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赤き日  作者: 溶接作業
16/25

刃走り

(しめた!)


 最早敵は横たわる死体と一緒だと感じた。その体勢から何ができるのかと。


 しかし、ニッケランは目を疑った。

 またも一瞬にして敵が消えたではないか。


 目を必死にかき乱すように動かし、視界の許す限り索敵する。


 しかし、奴の姿はどこにも見えない。


 ふと、後ろに違和感を覚える。


 嫌な汗が吹き出し、体を無理やり後ろへ向ける。無理やり動いたせいで筋を少し痛めたが、それにニッケランは気づかない。


 敵は剣を肩に乗せてこちらを凝視していた。


「名は?」


 敵が初めて声を上げた。

 これからが本当の戦いなのだろうか。


「名乗りは自分から上げるのが礼儀だろ?」


 ニッケランは余裕だぞと伝えるような軽い口調で話す。しかし、顔は汗を流し、焦りに満ちていた。

 それに敵は鼻で笑い返してきた。


「まぁそうだな…意味はないだろうが名乗っておこう。ド=メトムだ」


 名前を聞き、ニッケランは驚愕した。


 ここ最近、戦場に出てその名を聞かない日はなかった。


 別名刃走り。奴の戦闘スタイルからついた名だ。


 エストックと呼ばれる刺突を専門とした武器を使用し、目にもとまらぬ

 速さで敵を屠る。


 奴と対峙した者で今まで生き残った者はいないだろう。

 なにせ、長期戦にはなりえず、一瞬にして決着がついてしまうのだから。


 敵の情報にふけっていると、突然刃走りが剣をこちらへ向けてきた。


 ニッケランは全神経を集中させ、剣を構える。同じ手は無駄だろう。

 次の攻撃までに別の手を考えなくてはならない。


(どうすれば…)


 すると奴は突然肩を揺らしながら、細い目をして笑い始めた。

「まぁ待て。俺が名乗ったんだ、お前も名乗れ」

「先ほどまで聞かないとほざいていた奴にか?」


 その言葉に納得したのだろうか、刃走りは剣を地面に突き立てた。


「これで少しは安心してくれるかな?」


 鼻に着く言い方だったが、確かにこれなら名乗りを上げる余裕はありそうだった。


(それに、作戦も考えられる…)


 ニッケランは剣を逆さに持ち替えると名乗りを上げ始める。


「俺の名はニッケランだ。ただの傭兵だ!」


 露骨に肩を落とした刃走りは、笑いの混じった声を出した。


「おいおい冗談だろ? 俺に初めて傷をつけた男がただの傭兵だと? 仲間に笑われてしまうではないか!」


 これにニッケランは違和感を覚えた。


(刃走りの名が広まったのはここ一年ぐらいだったか?)


 若い。

 発想が新兵のそれだ。


 泥食いも元は傭兵だったと聞く。それに傭兵の中にも有名なものはいるが、恰好が如何せん汚く、恰好が良くないため強くても話題にならないものは多い。


 それを知らない辺り、場数を踏んでいない証拠だ。


 ニッケランは腹をくくった。


(一か八かの作戦だなこれは…)


 笑いたくて仕方がなかった。これまで命を張って戦ったことがあっただろうか。

 今までは危険を感じたらすぐに逃げて、生きることに執着した。


 そんな自分が情けないと感じていた。父親が見たら何をされるだろう。


 ニッケランは剣を逆さまにしたまま、後ろへ回した。

 刃走りはそれを見て笑いながら、言ってくる。


「貴様、回し切りでもするつもりか?」


 ニッケランは舌打ちをする。


「だったら?」


「はっ! 良いだろう。その挑発受けてやる」


 刃走りはあの体勢に戻る。

 どんどんと前のめりになり、今にも飛び出して来そうだ。


(これが失敗すれば確実に死ぬ)


 今までにないほど、ニッケランは集中していた。


 背水の陣という言葉が頭をよぎる。


 次の瞬間、先ほどよりも速いスピードで刃走りが迫ってくる。


 それに焦りを感じ、剣を握る手に力が入る。


(タイミングが重要なんだ…焦るな俺)


読んでいただきありがとうございます。ぜひコメント等お願いいたします。

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