五分の五
「あ、そうそう……思い出したよ、メセナくん」
「はい?(メセナくん?)」
「お前が襲ったって女、ありゃ誰が見たってプロだろうが!」
四人の呆れ顔にも、メセナは動じない。否、意味を理解していない。
「詳らかに罠だろ! 普通に抱くより、何倍も高い金払わせやがって!」
ヴィクトールは話しているうちに、その時の光景が思い浮かんで、次第にヒートアップする。
「馬鹿か? お前馬鹿なのか? クスって笑われたんだぞ! クスって! 大勢の前で恥かかせやがって!」
「だからメセナだったんです!」
ハーマンが告げる。
「そうか、だからメセナだったのか、じゃねぇーわ! 言い返せなかったんだぞ。頭下げてる間中、ずっと薄ら笑い浮かべられて恥ずかしかったんだからな!」
「見苦しい……」
そう呟いた途端、ハーマンは抑え込んでいた感情を刹那、顕にした。
「恥かかされた? そういう風に決めたのは誰ですか!」
時化は瞬時に治まり、凪を迎える。
「一人で頭を下げに行ったのも、賠償金を支払うことにしたのも、決めたのは全部貴方でしょう」
「はい、そうです……ごめんなさい?」
何が『虎の尾』だったのか、心当たりが多過ぎて絞りきれないヴィクトールだが踏んだ自覚だけはあった。
一方で、副団長のほとぼりが冷めるのを待っていたメセナは、頃合いと見て最大の関心に結論を求めた。
「でさぁ、俺達はどっちに付くんだよ?」
(何、シレっとしてんだ。テメェのせいで怒られてんだぞ!)
「両方だ! 団を二つに分ける」