8.孤独と帰還
私が目を覚ますとママはもう居なくなっていた。ママ死んじゃったんだ。もう会えないんだ。私、もう1人で生きていかなくちゃいけないんだ。
「ママ。もっと一緒にいてよぉっ。さびしぃよぅ。」
しばらく泣いていたと思う。起きた時には明るかった空が、今は夕焼けになっていた。ママと過ごした巣は私の涙で湿気っていたが、それだけ悲しいし、寂しかったのだ。
1年にも満たない日々だったが、いつの間にか本当の母親として認識して、たくさん頼っていたんだなと思った。
これからこの悲しさと寂しさを抱えて私は生きていかなくてはならない。でも、ママと一生懸命生きるって約束したから私は頑張らなきゃいけない。
「私、頑張るよママ」
次の日から1人での生活が始まった。まずは巣の補強と点検から始める。ママとの思い出が詰まった場所は大切にしたい。脆くなっているところは無いか、崩れているところを見つけたら魔力で修復する。次は自分のご飯。ママに教えられたように森へ出かける。
魔力を網目状にして、獲物を探す。初めは生の肉を食べることにも、血を見ることにも抵抗があったが、今では、私もすっかりドラゴンの仲間入りを果たしている。だって、転生してから生肉美味しすぎて我慢できません。
さらに次の日は川へ出かける。川には水を飲みにきた様々な生き物の他、私の好物がいる。そう!魚なのだ。
魚はぷりぷりしていて、ジューシー、そして低カロリー。まさにダイエットには最適な食材。最近空を飛ぶだけで疲れるから絶対に贅肉が付いている。と言うわけでダイエットを決意する。
「絶対に痩せる。」
せっかく翼を持つドラゴンに転生できたのに、太りすぎて飛べなくなりましたは、冗談では無い。私は誇り高い空飛ぶドラゴンなのですよ。
毎日補修、狩りと、同じような生活を送っていた。初めはどれだけ食べても、お腹が減るので、しょっちゅう獲物を狩に行っていたが、最近は全く食欲が湧かないし、起きている事も疲れる。必然的にママが作った巣で1日中ゴロゴロしている。きっとここ最近はそんなに食べて無いから太る事は無いはず。このまま行けば、スリムなドラゴンの出来上がりというわけで、今日もゴロゴロしている。だが、精神的に来るものがある。
「寂しいよぅ」
毎日誰とも話さず、何の刺激もない。私のご飯になる生き物達は、総じて私よりも弱い者達で、魔力で探索した事もあったが、私より強い者は現れない。強者になった事は嬉しいけど、刺激が無いと生きているのか、死んでるのか分からない。強者でなくても良いから競える仲間が欲しい。
ママが死んでから2ヶ月も経つ頃には、痩せすぎてしまい、空を飛ぶ筋力さえ無くなっていたが、幸い強い魔力を持っているので、自分の魔力だけで空を浮遊し、川で水分の補給と魚を2、3匹程度を食べ寝床に戻る生活をしていた。
「**********。********」
「************。***」
寝ていると大勢の人間の気配と、生まれた時に感じた不快な手の感触、何かを喋る声が聞こえてきた。一度目開けて周りを見たが、知っている顔が1つだけで、後は見た事がない。魔力で探索を行うと、20人の人間の気配と、19匹のドラゴンの気配を感じた。
「うるさい。」
「***!**************!」
「***。***********」
この時の私はとても無気力で、眠気もあったので、どうでもいいと思って開けた目を閉じて眠った。
「この子弱ってるね」
「そうだね。大丈夫かな?」
「王子が世話するみたいだし大丈夫じゃない?」
久々に誰かの声を聞いた気がする。
モゾモゾと動くと、いつもと寝床の感触が変わっていたので、目だけ開けて確認すると、生まれたての時に見た光景が広がっていた。周りには、藁と水そして柵。
「**、**********?」
あぁ、また捕まっちゃったのね。あと何言ってんのこのイケメン君。言葉通じないんだから分からないよ。しかもさ、言葉わからないのにニタニタしながら喋りかけてくるんだもの、正直イケメンが台無し。顔だけは良いのに。
「**?**************」
捕まった日からそのイケメン君は毎日来て、私を撫でた後口もつけてない水や肉の交換と、寝藁を交換したりしていた。
「********。」
何であんたがそんな悲しそうな顔してるのよ。私の方がそう言う顔したいわよ。表情筋ないから出来ないけど。もう寝よ。
何日経ったかも忘れた頃に、イケメン君と見知らぬ人間が来たかと思ったら、目隠しをされ、体を鎖で縛られた。面倒なのでそのまま動かなかったが、急に口を開けられて大量の肉を放り込まれた後、口を閉じられた。
ガンッ!ガンッ!ドゴォォン。
「何なのよ!やめてよ!」
大量の肉は口が閉じられているので、出す事もできなかった。抵抗する為魔力を使おうとしたが、出来なかった。
「え?何で?」
そこで私は思った。あれ?そう言えば、もう何日も、下手したら何ヶ月間何も食べていない事に気づいた。肉を飲み込んだ後、イケメン君を見ると泣いていた。私がぎょっとしていると、近づいて抱きついてくる。あまりにも酷い顔だったので、驚きすぎて抵抗する気も起きず、思わず受け入れた。
「****!***********!」
「私の心配‥‥してくれたの?」
私はこのイケメン君のお陰で、自分が弱っていることに気付かされたし、とても気遣ってくれていたのだと思った。
「あなたは良い人間なんだね」