五分の五
「お前まで何言ってるんだ?」
「俺も嫌です! 団長が身内に手を掛けるなんて想像したくもねぇ」
今度はオットーが拒絶……ヴィクトールは困惑の表情を隠せない。
(そもそも、殺すつもりで来ちゃいないんだ!)
「殺された挙句、アンタに余計なもんを背負わせたんじゃ、俺は死ぬより罪が重くなっちまう!」
言わんとすることは通じているが、本当の所、メセナの真意が判らない……。
「おい、コイツの言ってる意味、誰か判るか?」
「はい」
「多分」
「……判らんのは俺だけか?」
「はい」
「多分」
(全く、何しに来たんだ、俺は……もう知らんぞ!)
ヴィクトールは賭けに出た。
「まぁ……取り敢えず、死んで詫びる覚悟は出来てるんだよな?」
「団長以外のヤツになら……」
「なら、腕か脚、どっちか選べ!」
「……どう言う意味だ?」
メセナはヴィクトールの意図が判らず、真面目に聞き返した。
「命は勘弁してやる! 死人が出てないからな。その代わりに腕か脚のどちらかを切り落とす」
「冗談じゃねぇ! そんなの選んでたまるか!」
「じゃ、両方な」
「ま、ま、待ってくれ! 嗚呼、畜生! どうすりゃ良いんだ」
「選べば良いのさ。因みに、お薦めは腕だ!」
「だぁ脚だ! 脚にする!」
「良いのか? 歳取ってからが大変だぞ?」
「や、やっぱり腕にする!」
「そうしろ! その方が少しはマシだ」
メセナの究極の選択に水を差したのはキグナスだった。
「ただいま戻りましたって、あれ? 団長いらしてたんですか!」
ハーマンの命令で聞き込みを済ませて戻ってきたのだ。
「ああ、少し前にな」
一旦、引っ込みの付く形が整ったことにヴィクトールは内心、ホッとした。
「で? どうだ?」
早速、ハーマンが探りを入れる。
「怪しいですね! 被害者はともかく、メセナを取り抑えたって自警団の連中……ありゃ傭兵ですよ」
「やっぱりか!」
「おい、ハーマン。話が見えねぇ」
ヴィクトールが真意を問いただす。
「私達は嵌められたんですよ」