【7】
皆と別れた後、あかりは1人で居酒屋に入った。
「いらっしゃい」
「1人なんですけど…」
少し飲みたりなかったので、1人でここまでやってきた。初めて入る店だが、座席は1席だけ空いていた。
「何する?」
「それじゃ、日本酒の冷やを。八海山で」
「あいよ」
店主は元気よく答え、コップに日本酒を並々と注ぐ。それを貰ったあかりは1口入れて、くぅと満足そうに顔を歪める。
「後は何する?」
「焼き鳥の軟骨とももとつくねを」
「分かった」
店主というよりも大将とあだ名をつけたほうが似合う人だった。タレの匂いが美味しそうに漂ってくる。皆酔っていて、自分たちの世界に入っているようだった。
「おいしい」
冷酒を一気に煽って、続きの注文をする。
「今度も日本酒の冷やで」
「ねぇちゃん、酒に強いんだな」
「おかげ様で」
大将に答えると、彼は嬉しそうに笑った。女1人で入ってきたのに、不満はなさそうだった。
「はい、もも」
「ありがとうございます」
差し出された串を持って、口に頬張る。タレが絶妙で甘辛く、子どもでも美味しく食べれる1品だった。
「大将、美味しい」
つい口が滑ると、彼はニヤリと口の端を上げる。
「はい、冷酒」
「どうも」
受け取る時に少し溢れたので、手を舐める。勿体ないと思った行動だったが、誰も汚いとは言わなかった。
ー焼き鳥、最高!!
広人と千代の料理でお腹がいっぱいだったが、ここの料理はまた別腹だった。更に注文して、出来上がるのを待つ。
ー気兼ねしなくていいから、今日は飲むぞ。
日本酒をグビグビと飲むと、プハーと息を吐き出す。おやじ化している気がしたが、特に気にしなかった。
ーやっぱり、私には1人ご飯が合うかも。
またつくねを頬張り、美味しそうに咀嚼する。