【恋人じゃない】Xmasデート【漫才】
漫才王になろうGP敗者復活戦。
結成3年目にして準々決勝を突破した新鋭のコンビの登場。
元々はホストクラブの先輩と後輩。
しかしその絆は摩訶不思議な腐れ縁から。
寒空の下! 特設野外ステージで華麗に舞え! お笑いホストの新鋭革命児よ!
「こんばんわ。僕たちにクリソツなキャラが登場するNTRの漫画があるらしいです」
「恋人じゃないです」
「紳士淑女の皆様、私が野藻田でこのマッシュルームの男が木下。合言葉は……」
「「恋人じゃない」」
「やっていきましょう」
「野藻田のオッサン、彼女のことで相談があって」
「何だよ相棒? ちょっぴり鼻毛が出ているぞ?」
「来年のクリスマスのデートプランを貰ったのだけど、もう凄いメチャクチャで」
「ああ、こないだ週刊誌で撮られていたな。蟲ケラのドラムさんだってね。おめでとう!」
「だからそのメチャクチャなデートプランにツッコミを入れて欲しいの! 聞いている?」
「相棒のほうがスルースキルあるぞ? まぁ、いいぜ? そのプランを再現してみなよ?」
「ありがとう! じゃあ野藻田のオッサンがリッチャン役ね」
「あっ、俺がそっち!?」
昨年までは無名だったコンビ。今年から一新したスタイルで漫才王に挑戦したところ、昨年まで突破ができなかった1回戦をトップ通過。そのときの動画が大会のヨウチューブチャンネルで投稿されて一気に話題に。それまでが嘘のようにテレビ出演が増えた。あれよあれよと言う内に準決勝も突破したものの、決勝には届かず。
天然キャラが話題の木下は人気女性ロックバンド歌ウ蟲ケラ・田中律との交際報道が話題に。
田中律の事をさりげなくネタに入れるあたり、度胸のあるコンビにみえた。
なるほど素養はある。
しかしまさかここであの大事故が起きるとは誰も思わなかった。
その伏線は彼らがマイクから離れるたびにみせる回転にあった。
「りっちゃん、おまたせ! 24時間も待たせたね!」
「ハッハー! とっくに超えているドタキャンのボーダーライン!」
2人で揃ってプンプン怒るポーズ!
「相棒、最低すぎるだろう。俺だったら3時間でLINE送って帰るぞ?」
「いや、24時間待ってみたいって言われたからさ……」
「どんなプランだよ? いや、どんな女よ?」
「あ! リッチャン! あそこに眼鏡の可愛い男の子がいるよ?」
「え? ナニナニ? リッチャンったら眼鏡っコ、気になるぅ!」
「横には美人の女子高生のオネェさんにちょび髭ダンディなおっさんだね!」
「普通の一般人じゃない? 何か気にする要素あるぅ?」
「ちょっと話しかけてみようか?」
「話しかける必要ってあるぅ!?」
「あ~やっぱり! コ〇ンくん! 小〇郎さんでしたか! サインください!」
「ハッハー! いきなし暗雲濃すぎて絶望の展開!」
2人で揃って頭を抱えて絶望するポーズ!
「コ〇ンくんに小〇郎さんって確実にそこで事件が発生するフラグじゃねぇかよ!」
「いや、デート現場にたまたま居て欲しいってリクエストがあって……」
「どんなプランだよ? いや、どんだけ名〇偵コ〇ンが大好きなのよ?」
「じゃあそろそろ、いこうか」
「まだ出発すらしていなかったの!?」
「ここから歩いて3日と12時間かぁ」
「ハッハー! それならもう車でいけよの距離!」
2人で揃って車を運転するポーズ!
「何百年前の感覚だよ? 今や令和、日本列島かしこも公共交通機関だってあるぞ?」
「いや、3日間歩くデートをしてみたいってリクエストがあって……」
「どんなプランだよ? いや、ネタでも彼女さんがこれから弄られるぞ? コレ?」
「まぁ、とりあえず3日間歩いたって事で時間軸を移動しましょう」
「大丈夫かぁ? というか3日間もどこからどこを歩いたのよ!?」
2人がマイクから外れる。
そこでルーティンの1回転を決めようとしたところで木下が派手に転倒した。
会場からは悲鳴が。ごく少数からは心無い爆笑の声もあがった。
当の木下はすぐに起きあがった。特に怪我などはしてないようだ。
大会スタッフが彼に駆けよるが、彼は小声で「大丈夫」と言って手で制止させた。
ただそこから2人がマイクのところまでやってきて無言で立ち尽くす。
よく見ると木下は涙を流していた。
ネタを続ける訳にはいかないだろう。しかし台本どおりなのかそうでないのか……
「こういうデートをしてみたいって言ってくるのよ……」
「………………ああ」
「半分ネタだけど半分本当ね」
「………………ああ」
「残りあと何分?」
野藻田のほうも顔を青ざめていたが次第に目を赤くし始めていた。
「ハッハー! それが分からないぐらいに頭まっしろ!」
2人で揃って両手パーでおどけるポーズ。
そして2人で揃って「すいませんでしたー!!」と大声で深々と一礼。
なんというハプニングだったのだろうか。
ちなみに残り時間は余裕で2分あった。
漫才の理屈で言えばそこから挽回する事もできない訳ではなかっただろうが……
あの場ですぐに畳んだほうが正解だったように私は思える。
しかし私はその時に妙な感動を覚えた。
彼らが礼をした時に会場中から温かい大拍手が送られたのだ。私も精一杯してあげた。
それで終われば良かったのだ。それで終われば。
彼らはこの直後に敗者復活戦の決勝進出辞退を申し出たらしいが聞いて貰えず。
結果的に決勝進出にはならなかったが、それでも視聴者からかなりの票を得てしまっていた。
現場にいた皆は彼らの想いを汲んで1票も入れなかったと思う。そう信じている。
しかし世間はそうでないのか面白半分で応援してやろうとしたのか。
私は何か気持ち悪いモノを感じた。
「恋人じゃない」
来年のGP出場は見送る可能性が高いだろう。
でも彼らの漫才にはキラリと光るものがあった。
出場できるなら漫才王に挑み続けて欲しい。
まだあと12年もチャンスがあるのだから。
歌ウ蟲ケラの田中律さんにはこういう時こそ彼のパートナーとして支えて欲しいものである。
そして明らかにして欲しい。木下の言った事がホントに半分ネタで半分リアルなのか――
CRYSTAL EDEN
野田栄一郎
(´Å`)ご一読ありがとうございました♪♪♪
(;´Å`)いやぁ~賛否別れる作品を投稿しちゃいました(笑)でもコレも僕からの「メッセージ」です。漫才の大会に挑むということは、それだけでキラキラしているかのようにみえるかもしれないけども、下手をすれば地獄だってみるよっていう事。「期待をしすぎない」って大事なんですよ。
(´Å`)まぁだけど安心はしてください!彼らはこのあとも漫才王になろうGPに挑み続けるので!