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五分の四
「それで、俺達に粉掛けてきてるのは? どっちなんです? 団長」
メセナの目尻には復讐の色が潜んでいた。
「次男のコーネリアスだ」
「おっ、次男だって! 良かったじゃねぇか、お前ら」
「そうとも限らんぞ」
「へ?」
「次男は次男で裏の顔がある!」
ヴィクトールが費やした五日のうち、その殆どは次男コーネリアスの情報収集に充てがわれた。
と言うのも、兄の悪評を前に弟の存在が隠れて出てこないのだ。
「どう考えても変だろ? ダメな兄貴に対して弟が普通だったら、評判は前に出るのが世の習わしだ」
悪評を知らなければ世間に評判が立つ、つまり……知られているのだ。敢えて口にしないのは、言えない理由、もしくは、言いたくない理由がある。
「生娘ばかりを貪り食う『色情卿』がコーネリアスの正体だ!」
狙いをつけた領民の娘を襲って欲望を満たしていた。
「どうりで評判を耳にしない訳だ! メセナが可愛らしく見えるぜ!」
「ロイド、てめぇ俺を引き合いに出すんじゃねぇ!」
血を貪る兄に対して弟は人を貪る……どちらも領主としての資質に難がある。