アキレスけん
『絵本:アキレスけん』
(表紙には、
まるで実物のピストルを見ながら描いたのでは、
と思えるほど精巧なピストルのデッサンが描かれている)
著者:ジャイアント墨子。本名、年齢不詳。
顔が地黒でキュートなお歯黒、というキャッチコピーで名が売れる。
エッセイ「既に神格化された山手線」では、
自分の好きな番組だけをテレビで流したいと書いていたが、
今は嬉し涙を流したいと思っている。
『アキレスけん』
ベッドのうえ、ぼくは、
ふと、じぶんの、アキレスけんをみた。
そうすると、なにか、くろい、あざが、できていた。
(マラソン選手が黒服の人からピストルで撃たれている、絵)
ぼくは、きゅうに、アキレスけんが、いたくなってきた。
ここから、からだじゅうが、くさっていくのでは、と、おもえてきた。
(黒っぽいアキレス腱が吹き出しで「もう俺はダメだ」と言っている、絵)
くさったら、ヨーグルトに、なるのかな。
(肩までヨーグルトの風呂に浸かっている水戸黄門、の絵)
それとも、
なっとうに、なるのかな。
(納豆が入っていただろうワラを踏んでいる水戸黄門、の絵)
ぼくは、ヨーグルトが、いい。
なぜなら、はちみつを、かけて、たべると、おいしいから。
(ヨーグルトの風呂に浸かりながら、はちみつのシャワーを頭から掛けているマラソン選手、の絵)
でも、やっぱり、くさるのは、いやだ。
どうすれば、このふはいを、とりのぞけるのか。
(”腐敗”という文字が書かれたボールがたくさん入っているUFOキャッチャー、の絵)
---≪ちょっと、こばなし、の、コーナーだよ≫---
1.
うんどうするまえには、かならず、
じゅんびうんどうとして、
おしりを、ぱつんと、たたくのさ。
2.
あくしゅは、すきだけど、
しらないひとに、アキレスけんを、さわれることは、
なんだか、こわいなぁ。
3.
おとうさん、おかあさんは、もちろん、
おにいちゃんがいて、いもうとがいて、
おじいちゃんも、おばあちゃんもいて、
そんなかていに、あこがれているよ。
---≪もうおしまいだよ、おきてね≫---
ぼくは、おもいきって、ひっかいて、みることにした。
みぎてで、かきかき、みぎてで、かきかき。
(鬼の形相で猫が糸コンニャクを引っ掻いている、絵)
そうすると、なんと、
その、くろいあざは、くさりかけの、しるしではなく。
(大勢の人達から納豆を投げつけられ、絶望している水戸黄門、の絵)
あかだった。
(アリの巣に垢が詰められている、絵)
かくたびに、ぼろぼろ、ベッドに、あかが、おちていった。
そういえば、アキレスけんを、
おふろで、あらったことって、なかった、なぁ。
というか、さいきん、おふろに、はいっていないなぁ。
もしかしたら、
いろんなところに、
あかが、たまっているのかも、しれない。
あかが、たまっているのかも、しれない。
もしかしたら。
いろんなところに。
(絵無し)
でもまあ、アキレスけんの、あかは、とったんだから、
ほかの、あかは、あしたで、いいや。
(絵無し)
そんなまいにち。
(鬼の形相でアリの巣に納豆を詰め込む水戸黄門、の絵)
そんなひびを、
シックに、すごす。
(空撮された福岡の夜景が、セピア色の写真として載っている)
--ここは保護者の方が読んでお子様に聞かせて下さい--
アキレス腱は意外と洗い残します。
実は私も何度かアキレス腱が黒っぽくなっていて、
もうそろそろかもしれないと思ったことがあります。
そう現実を悲観しないためにも、アキレス腱はしっかり洗いましょう。
そんな洗う程度の力では、アキレス腱は切れません。
そんなにアキレス腱に怯えないで下さい。
(マラソン選手が自慢の俊足で黒服の人の銃弾をかわし、黒服の人へハイキックをしている、絵)