ふあんくん
『絵本:ふあんくん』
(表紙には、夜ガタガタ震えながら包丁を持ち、後ろを気にしながら、鮭をさばく不安君、の絵)
著者:ジャイアント墨子。本名、詳細不明。
顔が地黒でキュートなお歯黒、というキャッチコピーで名が売れる。
エッセイ「明日こそ晴れる」には、自分の人生を映画化して欲しいと思っていたが、
今は優しい夫婦生活が欲しいと思っている。
『ふあんくん』
やぁ、ぼくは、ふあんくん。
(丸坊主で胴長短足、べっこう色のメガネをかけた男、不安君、の絵)
まいにち、まいにち、ふあんなんだ。
この、いいようもない、ふあんに、まいにち、まいにち、こわされているんだ。
(炊飯器の「開けるボタン」を押そうか押さないか迷っている不安君、の絵)
のどが、つまる。
みょうに、のどがつまる。とてもつらい、まいにちだ。
(頭を手で抱え込みながら、皿に乗った白米を犬のように食べる不安君、の絵)
きょうもね、とても、ふあんな、ことがあったんだ。
きいてくれるよね。
(糸電話の紙コップ部分を丹念に磨く不安君、の絵)
(糸電話の片側をしっかり持ち、釣り糸を川へ垂らすように投げた不安君)
ぼくね、きょう、とてもくさい、オナラが、でたんだ。
いままでとは、くらべように、ならない、くらいの、すごくくさいオナラが。
(糸電話の紙コップ部分に尻を当てている不安君、の絵)
本当にくさいんだ、ふあんになるほどの。
しょうじき、きょうで、しぬサインじゃないか、とおもったんだ。
ぼくは、まだ28さい、あと2ねんは、いきたいのに。
いやだな、しぬってこわいな。しんだら、どうなってしまうんだろう。
むに、かえるのかな。こわい、むはこわい、きおくも、なくなるのかな。
すごくこわい。
(絵無し)
----≪ここで、すこし、おやすみだよ。うんどうのコーナーだよ。≫----
1.てあしをうごかそう
ふあんくん、のように、ひそうかんを、ただよわせ、こきざみに、ふるわせるように、うごかそう。
さいしょは、むずかしいかも、しれないけど、なれると、なにか、たのしくなってくるよ。
2.たちあがって、じょうはんしんを、ゆらそう
ふあんくん、のように、「どうせ、うんめいなんだ」と、
おもいながら、ぜんごに、おおきく、ゆらそう。
さいしょは、ゆれてるかんじが、ここちいいけど、
なれると、「こんなかんじでいいのかな」と、ふあんに、なるよ。
----≪からだがほぐれたね。さぁ、つづきがはじまるよ。≫----
きのう、なにを、たべたかな。
げんいんが、あるはずだ。げんいんを、みつけなきゃ、し、だ。
(息を荒上げながら冷蔵庫を開ける不安君、の絵)
ヒントは、なにもなかった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう、まだ、せいしゃいんにも、なっていないのに。
(正社員と書かれたバッジをつけながら、ホットドッグにかぶりつく不安君、の絵)
きのう、じゃないのかな。もしかしたら、きょうに、げんいんが、あるかも。
きょう、そうだ、きょうだ。やった、おもいだしたぞ。
(自動販売機に札束を入れて、正社員と書かれたバッジを買う笑顔の不安君、の絵)
きょうは、まだ、ウンチを、していないんだった!
(絵無し)
(真昼の月、の写真の空に、ジャイアント墨子さんの「こりゃ参った」という顔が浮かんでいる)
-あとがき 親御さんが読んで聞かせてください-
不安君の基本部分を書き終えた時は、バッドエンディングでした。
しかし、それでは救いようが無いと思い、完成版ではハッピーエンドにしました。
このところ暗いニュースが多いです。
だからこそ、せめて、
こういう世界ではハッピーな気持ちのまま終わる話が良いと思い、こうしました。
賛否両論あると思います。
けど、私はこれが正解だと思っています。