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1人ご飯  作者: WAIai
3/9

【3】

「はい、マルゲリータ」

ぶっきらぼうに言って、ピザを出してきた。あかりは少しカチンときて言い返す。

「せっかく来たのに、何よ、その態度は」

「まだ開店時間になってないんだよ」

あかりの幼馴染の久保広人は腕時計を見せてくる。

「うちは昼から営業しているんだよ」

「いいじゃない、少し融通をきかせても」

「ワガママなやつ」

広人はお盆を胸にあてると、ため息をついた。黙っていればカッコイイのに、口が悪いのがたまに傷だった。

「はい、ジンジャーエールとパフェ」

とりなすように、広人の奥さんの久保千代がやってきて差し出してきた。ジンジャーエールは手作りで、パフェも美味しそうだった。

「甘やかすな。太る」

「失礼な。太ってなんかいませんよ」

あっかんべーをすると、広人は目を細めてくる。

「早く彼氏でも作って、結婚しろ」

「大きなお世話よ!! 本当に性格が悪いんだから」

「誰が?」

「あんたに決まってるでしょ」

そう言うとあかりはピザに手をつけた。チーズが濃厚で、生地もパリッとしていて美味しかった。

「焦らないほうがいいわよ。ゆっくり探せば」

千代が仲をとりなおそうと声をかけてくれた。目鼻立ちがくっきりとした美人だった。とても同じ30代には見えない。

「いいんだよ、こいつには何を言っても良いんだ」

「大切なお客さんじゃない」

「そうよ。私はお客さんなんだけど」

「へいへい、そうですか」

適当に流すと、広人はカウンターの奥に消えた。開店準備で忙しいのかもしれない。

「ごめんなさい、早く来て」

千代には素直に謝ると、彼女は柔らかく微笑んだ。

「いいのよ。美味しい、美味しいって食べてくれるから」

「だって、本当のことだもの」

ジンジャーエールを飲んだ後、素直に言った。千代は嬉しそうに笑う。

「パフェ新作だから、後で感想を聞かせてね」

「そうなの!! 嬉しい。私で良ければ何でも言うからね」

スプーンを持ち、パフェに手を伸ばす。栗の季節だからか、モンブラン仕様に見える。

「美味しい。栗の甘さがちょうどよくて、ケーキを食べているみたい」

「そう? なら良かった」

千代は胸を撫で下ろすと、あかりに言ってくる。

「開店準備があるから、ごめんね」

「…いいわよ。私が早く来すぎたんだから」

「じゃあ、後で」

千代は一礼すると、カウンターの奥に引っ込んだ。1人になったあかりは少し淋しくなったが、マルゲリータを口に運ぶ。ここのカフェは美味しいと評判で、行列も出来ることもあるらしい。

「幼馴染の特権よね」

手についたトマトソースを拭い、ジンジャーエールを飲む。本当はアルコールを飲みたかったが、時間帯を気にして止めた。

「そうだ。帰りにビールを買って帰らないと」

ここには車で来たので、ケース買いするつもりだった。

「確かに男手が必要かも」

ケース買いは安いが、重いのが難点だった。

「あー、満足。今日はいい日だ」

そう言うと、1人で料理をたいらげるのだった。

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