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女子高生流 ただしいゾンビの殺しかた  作者: 原案:首狩りうさぎ 執筆者:六角 橙
正しいゾンビの殺し方
2/18

女子高生の友人は蝟ー繧上lました➊

ちょっと文字数が多かったので3000文字前後になるように調整しながら上げていきます。

体が、心地よい振動とともに揺れている。


(……あれ?)


 目を開けると、見慣れた電車の中にいた。扉近くの席に座り、鞄を前に抱えている。思わず目線を上にあげると、目の前に立つ通勤中らしいサラリーマンが、やおら目をそらした。

 寝顔を見られていたんだろうか、という気恥ずかしさと困惑が同時に心の中に広がっていく。同じ学校や違う高校の生徒、小さな子に外の景色を見せてあげるお爺さん、隣り合って座る女性の仕草を気にする男性。

 誰もが、いつもと同じように見えた。そう、何も変わらない、日常の光景。


(私、ファミレスにいたんじゃ……)


 夢の中で手に持った通り、スマートフォンを握り締めていたことに気が付き、目線を落とす。


4()()8()()()()7()()4()5()()


 私の喉が、ひゅっ、と音を立てた。


(夢の日付の、二日前だ……)


 ドキドキと心臓が鳴る。体中の緊張が解け、安心感で一気に血液が巡る感覚とともに、指先がびりびりと痺れる。私はスマートフォンの背を、強く握り締めた。


(なんだあれ……夢、だったんだ)


 たぶん、いつもと変わらず、私は電車に乗った。しかし、うたた寝をしてしまい……おそらく、何かのきっかけで、ゾンビパニック映画を思い出し、あんな夢を見たんだろう。

 でも両親が海外旅行に行っていることは事実だし、あのファミレスも良く友人の楓と行く場所だ。「嘘であるはずの夢」の中に「事実」が出てきたから、きっと私はあの夢の中で恐怖を感じたのだろう。

 落ち着いてきたところで、いつもの停車駅に電車が停まる。

 夢だったなら、忘れてしまえば問題はない。電車から降りて、私は歩き出す。友人であり、夢の中ではメッセージを送ってきた楓の後姿が見えて、声をかけた。


「おはよう! 楓」


「あ、悠ちゃん、よっはろー!」


 同じ制服だが、楓は可愛くアレンジしている。ブラウスの白いボタンは、ピンク色のボタンに切り替わっていた。靴下のワンポイントも桜柄になっていて、春らしい装いだ。


「よっはろー?」


「昨日考えた挨拶!」


「宿題は?」


「や、やったもん。一応、い、いちおう」


 相変わらず元気そうな楓の様子に、私は思わず笑う。

 なんでもない授業、なんでもない休み時間、いつも通りの休み時間、放課後。電車も、車も、人も、何も変わらない。やっぱりあれは、悪夢に過ぎなかったんだと私が納得するに十分な出来事ばかりだった。

 帰宅途中のコンビニでおやつを買って家に帰ると、両親からメールが来ていた。海外旅行を満喫中の二人の写真やムービーに目を通しつつ、こんな時だからこその行儀の悪さで、ジャージ姿のままカップ麺をすする。


「あー、平和っていいなぁ」


 噛みしめた麺はやわやわで、チープで美味しい。

 お腹がいっぱいになって、次第に眠気が訪れる。映画なら、ここでまた、夢を見るのかもしれない。しかしそんなことはなく、私は無事に、翌日を迎えた。


(やっぱり、夢に過ぎないんだ!)


 そんな確信を抱いた4月9日の早朝。昨日と同じ、7時45分の電車に乗る。今度も、夢を見なかった。その日もまた、いつも通りだった。

 以前と比べて変わったことと言えば、旅行中の両親から送られてくるメールくらいだろうか。何しろ、授業中にもメールが来た。頻繁に来るのは何かトラブルがあったからということではなく、楽しんでいるという内容だ。見るものすべてが興味を引いてならないのか、片っ端から送ってくる。

 仲が良いことで、と呆れつつ、ホッとしてしまう。

 安心感と授業への集中もあってか、あっ、と思う間もなく時間が過ぎ去った。今日は部活も休みなので帰り支度をしていると、楓が尋ねてきた。


「ねー、明日って遊びに行ってもいい? お母さんたちまだ帰ってこないんでしょ? ……あ、でも、明日って何日だっけ」


 きょとんとした顔をする楓に、肩を落とす。


「いや、そこあやふやになっちゃダメでしょ。4()()1()0()()()()()4()()1()0()()

 もう私にとって、それは単なる日付に過ぎない。 

 私は大きく笑いながら、それを口にするのだった。


 ─── 4月10日午前7時45分。


 1本早い電車に揺られ、ついた駅で楓と並んで歩きはじめる。


「おはよー! 楓」


「よっはろー。よかったー、今日は一緒に行けるね」


 楓が嬉しそうに笑う。その肩には、いつもはない大きなスポーツバックがかかっている。今日、私の家に遊びに来て、そしてそのまま泊っていくつもりなのだ。


「約束、覚えてる?」


「遊びに来るんでしょ? もちろん! ……楓こそちゃんとお母さんたちに説明しきてくれた?」


「それはばっちり、勉強会するって言ってきたもん! いやぁ、悠様の信頼の賜物ですなぁ!」


 通学路に面した道路を、けたたましい音を立てながら猛スピードでトラックが通っていく。よく見かけるトラックで、そして夢の中ではファミレスに突っ込んできたトラックだった。こんなところまで一致しているなんて、ちょっと面白い。

 自然とトラックを目で追って、異常に気が付いた。


()()()()……?)


 違和感に、思わず立ち止まった。

 通学路の先はT字路になっていて、しかもちょっとずれるとファミレスがある。それに学生も多い地域だから、あんな速度で走る車はまずありえない。背筋に氷を滑らされたような強い怖気に、思わず前を行く楓の腕をつかんだ。

 驚いた楓がこちらを振り向いた、その瞬間。


 彼女の言葉をかき消す轟音ととともに、T字路の先にあるファミレスへトラックが突っ込んだ。


 爆音とともに風があたりに吹き荒れて、次々と他の車も巻き込まれた形で事故を起こしていく。歩道に乗り上げた車が、数人の生徒を巻き込んで停止した。それだけじゃない、車から這いずるように降りた人たちが、生徒に襲い掛かる!


「う、うわつ!?」


「おい、逃げろ、なんか変だぞ!」


 反対方向に走りだそうとする人もいれば、その場で救援活動をしようとする人もいる。しかし、


「ぎゃあっ!? か、噛んだ、この人、私のこと、噛んで、いやあああっ!」


 と、いう叫びに、私は腹の底がぐるんとひっくり返るような心地がした。噛まれた人が、身をよじりながら暴れるのを、事故にあった人たちが追いかけてきて地面に引きずり倒す。ぐちぐちと音を立てて、彼女が食われていく。

 それは、まぎれもなく、悪夢の再現だった。


「なに、これ……」


 楓が呟き、私の腕にしがみつく。反射的に、私は叫んだ。


「逃げようっ!」


「っ、でも、救急車呼ばなきゃ!」


 叫び声をあげている女性の方を見て、楓が言う。血の気のない真っ青な顔だが、間違いなく女性のことを心配していた。でも、それより、私は楓の方が大切だ。


「かまってられないよ! 逃げないと、私たちもっ……!」


 小さく、楓が悲鳴を上げた。私が指さした方角にいる人間は……真っ赤な目をして、血の涙を文字通り流しながら、反対方向にねじれた足でこちらへ歩いてくる。その隣の人間は、胴体がくの字に折れ曲がり、それでもなお歩いている。

 もう人間じゃない、あれはもうバケモノだ。


「捕まったら大変だよ! 駅に戻ろう!」


「う、うん……!」


 走り出した私たちの後を、足音が付いてくる。国道は車があちこちで事故を起こし、ひっくり返った状態で停車しているものもあれば、電柱に激突して中ほどまで裂けたものまである。

 白い煙が噴き上がり、火事が起きている家もある。頭によぎるのは、夢の日付だ。


4()()1()0()()


shibaさんからアドバイスを頂き、改行を増やしてみました。前よりも見やすくなったと感じました。

ありがとうございます!

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