四分の一
「嵌められた?」
納屋の屋根を叩く雨音が再び大きく鳴り出した。
「最初におかしいと感じたのは、ホギ村に着いて直ぐです」
「どう言うことだ?」
ヴィクトールは頭の整理が追いつかない。
「メセナのやられっぷりを見て、素人の仕業に思えませんでした」
「ん! ちょっと待て。これってやったの、お前らじゃ?」
「私達が到着した時は既に、この有り様でした」
改めて、パンパンに腫れ上がったメセナの顔に目を向けた。
「まぁ確かに、地方の村の自警団がするやり口じゃねぇな……」
ハーマンの言う疑念の輪郭が、ヴィクトールにも薄っすらと浮かび始める。
「それと、メセナの話では、どうやら向こうから食事に誘ってきたらしいんです」
「そうなのか?」
「そりゃ、俺だって男だしよ、晩飯に誘われたらその気になっちまうだろ?」
「ただ、相手に拒まれてカッとなって襲ったらしいです」
「何だよ、結局襲ってるじゃねーか!」
「ですが、食事に誘って来たのは向こうですよ? それでメセナは、おかしく無いですか?」
「あぁ確かに……それでメセナは、おかしい」
「おい! アンタら、人のこと嬲ってんじゃ」
「馬鹿か! これはお前の腕がかかった重要な証言だぞ」
「黙って聞いてなさい!」
二人はメセナの反論を強引に捩じ伏せた。
「クソ!」
(だが、仮にそうだとして……俺達が嵌められてるって何だ?)