危険
「君は…誰だい…?」
黒と黄色で見を包みこちらを面白そうに覗きこむナニカに問いかける。
ナニカはにやりと怪しげな笑みを浮かべ、
「シリタイ?」
と答えた。
「ああ」
「ナラ、教エナイ。」
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夢はそこで終わった。
窓を開けると、生ぬるい梅雨の風が纏わりつき、吹き抜けていった。
なにかいやな予感がする。
憂鬱だ。
不安だ。
窓の外はまだ焼けている。
朝焼けだ。
息が詰まるような朝焼けだ。
朝焼けをぼうっと観ていれば息をしていなかったことに気がついた。
道理で苦しいわけか。
しかしなにかが違う。
そうこうしていてもしょうがないので、珈琲を飲むことにした。
袋をあけると、ほろ苦いつんとした香りが鼻をくすぐる。
インスタントで、
どこか苦しくなる香りだった。
生きづらい。
逝きづらい。
ふとそう思った。
孤独になったころからだろうか。
水を与えられぬ植物のように、ゆっくりとゆっくりと、枯れていくような心地がした。
ゆるやかな『死』を感じた。
嫌だ。
いやだ。
イヤだ。
誰からも忘れられるようにいなくなる気がした。
おそろしきかな。
のろのろと服を着て、人のふりをして、外に出た。
朝のざわめきに包まれた、住宅街を歩いてゆく。
カラスが騒ぎ立てる、空の下を歩いてゆく。
昨日の夜の排気ガスの残り香が漂う、大通りを歩いてゆく。
黒と黄色。
踏切だ。
夢を見たからか、いつもよりも少しだけ恐ろしく感じた。
カンカンカンカンーーー
「ーーーーー」
ナニカが突然目の前に現れた。
黒と黄色、そして、ふわりと香る危険の香りに身を包んで。
「あ。」
ここまでお読みいただきありがとうございました。
ナニカの正体とはなにか、とか考察をコメントしていただけるとありがたいです。
作者も正直わかりません。