ザザンの秘密
ニッケランの発言にルートは押し黙った。周りの従者たちも、予想外の言葉に目を見開いていた。
少しの間、将軍は黙り、しかし、ゆっくりと口を開いてゆく。
「…そのジョンはどのような見た目の者だ?」
戦場から死体を探すような雰囲気の質問に胸を冷やした。まだ、ジョンが死んだとは思っていなかったし、思いたくもない。
「金髪で、肌は色白で……背は私よりも少し高いぐらいで、体つきは細いですが筋肉質です。あと……見た目がいいです」
ジョンの特徴を教えると、すぐさまルートの従者が天幕の外へと出ていった。
その慌ただしい雰囲気に不安を感じざるを得ない。
「ジョンを捜索するのですか?」とザザン。
「いや、捜索と言うほどの事はしない。帝国に捕まっていた王国兵の捕虜の中から探し出そうとしているのだ」
余計に不安になってしまった。ここで見つからなかったら今度こそジョンは死んだと言われるようなものだった。
ザザンやオキタルも不安なようで、足をせわしなく動かしている。
それを察してくれたのか、ルートは話を続けた。
「今回、王国兵の捕虜の数がかなりの人数でな。仮にジョンとやらが捕虜として紛れ込んでいたとしても、かなりの時間がかかる予定だ。なので、今日はお開きにしよう。体力も底を尽いているだろうしな」
ルートが話終えると従者の一人が立ち上がった。ニッケランたちの天幕が用意されている場所へと導いてくれるようだった。
ここは素直に従った。地団駄を踏んでも意味がないことを理解しているからだ。
しかし、足取りは重く、距離はそこまで無かったはずなのに、かなりの時間がかかった。
案内をしてくれた従者の顔を見ると、やはり戦の後ということもあり、疲れ切った様子で案内を終えていた。
三人は、案内をしてくれた従者に一言礼を言うと、天幕の中に吸い込まれるように入っていった。
天幕の中は、先ほどのものと比べると質素なものだったが、今まで使用していたテントと比べれば極楽のようなものだった。
中には簡易的なベッドが3つ用意されており、その上には、十分な明かりを発しているランプが吊り下げられている。
しかし、ニッケランは不満だった。ベッドが三つしかない光景は、まるで、ジョンがすでに死んでしまっている事を告げている様だ。
ベッドを呆然と眺めていると、人形を支えていた糸が切れたように、体の力が一気に抜け、床に倒れこみそうになった。それをどうにか堪え、足を痛めたような足取りで寝床へと向かっていく。
すると、横で身じろぎをしていたオキタルがベッドに向かって飛び込んだ。
「ふかふか~!」
ここ最近で一番の笑顔を見せると、顔を枕へとうずめ始めた。
その様子に注意しようとニッケランは口を開いた。
「おい、はしゃぐのは良いが今日は…」
突然オキタルがピタリと止まり、顔を枕にうずめたまま動かなくなった。
残った二人は顔を見合わせ、息の根が止まったのかと思い、叩き起こそうと急いで近づく。
ニッケランが彼の肩を掴もうとした瞬間、いびきが聞こえてきた。
二人は再度、顔を合わせると、ため息を吐いて、自分のベッドへ移動し腰を掛けた。
腰を掛けた途端に、今日の出来事がニッケランの頭の中で流れる。
流れる記憶を順番に並べ、頭の中の情景にふけっているとザザンとの会話を思い出した。
また忘れてしまわないように、彼に要件を伝える。
「そういえばザザン。あの戦場での会話だけど…」
「わかってる…ついてこい」
ザザンは話を遮り、天幕の外へとゆっくりと移動していった。
ニッケランは体がだるく、動きたくなかった。しかし、知りたいことが山ほど出てきて、それを活力に力を振り絞った。
ゆっくりと天幕の外へと移動すると、ザザンが地面に腰を下ろしていた。
ザザンが隣に座るように顎をしゃくったので、それに従う。
「お前が戦場で言ってた『話さなきゃいけないことがある』が気になってな」
そういうとザザンは頷き、静かに語り始めた。
「初めてお前たちと出会って、仲間に入れてもらった時に、傭兵になったきっかけを話したよな? たしか、上官を殺してしまったって。実はあれ、嘘なんだ」
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