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赤き日  作者: 溶接作業
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話し合いの終着点

 ・魔法を発動するには詠唱が必要であり、発動するタイミングは任意。

 ・任意で発動できる魔法は詠唱者の技量によって規模が変わる。

 ・詠唱が長いほど強力な魔法に変化する。しかし、詠唱途中でやめてしまうと、詠唱者は頭痛や吐き気、激しい動機に襲われる。


 ニッケランはその説明を聞いて、一気に心に残っていた鎖が溶けたような気がした。


 魔操志との戦闘中に起こった不可解な疑問点。聞いたことのない言語、突然苦しみ始めた原因、何も唱えずに魔法を打ってきた記憶など様々な違和感が一気に解消された。


 しかし、一つだけ心に残っているものがあった。


 ニッケランは再度質問をする。


「ほとんどの疑問は解けました。しかし、一つだけ本の内容と照らし合わせてもわからないことがあります。なぜ、魔操志は最後、自らの魔法に巻かれ、朽ち果てたのでしょうか?」


 将軍は即座に本に目を通した。しかし、それらしいものが見つからなかったのか、ミャアドの方を向く。


 彼は少し身じろぎしたが、即座に反応した。


「申し訳ありませんが、魔操志は死ぬと、自らの魔法に巻かれるという話は初耳でございます」

「ならばなぜ、大体の魔法についての詳細がこの本に書かれているのだ?」


 もっともな質問をルートは飛ばす。まだ、本の内容について疑い続けている様だった。


「それは、魔操志の側近が命懸けで書いたものだからです。魔操志は長に就いた後、元の長の側近をそのまま使用しました。その中に、我々反帝国軍と同じ考えの者がいたことで、その本は今こうして、ルート

様の手に渡ったということです」


 しかし、ルートはまだ納得できていないのか質問をさらに投下した。


「この本が誕生した経緯は分かった。しかし、なぜ、こうも魔法について詳しく書けたのだ? そして、なぜ、ニッケランが言ったことが記されていない?」


「魔法について詳細に記すことが出来た理由ですが、側近が魔操志の横に着き、日々行われる虐殺行為を黙って見届けたからです」


 ニッケランは絶句した。同胞がなぶり殺しにされていたら、正常な人間ならば止めるであろうと。


 ルートたちも同じことを考えている様で、批判めいた目で彼を見ている。 

 しかし、次の言葉に、その考えは吹き飛んだ。


「我々がそう頼んだのです。無駄に干渉せず、ただ魔操志の虐殺行為を見届けてくれと」


 暴虐を傍観させていたのが、反帝国軍の者だったとは。しかし、彼の話には裏がありそうだ。

 彼の表情には深い悲しみが浮かび上がっている。


「そうすることしかできなかったのです。魔操志の力は強大で、とても、人間の力では何も止められなかったのです。しかし、魔法の情報を記すことは出来ます。我々は魔操志を倒せるものに託すため、本の制作に踏み切ったのです。その間に何人もの無実の市民や反帝国軍の者が殺されました。その本は、何人もの屍の上に成り立っているのです。」


 彼の目には涙が浮かんでいた。ニッケランにはそれが、うそぶいている様には映らなかった。


 ルートの顔を窺がうと、疑うような表情は無くなり、代わりに哀れなものを見る表情を見せている。


 突然、ミャアドは机に頭を打ち付けた。


「どうかお願いします! 帝国の市民を救っていただきたいのです! 我々だけの力では、帝国は魔操志の楽園に変わってしまいます。こうしている間にも無実の人間が魔操志に面白半分に殺されています。どうか…どうか…」


 最後にはかすれて、風前の灯のようになった声だけが天幕には響いていた。


 この場には、彼を懐疑的な目で見る者は残っておらず、全員が机に目線を落としていた。


 すると、ルートが顔を上げ、語り始めた。


「正直に言って、まだ貴様の事は信用できていない。しかし、王国も帝国に対して打つ手がないのは紛れ

もない事実だ」


 全員の視線がルートに集まった。ミャアドの目は見開き、希望に満ちている。


「幸か不幸か、王国は亡国になる事を一時的ではあるが回避できた。冬の間は、ニッケランが魔操志を殺したことと、行軍出来ない事を考えると、攻められる心配はないだろう。しかし、それは王国も一緒だ。今日まで、魔法が登場してからすべての戦に負け、王国内部は疲弊しきっているのだ。最早、この冬を越すのに何人の死者が出るのか考えることも恐ろしいほどにだ…」


 ミャアドの顔を見ると。少し曇った表情になっていた。すると、ルートがニッケランを凝視した。


「しかし、我々は帝国に対し、何もしないまま冬を越すわけにはいかない。そこでニッケラン」

「は、はい!」

「お前たちには帝国内部に潜入してほしいという訳だ」


 内心は途端に不安にさらされた。

 この重役が自分に務まるのか自信がなかったことも関係があるだろう。しかし、それ以上に足を重くしているものがあった。


 将軍から目をさらした彼は答える。


「申し訳ございませんが、考えさせてほしいです」

「よい待遇は約束するぞ? 騎士にしてやるし、貴族名も授けてやろう」

「いえ、それでも…」


 自分の夢である騎士になれる約束をされ、心躍った。しかし、それ以上に大切なものが、ここには足りなかった。


 オキタルやザザンも同じことを考えて居るのか、特に反対するような様子は無かった。


「仲間…大切な仲間であるジョンが足りません」


最後までお付き合いいただき感謝いたします。

評価やコメントをいただけると、物語をより良くしていく大きなヒントになります。

ぜひ皆さまの声をお聞かせください!

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