いた。


「ジョンの状態はどんな感じなの?」


 ロヴァニアは一瞬手を止め、オキタルを見た。


「傷は治ってきているけど、それに体力が追い付いていないのよ。体は傷を治すのに必死になの」


 それに心配そうな素振りをオキタルは見せた。


「なに、心配なの? 大丈夫よ、あと一週間もすれば元通り」

「そっかぁ…良かったぁ…」


 オキタルは小さく息を吐き、ジョンの方を見た。それに気づいた彼は笑顔を見せる。

 そんな光景が微笑ましい。ニッケランは嬉しい気持ちに満たされ、自分の歩んでいる道が正しいことを実感する。


 すると、ロヴァニアが口を開いた。


「ほのぼのしてるところ、申し訳ないんだけどさ。ルート様がアンタの事呼んでたよ」

「これ以上、話すことなんてないだろ?」


 彼女は一瞬、汚いものを見るような嫌悪感を含んだ顔を見せた。しかし、それはこのテントの中にいる人物に向けられたものではなさそうだった。


「尋問官。あいつが帝国軍の将軍をごう…尋問したでしょ? それで、何か情報を手に入れたそうよ。それをあなた達にも共有しておきたいんだって」

「…そういうね」


 尋問官というフレーズを聞いて虫唾が走る。奴を思い出すと、同時に悲惨なジョンの姿まで思い出してしまう。それは決して気持ちのいいものではなかった。


「それで、いつ行けばいいんだ?」

「将軍はすぐにでも会いたいそうよ?」


 ニッケランはそれを聞いてすぐに将軍の元へと移動しようとする。


「まてまて、俺らも…」

「いや、いい。今回は俺だけでも事足りるだろ?」


 ニッケランはザザンに座るように促した。


「まぁ座れ。お前らも、あいつの顔見たくないだろ? 多分、居るぞ? あれ」


 この中に居る全員の頭の中に尋問官の顔が浮かんだことだろう。意図が伝わったのか、ザザンもオキタルも素直に従ってくれた。


 それを確認したニッケランはすぐさま、テントから抜け出し、将軍の元へと歩いてゆく。


 先ほどまで朝焼けの綺麗な青色だった外は、白昼へと向かおうとしていた。

 しかし、そんなこと気にも留めず、黙々と目的地へと歩いた。


 とにかく無心で歩き続けた。

 気が付くと、彼は目的の天幕の前に立っていた。


「はぁ、あいつにまた会うのか…」


 すでに、天幕の中から血の濃い匂いが漂ってきており、奴の存在を告げている。


 天幕の外は位の高そうな騎士たちが何人もゆきかいしているが、その誰しもが顔をしかめていた。

 ニッケランは覚悟を決め、天幕の中へ入ってゆく。


 暗いところに目が慣れ、中にいる人物を確認する。見慣れた人物たちが椅子に座っており、一人が将軍の後ろで立っていた。


「ニッケラン、よく来てくれた。とにかく椅子に座ってくれたまえ」

「ありがとうございます」


 素直に従った彼だったが、目線の先は将軍ではなく、その後ろに居る人物に釘付けだった。


「怖いですなぁ、その目。くりとってしまいたいほどに」


 不気味な笑みを浮かべた人物。会いたくなかった男。尋問官がからかってくる。

 それを無視し、ニッケランは質問を飛ばした。


「帝国の情報が入ったとお聞きしましたが…」

「あぁ、そうだ。敵将のママドという男から、面白い話がたくさん聞けたぞ」


 ルートは嬉々とした顔をしている。しかし、その笑顔の裏で何が行われたのかを考えるとゾッとしてしまう。


「そ、それで、その面白い話と言うのは?」

「あぁ、そうだな。おい、今回の情報をまとめた書類を出せ」

「はい」


 尋問官は足元から四角形のカバンを拾い上げ、机の上に静かに置いた。

 それを将軍が開ける。中からは、かなりの量の紙が大量に出てきた。


「それは?」

「尋問中の奴が吐いた言葉の全部だ。ほとんど、なんの意味も持たない言葉ばかりだがな」


 将軍は紙をめくり始め、該当箇所を探し始めた。その間、天幕の中は紙の音のみが響いている。


 尋問官を見ると、紙を覗き込んでおり、なぜか満足そうに笑顔を見せている。多分、敵将への拷問を思い出して、胸が高鳴っているのだ。


(趣味の悪い奴め)


「あったあった。まずは朗報からだな…今回の敵軍。構成されていた人間はほとんど、帝国に反抗する気があった人間の身だったようだ。あ、将軍と魔操志は違うぞ?」

「それが、どうして朗報なのですか?」

「今回、敵軍のほとんどを捕虜にできた訳だが、それを王国軍に取り込めるかもしれんのだ。まぁ、検討はせねばならんが…」


 ニッケランは合点がいった。


「どおりで…戦った敵兵が弱かったわけだ…」

「やはりお前もそう思ったか? やけに敵の騎馬兵が弱かったからなぁ…」


 将軍はしみじみと頷いている。


「ですが、帝国の人間が簡単に王国に従うとは思いませんが?」


 ルートは「もっともな意見だ」というと語りだす。


「帝国兵の一人に詳しく聞いたんだがな、どうも帝国の内情はかなり複雑なものになっているらしいんだ」


「と言いますと?」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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