10.X'mas Cheers 2
「とりあえず、焼き枝豆の3色合せと、ヒラメの薄作りと、海老団子のゆずあんかけと、今日のお勧め3種盛と・・・」
明らかに”とりあえず”ではないテンションで春陽はオーダーを続ける。いつものことだが、桜菜やのメニューが好みすぎるらしいので、目がキラキラになってしまっていた。
で、その延長として食があまり太くないくせに2人で食べるにはありえない量を頼んでしまう訳だが。
「へーい、かしこまりました」
特に桜次郎さんはツッコまない。僕達だけのサービス・・・というよりは春陽を気に入ってるせいだろう。
彼は2人用に料理のサイズを調整してくれたりしていた。量はもちろん、値段も2人サイズ。
軽口を叩きながらも、そんなサービスをサラリとやってくれるのだから、そりゃあ誰だってこのお店のことが好きになるはずだった。
「進藤さんはいいの?」
一通り頼み終えてウキウキの春陽が尋ねる。
「あのな・・・ファーストオーダーなのに1人で10品近くも頼みやがって、これ以上追加できるかよ」
「あはは。またやっちゃいましたねえ。」
と苦笑いする・・・。なんだよまったく、確信犯のくせに。
まあ、いいさ。僕の好みのものも春陽が全部頼んじゃったんだもんな。
『食べ物一つでこんなに幸せそうになれるのも、ちょっとうらやましいかな』
ニコニコと見てるだけで幸せを伝染させられそうな笑顔は、あの日を思い出せば考えられないものだった。
あの日、初めて2人でここに来た夜。