セーブするには仲間を犠牲にしなければならない世界でのラストステージ
セーブか仲間か、あなたならどちらを選びますか?
『セーブポイントです』
『セーブする場合は仲間を一人選択してください』
『セーブの有効回数は一回です。再度利用する場合は新たに仲間を一人選択する必要があります』
ーーーまたこのアナウンスを聞くことになった。
普通なら喜ぶアナウンスだが、この世界ではまるで悪魔のささやきだ。
また選ばなければならない。悲しい決断を迫られる・・・。
「ミクリ、俺を使ってくれ」
「ここは魔王城の最上階。おそらくここが最後のセーブポイントだ」
「ここで全滅なんてしたら今まで犠牲になったあいつらに顔向けできない」
親友であり戦士であるリカルドからの申し出に僕は頭を悩ませながら答える。
「リカルド、確かにここが最後のセーブポイントかもしれない」
「目の前にある巨人が使ってるのかって程に大きな扉からは、とてつもなく邪悪なオーラを感じる」
「おそらく扉の向こうにいるのは魔王だろう」
「しかし、幼い頃からずっと一緒だったお前を俺は失いたくないんだ」
これは本心だ。もうここに来るまでにどれだけ大切な仲間を犠牲に進んできたのだろうか。
ーーージェイミー、シュバルツ、リンダ、どうか許してほしい。
いや、世界の為に犠牲にさせた僕をどうか許さないでくれ・・・。
ーーーそう、この世界にはセーブポイントというものが存在する。
セーブをすると、モンスターの軍団に敗れて全滅しても、セーブ地点からやり直すことができるのだ。
この世界に巣食うモンスターは非常に凶悪で、毒物や石化攻撃など行動パターンも豊富。
ふいうちを受けると対処が間に合わなくて全滅することがほとんどだ。
セーブすることによって相手の攻撃パターンを知ってから全滅。
その後、対抗手段を用意して再戦することが有効な手段である。
それならばセーブをしつつ進めば問題ないと思うかもしれない。
しかし、セーブポイントを利用するにはたった一つだけ条件が存在する。
『仲間を犠牲にすること』だ。
セーブポイント起動と同時に仲間がその場で一人消滅する。
消えた仲間が戻ることはない。
ーーー二度と戻らない。
もちろんセーブポイントを使わずに魔王の城まで進むという方法もある。
仲間を犠牲にするなんてバカげた手段を取る必要なんてないんだから。
そうして、俺の親父たちは死んでいった。
セーブポイントを使わず二つ目のダンジョンのドラゴンの火炎ブレスで全滅したのだ。
ーーー俺はセーブポイントを利用して魔王城の最後の部屋まできた。
親父のカタキである魔王を倒す為、世界に平和を取り戻す為。
例え共に苦難を乗り越えてきた仲間を犠牲にすることになったとしても・・・。
いったいどうして神はこんなシステムを用意したのだろう。
何故、こんなにも残酷な選択を迫ることを考えついたのだろう。
だが、セーブポイントに頼らなければここまでたどり着くことができなかったのも事実だ。
セーブせずに全滅してはこれまでの全てが無駄になってしまうのだから。
様々な想いを抱えながら消えていった仲間たちの決意を無駄になんて誰ができるだろう。
ふざけるな!できるはずがない!!
なんとしても魔王を倒して、二度とこんな旅をするする者がでないようにしなければ!!
苦痛の表情を浮かべる僕にリカルドが語りかける
「ミクリ、一緒にロードの町を旅立った6人も今や3人になっちまった」
「でもそれもここまでたどり着く為だ。みんな最初からわかってたことだ」
「こんなふざけたセーブ機能なんかに頼らなきゃ無力な人間様には何もできないんだからな」
「俺は最後のセーブポイントで消える。それは途中のコンテニの町の宿屋でお前と約束したことだろう」
リカルドの話はもっともだ。リカルドの想いを俺は一度は受け入れたのだ。
リカルドの決意をさえぎるのは僕のわがままなのだろう。
「それによ、勇者のミクリと魔導士のセーラの2人で魔王と戦うのが一番効果的なんだ」
「戦士の俺じゃ盾役にしかならねぇ。伝承だと魔王は魔術攻撃しかやってこないらしいから俺は盾にすらなれない。お荷物なんだよ。」
「だからここで俺の役目は終わりってことだ」
「魔王は実際に戦ってみると何をやってくるのかわからねぇ」
「このセーブポイントは絶対使わなきゃだめだ」
「だから頼む。魔王の行動パターンを掴んでそして倒してくれ」
ーーーリカルド、今までどれほどお前に励まされてきただろう。
仲間を失うたびに壊れていく僕の心がここまで砕けなかったのはお前がいたからだ。
お前がいたから俺はここにいる。
そんなお前が消えるのは俺には耐えられないんだ。
理屈じゃないんだよ、リカルド。
セーラはただただリカルドの後ろで泣きじゃくっている。
セーラを置いて消えるなよリカルド。
この旅が終わってロードの町に帰ったらセーラに告白するんじゃなかったのかよ。
・・・・・
・・・・・・・・
どれくらい悩み考えただろうか
ーーー僕は決断する。
「リカルドありがとう。お前と旅が出来て良かった。心から」
リカルドはセーブポイント起動装置へと手をかざした。
「負けるなよ、ミクリ。俺様がここまでやってやるんだからな」
「・・・それと」
「セーラを頼んだ」
『対象人物が選択されました』
『セーブポイントを起動します』
「あばよ、セーラ、幸せにな・・・」
「・・・リカルドおおおおおおおおおお!!!!!」
『セーブが完了しました』
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ーーー世界に平和が戻った。
魔王との激闘を終えて僕とセーラはロードの町に帰ってきた。
世界中が僕らの帰還を祝福した。
これで、もうこの先、誰も大切な人を失うことはないのだ。
終わったよ、ジェイミー、シュバルツ、リンダ。
そして、リカルド・・・
町が宴で沸き立っている。
世界は笑顔であふれている。
セーラと共に町の様子を見回っていると町のセーブポイントが視界に入った。
もう見たくもないと思って通り過ぎようとした瞬間、突然アナウンスが響く。
『おめでとうございます』
『魔王は倒されました。ゲームクリアです』
そんなアナウンスもあるんだな。
ゲームクリアなんて馬鹿げてる。
この旅は遊びなんかじゃなかった。
どうしようもない現実だったのだから。
・・・しかし、そこでアナウンスは止まらなかった。
『クリアデータをセーブしますか?』
『セーブする場合は仲間を一人選択してください』
Fin