【4】
あかりの仕事はOLだった。お茶くみをしたり、男性職員に頼まれた仕事をパソコンに打ち込むのが、主な仕事だった。
「木田さん」
「はい。課長、何でしょう?」
席から立つと、課長の前に移動する。課長は50代で白髪のある男性だった。
「今度新人が入るから、歓迎会の場所を考えてくれないか?」
「私が決めて良いんですか?」
「ああ、頼んだ。君なら美味しいお店を知っていそうだし」
チラリと体型を見られて、恥ずかしくなる。そんなに太っているつもりはないのだが、体重計にはのらないようにしていた。
「和風と洋風と中華、どれが良いですか?」
「皆に聞いてみてくれ」
「はい。分かりました」
あかりは課長の前から下がると、デスクに居る皆に聞いてみる。
「どこが良い?」
「俺、洋風」
「俺も」
「俺は和風が良い」
「あたしも和風が良い」
様々な意見が出て、あかりは困りはてた。全部統一して、出してくれる店なんて、あるわけがなかった。ただ、一つだけ手があった。幼馴染の広人に頼めば良いのだ。
「じゃあ、ここは?」
パソコンで皆に店を紹介する。すると、皆の顔が明るくなる。
「ここなら良さそう。オシャレだし、皆?」
「ここなら雰囲気も落ち着いていそう。値段は高いの?」
「普通かなあ。味は保証するわよ」
今度全員一致で決定して、あかりも肩の荷をおろす。広人には怒られるかもしれないが、手先が器用な彼なら何でも作ってくれそうだった。
「ちょっと値段ははるかもしれないけど…」
「構わない。そこで良い」
男性職員の言葉に全員頷く。自分が褒められた気がし、あかりは満足そうに頷く。
「じゃあ、早速、予約しますね」
受話器を持つと、広人の店に電話をかけたのだった。