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女子高生流 ただしいゾンビの殺しかた  作者: 原案:首狩りうさぎ 執筆者:六角 橙
正しいゾンビの殺し方
5/18

女子高生が親友を繧呈ョコ縺励∪縺励◆❷

 翌日、私は少し早めに用意をした。もうじき、家を出る時間だ。


 あれほど怖かったのに、私は昨晩、少しだけ眠ることができた。眠れば夢を見る、そう思っていて、眠るのが怖かった私を笑うように、私はスマホのアラーム音で目を覚ました。病院の先生に連絡しようかと思ったけど、あまりに失礼な時間に思えて、連絡はしないことにしたのだ。

 朝はご飯も口に入らず、電車に乗ると考えることさえ怖い。そう思っていると、玄関からチャイムが聞こえてくる。


「こんな朝早くに? どうしたんだろう」


 玄関を開ける前に、家についているインターホンの画面を見ると、玄関に楓がいる。いや、楓だけじゃない。


「雪に、留美もいる……!」


 そう。楓の後ろには、クラスメイトで友人でもある美奈雪と兵藤留美がいた。


(そうだ、生きている。二人とも、生きているんだ……!)


 驚きながら鞄を掴み、外へ出る。雪ちゃんは、さらりとしたストレートの黒髪に、ふっくらとした体形で、絵にかいたような日本人らしい女の子だ。そして穏やかそうな見た目通り、のんびりしていて、癒し系という言葉がぴったりな子でもある。

 以前、校外学習で同じ班になり、それをきっかけに仲良くなった。以来、ちょくちょく一緒に放課後遊んだりしている。


「雪ちゃん、おはよう!」


「おはよー、悠ちゃん」


 カステラみたいに甘くてぽわぽわとした雪ちゃんの声に、なんだか気持ちが落ち着いていく。


「留美も、おはようっ!」


「おはよう。ちょっと顔色悪いけど……一応元気そうだな」


 落ち着いた声で返してくれた留美はクラスメイトで、文武両道な優等生。見た目も黒髪をすっきりとしたポニーテールにまとめていて、いつも髪紐に合わせた綺麗な色のの眼鏡をつけていておしゃれだ。性格も大人びていてクールだし、服の趣味もかっこいいから、最初はあこがれみたいな感情から仲良くなった。でも、実は意外とツッコミ体質で、私と楓の馬鹿話にひたすら付き合ってくれるようなところもある。

 二人とも、私の大切な友人だ。夢の中で死んだところを見たことはないけれど、それでも生きているという事実に、安心する。

 楓が満面の笑みで、私に言った。


「よっはろー! 悠! 休んで心配になって、私が迎えに行くって言ったら二人が一緒に行くって言ってくれて……それで、みんなで迎えに来たの!」


「みんな……」


 驚いたのと同時、顔が赤くなる。それは嬉しさや、ちょっとした気恥ずかしさ、でも何よりも、感謝があった。留美も雪ちゃんも、私の家からは反対方向の場所に住んでいるから、ここまで来るのはやっぱり大変なはずだ。

 感謝の思いが込み上がって、視界が潤む。


「……ありがとう」


 私が笑うと、雪も留美も楓も、笑ってくれた。雪がストレートの長い黒髪をくるりと翻し、通学路の先を示した。


「いこー、悠ちゃん」


 ほんわかとした声で言う雪に、頷く。

 通学路はいつも通りだ。でも、たまに車が横を通るたびに、体が強張る。


「悠ちゃんどうしたの?」


 首を傾げて、留美が訪ねてきた。彼女の背負うスポーツバックの向こう、また1台車がよぎる。


「う、ううん、なんでもない」


 私は無理やり笑い、首を横に振る。荒唐無稽な、話だった。どう考えても、目から血を流したバケモノが襲い掛かってくるなんて、ありえない。夢の話だから、と割り切ることができない自分が、情けなかった。


「悠ちゃん! 今日のお弁当、みんなで購買いかない?」


「えー、楓、ダイエット中じゃなかったっけ」


「そ、そうでしたっけなぁ!」


「もー、楓ちゃん、そう言ってこの前も購買のサンドイッチを」


「言わないの! もう!」


 いつもよりはしゃぐ声。普段は大人しくて声の小さい雪ちゃんも、声を張っているのが分かる。


「ごめんね」


 私の口をついて出た言葉に、みんなが歩みを止めた。

 ごめんね、とは言ってみたものの、こんなふうに謝ってしまう気持ちを、うまく説明できない。そんな時、不意に、楓の手が私の頭を撫でた。


「大丈夫だよ、悠ちゃん」


「楓……」


「で、よしよしいっぱいしたいところだけど……」


 甲高い音が、駅から聞こえてくる。

 電車の発車1分前を告げる音だ。


「あ、電車……」


「走るぞ!」


「留美ちゃん早い!!」


 一緒に走りながら、私は少しだけ、恐怖が薄れるのを感じた。こんなふうに私を気遣ってくれる友人がいる。それが、確実に、私を勇気づけてくれた。

 家に帰って1人になるのは怖かったけど、それ以外は楓や雪ちゃん、留美が一緒にいてくれる。それがどんなに私にとって、安心できることだったかしれない。


 それからは、私の恐怖心以外、何事もない日常が過ぎた。


 授業に集中しても、時々、あの光景が目の前に蘇る。だからたまに、外を少し見て、何も起きていないのを確認するようになった。おかげで、担任の切絵先生には心配されてしまった。眼鏡の奥から、あの優しそうな目で「大丈夫?」と聞かれると、本当に全てを話てしまいそうになるんだ。

 だけど、今この時も、私は時々、外をちらりと見るのをやめられない。そして、何もないのを確認して、安心する。

 すると、


「じゃあ、今日の授業はここまでです」


 と、チャイム前に黒板の前に立つ切絵先生が言った。


「今日はホームルームで言ったように、午後から先生たちの会議があります。なので、午後からは休みとなります。部活動も、監督できる教員や大人が居る部活のみ、活動可能です。それ以外の皆さんは、基本的には午後5時までには帰宅するように」


 私たちが返事をそれぞれ返すと同時くらいに、チャイムが鳴る。

 今は午前0時を回ったくらいだから、これからお昼という生徒も多いだろう。

 かくいう私も、悠たちと約束している。荷物をまとめてざわつく教室前の廊下へ出た時、私は切絵先生から呼び止められた。


「悠さん、大丈夫?」


 じっと見つめられながら、


「大丈夫ですよ、先生」


 と、笑って返した。日に1度は、このやり取りをする。もう……今日で、7日目だ。

 今日は、4()()1()0()()だ。本当のところを言うと、大丈夫じゃないとも思う。けど、口に出してしまえば、本当のことになりそうで、怖かった。


「本当に?」


「ええ、本当に」


 真剣に尋ねてくる切絵先生は、本当に良い先生だと思う。確かにおっちょこちょいというか、不器用なところはあるけれど、私たち生徒のことを本当に大事に思っていてくれる。


(……大丈夫、だよね? バレてないよね)


 立ち去っていく切絵先生を見送り、私は胸に手を当てた。

 本当に何もなく、夢を見ることさえない。家族からは、楽し気なメールが相変わらず届いてくる。やっぱりあの2つの夢は、本当に夢だった。夢の中で、夢を見たんだ。

 この7日間、ずっと自分に言い聞かせてきた言葉を、また繰り返す。


「あっ、いたいたー! 悠ちゃん!」


 楓と雪ちゃんが駆け寄ってきて、私の手を引く。これから、4人でどこか行こうという話になっていた。

 外は気持ちの良い天気で、桜は満開とまではいかないけれど、ほろほろと花弁をこぼしていた。


「どうしたの? 切絵先生に用事?」


 きょとん、とした顔で問いかけてくる雪ちゃんが、ロングストレートのさらさらとした黒髪を揺らして、首を傾げた。私はそれに笑顔で首を横にふり、


「ちょっと話してただけ」


 と、ごまかす。

 不思議そうにしつつも、それ以上は話しかけてこなかった2人と一緒に、中庭にいるだろう留美の元へ行く。


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