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1人ご飯  作者: WAIai
1/9

【1】

ー1人ご飯は最高だ。



「ただいま」

木田あかりは誰も居ないアパートの1室に向かい、声をかける。いつものことだから、反応がなくても、構わず、ヒールを脱いで上がる。

「ふう、疲れた」

リビングのソファに座り、安堵のため息を吐く。会社勤めなのだが、未だに男性社会なので、気を遣うことが多かった。しかし、同時にやりがいもあるので、30代前半になっても1人身だった。

「さてと」

スーツの上着を脱ぎ捨てると、ブラウスを腕まくりする。これから自分のだめに料理を作るつもりだった。

「今日は何しようかなあ」

冷蔵庫という魔法の扉を開けて、中を覗いてみる。昨日、買い物をしてあるので、いろいろ入っている。

「まずはビール」

ビールの缶をとり、プルタブを開ける。口にいれると炭酸が喉にしみて、美味しかった。働いた分のご褒美だった。

「いえい、最高」

ビールを一気に煽ると缶をぺちゃんこにする。それをゴミ箱に捨てると、もう一度冷蔵庫を開く。

「今日は…」

肉も美味しそうだし、焼き魚も美味しそうだった。ワクワクしながら冷蔵庫を覗く。子どもがおもちゃをもらったように、目がキラキラと輝いていた。

「やっぱり肉よね、疲れた時は」

まずはひき肉を手に取る。次に野菜室を覗くと、キャベツやもやしが入っていた。

「うん、そうだ!! 餃子にしよう」

ニラを取り出し、まな板へ向かう。ビールと餃子、相性が悪いわけがない。にんにくじょうゆで食べたら、美味しそうだと思い、唾を飲み込む。

「まずは野菜を切って…」

1人暮らしは長いので、1人ごとには慣れていた。それに食べたいものを食べれるので、楽しい一時だった。

「切った野菜とひき肉を混ぜて…」

粘り気が出るまで、手を動かす。料理は好きだった。プロから見れば下手くそだが、自分で食べる分だから、気楽だった。

「美味しくなれ、美味しくなれ」

新聞の上に皮を敷いて、出来上がった肉を少量ずつわけていく。包む時は皮を破かないように、気をつけるのがコツだった。

「餃子、餃子」

ヒレを作り、歌うように言う。そのほうがおいしくなるような気がした。

「よし、あとは焼くだけ」

出来栄えに満足し、フライパンをセットする。油はごま油を使うようにした。

「うん、いい香り」

ごまの濃厚な匂いに、食欲がそそられる。作った餃子をフライパンに並べ、まずは焼いてみる。

「ご飯は冷凍だよね」

ジップロックしたご飯を取り出し、電子レンジに入れる。いつも多く炊いて、小分けにして、冷凍してあった。

「蒸し焼きにして」

フライパンに水を入れて、蓋をする。シューと焼ける音が強くなった。火加減を調節して、冷蔵庫に向かう。

「後、1品」

ほうれん草を発見し、頭を回転させる。焼くか茹でるかしばし迷う。

「おひたしにしよう」

体のことを考えて、鍋に水を入れる。マヨネーズとしょうゆで味つけするつもりだった。

「カロリーは気にしない、気にしない。もう1本」

ビールをもう1缶取り出し、冷蔵庫を閉める。酒には強い方だった。

「餃子、そろそろいいかなあ」

蓋を開けると、ごま油と肉の焼けるいい匂いがした。とりあえずフライパンの水を捨てて、また火にかける。今度は焼き色をつける番だった。

「カリカリが美味しいのよね」

器用におひたしを茹でながら、餃子の焼き具合をみる。まだ白いままなので、そのままにして、先におひたしをあげる。水気を絞って、包丁で適当な大きさに切れば完成だった。

「うわ。美味しそう」

唾液を飲み込み、餃子の様子をみる。焼き具合はちょうど良かった。

「よし、完成」

フライ返しで餃子を取り、皿に盛りつける。あとは電子レンジにかけたご飯をお茶碗に盛って完成だった。

「でも、まだまだだ。洗い物をしないと」

フライパンに水を流し込み、冷やす。スポンジを持って、洗剤をつけ、洗い物を始める。手が荒れるから、嫌いな人も多いが、あかりは洗い物が好きだった。キレイになるとストレス発散になるのだった。

「これで、終わり」

最後にフライパンをしまって、料理をリビングのテーブルの上に並べる。熱々の餃子から湯気が出ている気がした。

「いただきます」

手を合わせて食べ始める。

「ああ、そうだ」

にんにくじょうゆを忘れて、冷蔵庫に取りに行く。チューブではなく、ちゃんとしたにんにくをおろしでする。にんにくの香りに腹がなった。

「今度こそ、いただきます」

餃子をにんにくじょうゆにつけ、口にほおる。ジュワッと肉汁がでて、美味しかった。火傷しないように気をつけながら餃子を食べていく。明日はお休みなので、にんにくを食べても誰にも気兼ねすることなかった。

「美味しい!! ビールも最高!!」

途中でビールを飲みながら、おかずを口に運ぶ。おひたしにマヨネーズは邪道かもしれないが、おいしかった。

「はあ。お腹いっぱい」

箸を置いて、お腹をさする。細身だが、食べたばかりなので、腹が出ている気がした。

「ごちそうさまでした」

手を合わせて、空になった皿を集める。少し休めばいいのだが、あかりには気の早いところがあって、放って置くことができなかった。

「明日は何にしようかなあ」

洗い物を終えて、冷蔵庫を覗く。

「唐揚げも美味しそうよね」

鶏ももを手に取り、想像する。にんにくじょうゆの効いた味がして、唾液をためる。

「唐揚げ、唐揚げ」

早速、唐揚げの準備をするようにする。鶏肉を適当に切り、にんにくじょうゆに漬ける。ビニール袋を利用するのがコツだった。

「味がつくまで、置いとかないと」

ビニール袋に入った鶏肉を残し、スーツを着替えに向かう。1人身だから、ラフなものが多かった。今日は少し肌寒いので、厚手のものを着て、用意万端だった。

「まだ、お風呂を入れるには、まだ早いわよね」

浴室を覗き、一応、シャワーカーテンを覗く。昨日洗ってあったので、ピカピカだった。

「油臭くなるから、お風呂は後」

キッチンに戻り、鶏肉を確認する。しょうゆ色に染まってキレイだった。

「もう少し、ビールも飲んでよ」

3缶目のビールを開けて、喉を潤す。自分で買ったものだから、遠慮は要らなかった。

「もういいかもしれない」

ごま油の匂いが残るキッチンに、今度はサラダ油をフライパンに入れる。鶏肉に片栗粉を入れて、よく混ぜる。カリッとした唐揚げを目指すつもりだった。

「油の温度はもういいわね」

菜箸で確認して、鶏肉を入れていく。細かい油がまとわりついて美味しそうだった。

「6分は揚げないと」

テレビで観た唐揚げの作り方を思い出しながら揚げていく。しょうゆのいい香りがキッチンに充満していく。

「竹串、竹串」

百均で買った竹串をさし、揚げ具合を確認する。ちょうど良さそうだった。

「後はバットにあげて」

キツネ色の唐揚げの完成に喉がなる。一口食べようと手を伸ばしかけ、熱いと判断し、手を引っ込める。そこで持っていた竹串を使い、唐揚げにさす。ハフハフ息をかけながら、唐揚げを口にほおる。外側はカリカリ、肉は柔らかくて甘くてジューシーだった。

「もう1個」

体重はこのさい無視だった。食べたいだけ食べようと決める。

「美味しい、止められない」

頬に手をあて、満足そうに言う。さすがに全部は食べきれないので、バットの上に置いていく。

「明日、楽しみ」

まだ熱いのでそのまま放って置く。ビールの缶を潰すと伸びをした。体が凝っていたのが、吹き飛んだ気がした。

「さてと、今度こそ、お風呂に入るか」

着替えを手にとると、浴室へと向かった。




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