五分の五
程なくして、団全員に集合が掛かった。
「いよいよ、メセナの処分が決まったんじゃねぇか?」
「アイツのせいで副団長、ずっと機嫌悪かったもんな」
他に適当な理由が思い浮かばない団員に、ハーマンは直接ここに至る経緯を全て詳らかにした。団員の中には、副団長の殺気に理解を示す者や、憤った者も居て、一時騒然としたが、直後に沸き上がったのは、やはり歓喜の声だった。
何よりの吉報が告げられたのだ。
待ちに待った傭兵としての仕事! 全員が即座に動き出した。
ジッとしてなど、居られない。やることは山ほどある。
何より先ずは、整備だ! 錆びついた剣、解れた防具……一年以上放置していた戦備を整えないうちは安心して眠れないのが傭兵気質。
手慣れた作業に準備が捗り、次第に士気が高まる。
その副作用が騒音となってヴィクトールの安眠を妨げた。
「嗚呼、うるさい!」
怒りに任せて部屋を飛び出したヴィクトールだったが、刹那その矛先を見失う。
階下には、全員で防具を纏い武器を携え、隊列を整えた『ノックス傭兵団』が、団長を待ち構えていたのだ。
(まぁ、ずいぶん規模は小さくなったが……)
その光景には、初陣を飾る少年兵のような凛々しさがあり、決起に立ち上がった革命戦士のような清らかさがあり、懐かしい愚連隊の面影があった。
「未だ、そんな格好してるんですかい?」
ロイドの濁声が団員の喝采を攫った!
「おいおい、お前ら、これから張り合おうって相手に油断し過ぎじゃねぇか?」
ヴィクトールが煽る。
「そんな格好してるヤツに言われたってなぁ?」
メセナの追撃で更に沸き上がった。
「皆、貴方の号令を待ってるんですよ!」
副団長の一声で静寂が訪れ、空気が張り詰めた。
「本日、只今を以って作戦行動を実施する!」
ノックス傭兵団、実に五百十八日ぶりの号令が挙がった!