【5】
「あー、疲れた」
部屋に入ってくると、キッチンのテーブルにビニール袋を置く。今日はできあいのもので済ますつもりだった。
「ここのコロッケ美味しいのよね」
揚げたてのいい匂いがして、鼻をクンクンと動かす。いつものようにビールを取り出すと、スマホを構う。広人からLINEが入っていた。
「今回だけ特別だからな」
ぶっきらぼうの言葉に、あかりはホッとする。断れるかと思ったが、了承してくれたようだった。
「私のおかげで、客が増えるのに」
何が不満だと、飲み終えたビールの缶を潰す。そのまま手はコロッケをつかみ、口の中にほおる。牛肉がぎっしり入っていて、じゃがいもの甘味が格別だった。
「もう一個」
つい手が伸びだが、躊躇する。体重が気になった。周りからどう見られているのか、今ごろ気になるのだった。
「…別に良いわよね。自分は自分、他人は他人だものね」
もう一個コロッケを手に取り、満足そうに微笑む。食事の時間が最高の時間だった。
「後は他に…」
しょっぱいものを欲しくなり、冷蔵庫に手を伸ばす。新生姜の漬物があったので、開けて食べることにした。コリコリといい音がして、口の中が満足する。
「あー、美味しい!! ビールもう一本!!」
女を捨てたわけではないが、今のあかりは恋愛には程遠かった。
「まだ1人で、十分だもの」
唇からこぼれたビールを拭い、ひとりごちる。年齢的に1人身なのはきつくなってきているが、自分が気にするかどうかが問題のような気がしてきた。あかりはソファに座ると、テレビのリモコンを持ってつけた