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私、ドラゴン転生  作者: ねこ
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7.焦りと別れ 〜親視点〜

 300年ぶりに生まれた我が子は竜王の器がある。ドラゴンは知能が高い為、学習能力に優れ物事への理解も早いのだが、我が子は他のドラゴンたちの誰よりも優秀だった。


 私は生まれてから800年程経っていて、子育てもこれが初めてではない。私が産んできた3頭の子供たちも優秀な部類だったが、今回生まれてきた我が子は比べ物にならない程の異才だった。


 それこそ物事を教えると、教えた事をすぐに吸収して、次にどうなるのか、結果はどう行き着くのかなど、1つを教えるといつの間にか2つの事を学習していたりする。


 さらには魔力の扱いまでもをそつなくこなす。最初こそ魔力を暴走させたが、そこから学びを得て、今では高等な癒しの力までもを使いこなしている。


 我が子は、いつの日か必ず竜王になる。その確信が、日を増す事に確信に変わっていく。


 竜王とは、第1位である私の夫よりも高位の位置で、ドラゴン達の先導者であり母でもある。ただ竜王になるには実力は勿論のこと、正しい心を持ち、精霊たちとの交流が不可欠といわれている。まさに異才といわれるほどの力がなければ、竜王にはなれない。



 そんな異才の持ち主である我が子を、私は急いで育てている。子に何度も何故そこまで急ぐのか聞かれたが、答えられるわけが無かった。何よりその事を教えてしまうと、我が子が悲しんでしまう。それを見てしまったら辛い。


 我が子が人間の元から帰ってきた時、子の首元に魔力を放った刻印がされていた。調べて見ると、その刻印自体に追跡の力と、未完成なままの契約の力が刻んであった。


 これは、我が子がある程度育った頃に、人間が危害を加えに来る事を示唆している。だから私は、いつその人間が来ても、我が子が自分の力で撃退出来るように育てている。


 急いで教育している理由は他にもある。私に残された寿命が短いのだ。我種族ドラゴンは自分の死期が分かる。我々ドラゴンは死ぬ前日になると、墓守へ挨拶をして、墓がある地に生えている巨大な木の根元で眠りにつく。


 ドラゴン達は墓に生えている巨大な木の根元で死ぬことで、輪廻転生する事ができる。また、ドラゴンの死体はとてつもない魔力を帯びる為、墓以外の場所で息絶えると周りの生態系に影響を及ぼしてしまう。



 私は横で寝息を立てている我が子をそっと抱き寄せる。


 「ごめんなさいね。あまり一緒に居てあげられなくて。」


 残された時間は後10日。それまでに森での生き方や、生きていく中で必要な物事を教えなくてはならない。


 


 「愛しい子起きなさい、今日から森での狩りをするわよ」


 我が子を起こし森へ出かける。

まずは、水場を教える。水場にはたくさんの生き物が集まるから、独占をしてはいけない事、魚は食べれる事。


 我が子は水を見て全身を浸して遊んではいたが、これだけ教えておけば水場に関しては大丈夫でしょう。




 次は森の事。森には毒を持った生き物や、食べ物が沢山あるので、自分の知らない物は食べてはいけない事。狩をする時には必ず周囲に注意を払う事。特に獲物を食べる時には周囲に探索の為、魔力を網目のように使って安全か否かを確認する事など、教えながら漏れが無いように、慎重に丁寧に教える。


 最後に我が子の実の親について教え、墓守の事や竜王に関する事を教えていく。父親が第1位である事を伝えると、驚いたようで鼻息が荒くなっていた。

墓守に関しては本当に真剣に聞いていた。話の過程でドラゴンの寿命を聞いてきたので、大体千年程だと言うと、長生きしすぎると退屈そうだと騒いでいた。

(うふふ。我が子は年寄りのようだわ)


 最後に竜王について、竜王はドラゴンの先導者であり、母である、それ故に竜王になる為には必要な素質がある事を伝えると、我が子はそんなすごい存在にはどうせなれないから忘れてもいいよねと言っていたが、一般常識だと話すと、仕方ないと言う様子で覚えようとしていた。



 2日後私は寿命を迎える。

「愛しい我が子。私から教える事はもうないわ」


 「え?ママにはまだ教えてもらいたいことがいっぱいあるの!」


「うふふ、甘えん坊ね。でも今日からもう巣立ちなのだから、これからは自分の力で生きていかないとね」


「嫌だよ。1人は寂しいよ」



 珍しく駄々をこねる我が子を見て、本当に愛しいと思った。それと同時に我慢していたものが込み上げる。気づけば何百年も流したことのない涙が出ていた。


「ママ?どうしたのママ?悲しいの?」


「えぇ。とっても悲しいわ。あなたともっと一緒に過ごしたかった。」



 もう800年も生きてきたというのに、私の声は震えて、子供みたいに涙まで流して。そして今まで言えなかった言葉を言ってしまった。



「私はね後2日後には死ぬのよ。」


「‥‥。」


 我が子は何も言わず、目に涙をたくさん溜めて私の足元にやってきた。


「ママ。私も悲しい、寂しい。でも、私頑張るよ!ママに教えてもらったことちゃんと守る!一生懸命生きるよ!だから安心してね。」



 私は驚いた。この世界に生まれてたった数ヶ月の雛が死を理解し、先に生を終える者に対して思いやりを抱くとは。


「本当に、ほんとうに優しくて、愛しい子だわ。私に勇気をくれてありがとぅ。安心して旅立てるわよ。」



 

 我が子と最後の抱擁に浸ること半日。そろそろ行かなくてはならない。私は隣で眠る我が子にキスし、巣を飛び立つ。



 墓守である夫に挨拶し巨大な木の根まで行く。


「ここはとても穏やかで、美しいわね。」


 根元につくとすぐにいつぶりかの眠気がやってくる。とても心地いいわ、まるで母に抱かれているよう。





 そうして私は眠るようにして息を引き取った。

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