四分の三
「おそらく、どちらの陣営かが、我々を取り込むために仕掛けた工作でしょう!」
「その仕上げが、この騒動って訳か?」
「悪い評判を立てれば、更に近隣からの仕事を減らせますからね」
「姑息な手段を……」
「我々から下れば、安い契約で済むとでも考えたのでしょう」
「オットー、メセナの拘束を解いてやってくれ」
ヴィクトールの決断は素早く、一才の迷いが無かった。
「良いんですか?」
ヴィクトールは黙って頷いた。
「クソ、人を嵌めやがって! 全員ぶっ殺してやる」
「そんなことしてみろ! ここにいる全員の首が飛ぶぞ!」
「だってよう、団長!」
「心配するな! 機会は作ってやる。もっとデカイ喧嘩にしてな!」
「必ずか?」
「絶対だ! お前をそんな目に遭わせた奴、俺が許すとでも思うのか?」
「人の腕、切り落とそうとしてたくせに、よく言うぜ!」
「規範を破って女を襲ったのは誰だ? 工作でなかったら脅しで済まんとこだぞ」
「まぁ、確かに……」
「しかし、どう始末を付けるのです?」
ハーマンが言うのは尤もだ。
「取り敢えず、頭でも下げてくる! で、賠償金の話が出たら金を出す!」
「宜しいんですか?」
「まずは、この場を綺麗に納めることが先決だ!」
ヴィクトールの雰囲気が変わった。何処かボンヤリとした印象が一瞬にして断ち消えた。