5.Like a Snow Flake
「すっごい雪ですねー」
わざと道の端っこの新雪の上を歩いていた春陽が、ふと目をあげて言う。
サクサクと言う音が心地よかったのか、上気した笑顔だった。
「ああ、ほんとにな。久しぶりだよな、こんなのも」
「ふふ、うんざりした声だね、ズイブン」
「うん?まあ、イロイロとめんどくさいからな」
「あたし、雪好き。」
「・・・さっきの、神様イジワル発言は何よ?って感じなんだけど」
「あはは、でも、好きなんですよ」
キラキラした目でそんな事言うから、僕は少し照れくさくなった。
「私の実家の方って雪あまり降らないですから。」
「ええっと。ああ、九州の方だっけ」
「うん福岡。降っても、たまぁに。だから降るって言われるといつもワクワクしてたな」
「そっかあ、そういや子供の頃は俺もはしゃいでたっけな。こっちだって毎年降るってわけでもないしさ」
「そうだよね。・・・まああたしは今でも楽しいんだけど」
「そりゃあ、やっぱり、春陽はまだまだお子ちゃまだもの」
「もー、絶対言うと思った」
ホワイトクリスマス・・・雪が大好きな女の子。
どうしてこんな時間まで、働いていたのか。
暗いオフィスの中で、一人残っていたのか。
そのコタエを僕は知っている。
だからその笑顔を見るたびに、胸が痛んだ。
そしてその反面にある自分の中の喜びを、今はただ見ないように僕は目を瞑った。