第5話 天気は気まぐれ
今日も当てもなく、空を飛び回る。
新しい仲間とも言える〈ファイドラ〉も一緒に僕の後ろをついて行く。
お腹がすけば一緒に狩りをして、昼寝する時も一緒にだら〜んと寝て、暇だと感じたらファイドラに色々聞き出そうとした。
前の旅と比べたら断然と楽しい。誰かいるのと居ないのとでは心のゆとりも変わってくる。
ファイドラも僕が色々聞き出すのを、楽しみにしているのか、毎日、夜になると
「今日は俺に伝えたい事とかありますか?」
と聞いてきて、ちょっとワクワクした様子で伺ってきたりしてくれた。これが結構嬉しくなる。
そして数日後、この日もなんか暇だったから、ファイドラに
〈なんか変わった話とかある?〉
と書いた。
ファイドラはちょっと困惑して、何を話せば良いか悩んだが、割とすぐにコレだ!って顔を浮かべ、話を持ちかける。
「これなんてどうでしょうか?この世界の賢者の話なんですが、良いですか?」
と聞いてくる。
賢者?でもなんか興味深いなぁ〜
僕はその話が気になり、ファイドラに「グァァ」と鳴いて、首を縦に振る。
「分かりました。では話しますね。まずこの世界の何処かに全ての魔法と調合術をマスターした者が秘境の隠れ家に暮らしているとの事、それが賢者です。
そしてその賢者なんですが、滅多に人や俺達火竜でも中々目にする事が出来ません。なので噂程度の話として知っていましたが、この話、なんか曖昧ですよね・・・」
と最後、これを僕に話したのが馬鹿馬鹿しいと思っちゃったのか、火竜はしーんとしてしまった。
でもこの世界に〈魔法〉って言う概念があるんだな、まぁドラゴンが生きてる世界だから、あってもおかしい事ではないか。
けどもし本当に居たら、僕は異世界転生された人の事を聞いてみたいなぁ〜と叶う筈がない妄想をしてしまった。
ファイドラもこの話を忘れようとしたのか
「そろそろここから去りましょうか?」
と呟く。僕もファイドラの意見に賛成し、この場を去ろうとした次の瞬間!
天気が急変し、空が黒い雲に覆われた。
その黒い雲かは雷鳴が響き渡り、ここら一体に落雷が発生!正に異常気象だ。
ファイドラは僕の体に乗っかり
「失礼します」
と言い、僕を地面に覆い尽くした。僕を落雷から守ろうとし、ファイドラは炎を黒い雲へと吐き出した。
けど次に大雨が降り注ぎ、ファイドラの炎は呆気なく消えてゆく。どうやら黒い雲は火炎で吹き飛ばせないらしい。
このままじゃ雷撃を喰らうのも時間の問題。一発くらいなら僕達でも耐えられそうな気がするが、こんなに降り注ぐのはマズすぎる!!
絶対絶命、まさか天気によってここで終わるとはな・・・
そう諦めていたその時!
僕達の目の前に杖を持った人間が立ちはだかる。
そしてその人は杖を高く上げ、僕とファイドラの周りに緑色に輝く結界のような物を作りだし、その場を去るかの様に何処かへ飛ばされた。
うん、もう分かると思いますが
助けてくれた人、「賢者」です